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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2021年5月の記事一覧

【第2部21章】蒸気都市の決斗 (3/8)【閉塞】

【第2部21章】蒸気都市の決斗 (3/8)【閉塞】

【目次】

【後塵】←

「むー……」

 ぶかぶかの雨具のフードの影から、追跡者は不満げなため息をこぼす。

 ストリートを挟んで向かいに立地するボロアパートの屋根には、巫女装束のエルフ。その背後を、ターゲットである白銀のドラゴンがよろめきながら飛び離れていく。

 ここまで来て引き離されるのは気にくわないが、あの程度のスピードならば帝国本土へ侵入されるまえに、ふたたび追いつける自信がある。

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【第2部21章】蒸気都市の決斗 (2/8)【後塵】

【第2部21章】蒸気都市の決斗 (2/8)【後塵】

【目次】

【追随】←

「メロ……どうかしら!?」

 加速する白銀の上位龍<エルダードラゴン>の背にうつ伏せの格好でしがみつきながら、ミナズキが問う。メロは、ひざ立ちの体勢で髪を揺らしながら、後方を監視し続けている。

「ダメなのね! ぜんぜん引き離せない……もう、ほとんど真下につけられているッ!!」

『手加減して飛んでいるつもりは毛頭ないのですが……相手も、なかなかのやり手のようですわ……

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【第2部21章】蒸気都市の決斗 (1/8)【追随】

【第2部21章】蒸気都市の決斗 (1/8)【追随】

【目次】

【第20章】←

 酸性雨に濡れたレンガとコンクリートのビルが林立する灰色の都市。街の中央にそびえ立つ市長府に併設された蒸気瓶工場からは、もうもうと絶えることなく白煙が吐き出され続けている。

 ごうんごうん、と響き続ける低い振動運とともに、道路に渋滞する蒸気自動車や大小様々な建造物からも排蒸気があふれ出し、空をおおう分厚い灰色の雲に登っていく。

 昼間でも薄暗い蒸気都市、視界をおお

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【第2部20章】空を駆ける銀色の稲妻 (4/4)【散開】

【第2部20章】空を駆ける銀色の稲妻 (4/4)【散開】

【目次】

【傭兵】←

『なんとなればすなわち、このまま敵戦力によって張り付けにされてはかなわないかナ。シルヴィアとリンカくん、および『スカーレット・ディンゴ』は、敵の第3波のまえに本艦から離れて、それぞれ指定ポイントへと向かってほしい』

『グッド。雑兵相手じゃ、退屈しはじめていたところだろ』

 ナオミはハルバードに取りつけられた鎖を引っ張り、魔銀<ミスリル>の長槍を手元に引き戻す。

『あ

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【第2部20章】空を駆ける銀色の稲妻 (3/4)【傭兵】

【第2部20章】空を駆ける銀色の稲妻 (3/4)【傭兵】

【目次】

【上陸】←

「……グヌッ」

 アサイラは、小さくうめく。先行して接近してきた航空戦力……おそらく哨戒戦闘機が、次元巡航艦『シルバーブレイン』の高々度に張りつき、旋回し続けている。おそらく攻撃は地上部隊に任せて、艦の動きの監視に徹するつもりだ。

 黒髪の青年は、露骨に舌打ちする。背中に翼をはやした戦乙女ならいざ知らず、ただの人間にすぎないアサイラは、高所より見下ろす航空機には手も足

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【第2部20章】空を駆ける銀色の稲妻 (1/4)【艦内】

【第2部20章】空を駆ける銀色の稲妻 (1/4)【艦内】

【目次】

【第19章】←

「なんとなればすなわち。現在、本艦はユグドラシルを離れ、次元潜行モードでグラトニアへと向かっている」

「グリン。虚無空間を飛んでいる……という認識でいいのだわ?」

「無論、ただ飛んでいるだけではないのだが……おおまかな理解としては、間違ってはいないかナ」

 次元巡航艦『シルバーブレイン』船内、ミーティングルーム。プロジェクターによって投影された航路図をまえに白衣

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【第2部19章】終わりの始まり (8/8)【演武】

【第2部19章】終わりの始まり (8/8)【演武】

【目次】

【失落】←

「オラオラオラー! ほかの氏族におくれをとるなアァァーッ!!」

「ヨーソロー、面舵いっぱい! 戦乙女どものの目にものを見せてやれ!!」

「抜かるなよッ! 故郷の空を取り戻す、またとない機会だ!!」

 凍海のうえに、ドヴェルグたちの怒号が響きわたる。水面に白波をたてる船団が、氷山のごとく海に浮く天空城へと迫っていく。地底の住人たちが走らせるのは、大海竜狩りに用いられる

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【第2部19章】終わりの始まり (7/8)【失落】

【第2部19章】終わりの始まり (7/8)【失落】

【目次】

【張手】←

「貴様……我々の姉妹を、よくも……ッ!」

 別の女の悲痛な叫び声を聞きとめたライゴウは、悠然と振りかえる。地面に叩きつけられたヴァルキュリアが、折れた四肢や双翼を奮い立たせ、よろめきながら起きあがる。

 ひとりだけではない。全体の3割り前後は、まだ戦意を喪失していない。スモウレスラーは、ほう、と感心したように白い吐息をこぼす。

「武人の一族、という前評判は伊達ではな

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【第2部19章】終わりの始まり (6/8)【張手】

【第2部19章】終わりの始まり (6/8)【張手】

【目次】

【醜足】←

「軍事演習で、戦闘機を墜としたことならあったが……城ほどの大物は、初めてだってことよ。なるほど、なかなか手強い」

 ライゴウは、激しくタービンをまわす蒸気機関のように白く熱い吐息をふく。

「だが、なに……手応えは、あった。一発で墜ちぬなら、何度でも踏んでやるまでのことよ……ッ!」

 スモウレスラーは、先ほどとは反対側の脚を高々とあげる。一拍の間を置いて、勢いよく振り

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【第2部19章】終わりの始まり (5/8)【醜足】

【第2部19章】終わりの始まり (5/8)【醜足】

【目次】

【扇動】←

──ヒュオオォォォ……

 モノクロームの凍原に、吹雪が舞いおどる。この次元世界<パラダイム>の地表では、あたりまえの風景だ。

 白い根雪に、黒い岩石。厚い灰色の雲に空をおおわれてしまえば、唯一の色彩は氷海の蒼くらいのものだが、それすらいまは荒天に阻まれて見通せない。

 海岸を見通せる凍原、吹き荒れる暴風雪のなか、人影がひとつ仁王立ちしている。背にはためくは赤い外套…

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【第2部19章】終わりの始まり (4/8)【扇動】

【第2部19章】終わりの始まり (4/8)【扇動】

【目次】

【冒涜】←

「カマルク氏族のドヴェルグたち、それに我が理念に共鳴して集まった皆の衆……決起のときは、来た……故郷の空を取り戻す、祖先からの悲願を果たす……ッ!」

 鎧兜を身につけた巨体の氏族長が、大声を張りあげる。大入道のまえには、地下採掘場跡の巨大空洞が広がり、およそ千人ほどの若いドヴェルグたちが整列している。

 直立姿勢で氏族長の言葉に耳を傾ける地底の住人たちは、皆、盾や斧、

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【第2部19章】終わりの始まり (3/8)【冒涜】

【第2部19章】終わりの始まり (3/8)【冒涜】

【目次】

【捕食】←

「氏族長サマ。全身にタチの悪い病巣を飼っておいて、まさか完治したとでも思っていたのか? オマエな、オレの転移律<シフターズ・エフェクト>で『死なない』ようにしてやっていただけなのさ」

 征騎士ロックは、ひざを曲げて、老ドヴェルグの顔をのぞきこむ。グスタフ氏族長の巨体は、びくびくと小刻みに震え、口からは淀みきった血液があふれ続けている。

「うぶぶぶ──ッ!」

「……あ

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【第2部19章】終わりの始まり (2/8)【捕食】

【第2部19章】終わりの始まり (2/8)【捕食】

【目次】

【盟主】←

「驚いたな……簡易測定だが、この縦穴の深さは、天空城の高度とほぼ同値だろう」

 白衣のプロフェッサーがヴァルキュリアの拠点の名をつぶやくと、輿のうえに鎮座する老ドヴェルグが少しばかり不機嫌そうに鼻を鳴らす。ロックは、同僚のわき腹を肘で小突く。

 若い同族たちに担がれたグスタフ氏族長を先頭に、グラトニア帝国の面々は地下都市を通り、坑道を抜け、底も見えないほど深い縦穴を巡

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【第2部19章】終わりの始まり (1/8)【盟主】

【第2部19章】終わりの始まり (1/8)【盟主】

【目次】

【第18章】←

──ドゴオォンッ!

 ドヴェルグの地下迷宮にて、ぱらぱらと天井から小石が落ちてきたかと思うと、突如として轟音が響く。崩落が発生して、直下にいたふたつの人影は土砂に呑みこまれそうになる。

「プロフッ! なに、ぼーっとしているのさ!?」

 落盤地点から素早く飛び退いたひとりが、逃げ遅れた相方に向けて右腕を伸ばす。キュルキュルキュルッ、と耳障りな音が響き、地下道の闇の

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