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先週の水曜日は台湾點心、碗粿 (oánn-kóe オアクエ )について片倉佳史さんと対談しました。
碗粿 (oánn-kóe オアクエ)は在来米(インディカ米)の粉と片栗粉を水で溶いて、それにさらに熱湯を加えて、かき混ぜるか、或いは鍋に入れて煮るかして、ドロドロの状態にしたものを陶磁器のお椀に入れて蒸しあげたものです。南部式の場合は干しシイタケや切り干し大根を細かく切ったものと干し エビ、豚ひき肉などと一緒に豆油膏 (tāu-iû-ko タウイウコー:甘くドロッとした台湾醤油)で炒め、それを米の粉と片栗粉を合わせたドロドロ状の液体の中に入れて一緒に蒸しますが、北部式は蒸しあげた後に上に細かい具材をトッピングします。また、液体の中にも具材を入れ、上部にも具材を載せ、一緒に蒸す作り方もあります。
食べる時に蒜頭豆油(soàn-thâu-tāu-iû ソアンタウタウイウ=おろしニンニクを混ぜた醤油)をかけます。碗粿(oánn-kóeオアクエ)は客家人も作りますが、客家語では水粄 (súi-pán スゥイパン)と言います。また、黒砂糖を加えて甘い味にする場合もあるようです。 飲食店では型として使ったお椀に入ったまま場合も出される場合もあるし、お椀をひっくり返してお皿に載せて出される場合もあります。
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米の粉を溶いたものを蒸して作る食品を台湾語では粿(kóe クエ)、客家語 では粄(pán パン)と言います。平べったい形のヌードゥル状にしたものは台湾語では粿仔(kóe-á クエアァ)や粿仔條(kóe-á-tiâu クエアァティアウ)または粿條(kóe-tiâu クエティアウ)と言い、客家語では粄條(pán-thiàu パンティアウ)や面帕粄(mien-pha-pán ミェンパァパン)と言います。東南アジア諸国では台湾語と近い関係にある言語の福建語や潮州語の影響で、この平たいライスヌードゥルのことを台湾語と似たような言い方で呼ぶところが多いです。またインドネシア語ではお菓子全般をクエと言うそうですが、おそらく福建語や潮州語の粿(クエ)の影響を受けた外来後表現だと思います。
実は日本のガイドブックやウェブサイト上などで碗粿 (oánn-kóe オアクエ ) のカナ表記がワーグイとなっていることが多く、なぜこのようなカナ表記になってしまっているのか、不思議に思っています。碗粿(oánn-kóe オアクエ)の取材をしたある日本人ライターが聞き間違った発音を自分でカナ表記に起こし、その表記が相応しい表記かどうか確認されずに、印刷媒体やネット上の記事に掲載され、それを多くの他のライターや記者もまた相応しい表記がどうかの確認をせず、真似して使っているのかもしれません。この食品は中国語会話の中でも必ずと言ってもいいほど、台湾語発音で呼ばれるものです。ぜひ、原音に近いカナ表記で紹介してもらいたいものです。
実は日本の台湾観光ガイドブックなどで台湾語のカナ表記が可笑しいのはこの碗粿(oánn-kóe オアクエ)に限ったことではありません。例えば台湾語の「こんにちは =你好 lí-hó」などもリーホウと書かれていることが多いですね。好の発音はホウではなくて、ホーとフーの中間のような曖昧な発音ですし、「おいしい=好食 hó-chia'h / hó-chiah」もホウジャーと書かれていたりします。カナで書くのならホーチァッが近いと思います。食 chia'h は決してジャーのような長音ではないし、濁音でもありません。急激に発音を止めるような音で、一種の促音です(入声音)。