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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2021年9月の記事一覧

【第2部28章】竜、そして龍 (4/8)【寒波】

【第2部28章】竜、そして龍 (4/8)【寒波】

【目次】

【併走】←

「く……グ……ッ?」

 ヴラガーンの視界が、かすむ。全身の肌をさいなむ痛みの質が変わる。はじめは、何らかの錯覚か幻術のたぐいかといぶかしむ。違う。背筋の冷える感触を味わう。

「面妖ぞ……なにをした、翼竜モドキめ」

 先刻まで熱波にされされて乾ききった大地を、霜がおおっている。ダイヤモンドダストの粒が、大気

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【第2部28章】竜、そして龍 (3/8)【併走】

【第2部28章】竜、そして龍 (3/8)【併走】

【目次】

【離陸】←

「翼竜<ワイバーン>とて、言葉を使うなどという話は、聞いたことがないぞ。そのうえ、征騎士などという肩書きを誇らしげに口にするとは……翼竜モドキどころか、人間かぶれか?」

 ヴラガーンは、苦々しくつぶやく。序列7位の征騎士を自称するプテラノドンは、じぐざぐの軌道を描きながら急上昇していく。

 人間態のドラゴンは、自分のすぐ脇のジェット機を横目で一瞥する。浮いたとはいえ高

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【第2部28章】竜、そして龍 (2/8)【離陸】

【第2部28章】竜、そして龍 (2/8)【離陸】

【目次】

【熱波】←

「こんな熱波のなかを、わざわざと……なんぞ、コイツは……?」

 ヴラガーンは、上空をにらみつけながら、怪訝げにつぶやく。襲撃者は、上昇気流を捕まえて高所へと逃れる。逆光に隠されていたシルエットが、熱気に揺らめきながら姿を現す。 

 ワニのような顎と牙、ドラゴンのような双翼、うしろ足と長い尾を巧みに操ってバランスをとりながら頭上を旋回しているが、前腕のようなものはない。

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【第2部28章】竜、そして龍 (4/8)【寒波】

【第2部28章】竜、そして龍 (4/8)【寒波】

【目次】

【第27章】←

「なんだよ、これ……どうして、こんなことになっているんだよ……」

 上下に激しく揺らされながら、フロルは首をめぐらせる。グラトニアは、もともと人口密度の高い次元世界<パラダイム>ではないが、いままですれ違った人間たちは、民間、軍属を問わず、全員が倒れ伏したまま動かなかった。

「ふん。あまり動くな、小僧。落ちるぞ……さしずめ、内乱で同士討ちと言ったところだろう」

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【第2部27章】星を呑む塔 (4/4)【業火】

【第2部27章】星を呑む塔 (4/4)【業火】

【目次】

【剣鬼】←

「すべて事は、滞りなく御座候」

 滑空するプテラノドンの背にひざ立ちとなりながら、トリュウザは目を細め、つぶやく。初老の剣士の、武人としての感覚が拡大する。天蓋が落ちてくるような『圧』が、グラトニアの草原に充満している。並の人間であれば、それだけで気絶しかねない。

「花は桜木、人は武士……なるほど。『塔』のなかで騒いでいたのは、鼠ではなく雀のたぐいであったか。斬るほど

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【第2部27章】星を呑む塔 (3/4)【剣鬼】

【第2部27章】星を呑む塔 (3/4)【剣鬼】

【目次】

【脱獄】←

「花は桜木、人は武士……鼠どもは、少々、かしましく御座候」

 暗闇のなかで、ぼそりと男はつぶやく。声の主は、征騎士序列1位のトリュウザ。場所は、『塔』にあてがわれた彼の居室。

 トリュウザは、長尺の愛刀を床に置き、あぐらをかき、まぶたを閉じて、瞑想にふけっている。電源が喪失し、照明が落ちても、かまう様子はない。

「技術局長どのは……見事、討ち死にを果たされたか」

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【第2部27章】星を呑む塔 (2/4)【脱獄】

【第2部27章】星を呑む塔 (2/4)【脱獄】

【目次】

【生贄】←

「ん……っ」

 アンナリーヤは、独房のなかで苦しげに身じろぎする。手と足はもちろん、ヴァルキュリアである彼女の種族的特徴を示す背中の翼にも枷がはめられ、ほぼ身体的自由は封じられている。

 小さな室内を照らす冷たい照明は、少しばかりまえに消え、暗闇に包まれた。それでも、戦乙女の王女の心が動くことはなかった。

 死力を尽くして立ち向かったアンナリーヤは、グラー帝に対して

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【第2部27章】星を呑む塔 (1/4)【生贄】

【第2部27章】星を呑む塔 (1/4)【生贄】

【目次】

【第26章】←

「ああ、偉大なる皇帝陛下……今日も、いいえ、いつもよりいっそうたくましい御姿であります」

 吹き荒む風のなか、うっとりと蕩けるような女の声が響く。言葉を紡いだのは、メイヴィス・オードリー。『巫女』の異名を持つ、序列第3位のグラトニア征騎士。

 ウェーブロングヘア……というには手入れの行き届いていない、目元まで隠すぼさぼさの髪は、よどんだ血を思わせる赤紫色。病的なま

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【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (16/16)【模索】

【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (16/16)【模索】

【目次】

【暗中】←

「なんとなればすなわち……『塔』のメインジェネレーターが停止したかナ。おそらく、モーリッツくんのバイタルサインと連動するよう仕込んであったのだろう」

「グリン! 言わんこっちゃないのだわ……悠長に『ドクター』のことを待っていたから、データベースのなかを家捜しできなくなっちゃったじゃない!!」

「その場合、リーリスくんが電脳潜行を試みている、まさに最中に、メインフレーム

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【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (15/16)【暗中】

【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (15/16)【暗中】

【目次】

【蚕食】←

「なんとなればすなわち……じつに奇妙な光景かナ」

 中央制御区画へ足を踏み入れたドクター・ビッグバンは、抑揚のない声でつぶやく。『塔』の管理を任された技術局長によって召集された無数の兵員たちが、通路の至る所に倒れ伏している。

 甲冑型パワードスーツに身を包んだ重装兵から、より軽量の装備にとどめた警備兵まで、ひとりの例外もなく通路のうえに転がっている。

 兵士たちに誰

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【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (14/16)【蚕食】

【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (14/16)【蚕食】

【目次】

【潜在】←

「許すことは、到底、できない……ぼくと『ドクター』の対話の邪魔をした対価は、高くつくだろう……『淫魔』!」

 モーリッツは、目にも止まらぬ速度でタイピングを開始し、中央制御システムを直接、動かしはじめる。膨大な電子情報をスキャンし、潜りこんだ異物を洗い出す。

 サブモニターで監視している『ドクター』が、『塔』の通路を走っている。男は、ノンフレーム眼鏡越しに、苛立ちげに

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【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (13/16)【潜在】

【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (13/16)【潜在】

【目次】

【矜持】←

──Alert……Alert、Alert、AlertAlertAlert

 モーリッツの精神は、わずか数秒の夢想から現実に引き戻される。眼前の導子コンピュータの内蔵スピーカーから、けたたましい警告音が鳴り響いている。

「……いまさら、なにがあった! 『ドクター』は、到底、動きようがないだろう!?」

 神経質そうな顔立ちでやせ気味の男は、中指と人差し指でノンフレーム眼

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【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (12/16)【矜持】

【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (12/16)【矜持】

【目次】

【屈辱】←

 直接的なきっかけとなったのは、もう少ししてから耳に挟んだうわさ話だ。あの『ドクター』が、とある少女を養子として引き取ったという。

 ララという名の少女は、『ドクター』直々の薫陶を受け、見る見る才能を花開かせていった……少なくとも、うわさではそういうことになっていた。技術開発部部長であるスーパーエージェント以外で、唯一、導子理論を完璧に理解する人間だ、と。

 ことの真

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【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (11/16)【屈辱】

【第2部26章】ある導子学者たちの対話 (11/16)【屈辱】

【目次】

【窒息】←

「落ちつけ……この状況は『詰み』だ。『ドクター』の言葉は、強がりだ……到底、一点たりとも、悪くはない。このまま、ゲームセットを待つだけだ……丸裸になったキングピンだけで盤面をひっくり返す手など、いまさら、ないだろう!」

 ノンフレームの眼鏡をかけた神経質そうな男は、導子コンピューターのモニターのまえに座ったまま、ぶつぶつとつぶやきながら親指の爪をかむ。

 男の足元には

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