立命館を蹴って、東大を目指した話⑩(西成編)
⑨は下のリンクから
キッカケは友達の紹介だった。
1月6日。
いつものように友達と集まって喋っていた。
その時に、僕の将来についての話になった。
A「このままニートはマズいやろ笑」
B「最近、バイトとか探してるん?」
ワイ「……」
A「じゃあ、俺の友達がおる王将で働く?」
ワイ「えぇ......なんかしんどそう」
A「いや、もうとりあえず働いてみよ! 今から店に電話するで!」
ワイ「ちょ待てよ!」
📞📞📞
A「今から面接いけるやってさ笑」
ワイ「おい、マジかよ笑」
〜店に到着〜
店長「なるほど、今はニートなんか。で、ここで働きたいんや笑 週何日入れる?」
ワイ「いつでも入れます!!! (ヤケクソ)」
店長「よし、採用! 明日、書類と筆記用具持ってきて!」
ワイ「はい! わかりました!」
こうして、王将でのバイト生活が始まった。
"日本一治安の悪い"餃子の王将
みなさんは、西成という街を知っているだろうか?
大阪に長年住んでいる人ならわかると思うが、西成は日本屈指の治安が悪い街である。
今は少しマシになったが、10年前は路上に浮浪者がゴロゴロいるような地域だった。
特に、日本最大級のスラム街である、「あいりん地区」は犯罪が多発しており、女性が一人で歩くのは危険である。
昔、友達が、自転車のカゴの中に食べかけのお菓子を置き忘れたらしいんやけど、帰ってきたらなくなってたらしいwww
そんな街の大通りに、その王将はあった。
となると当然客層は悪い。
初日は、内心めちゃくちゃ緊張していた。
接客なんて高2の時以来だったし、少しでもミスをしたらブチギレられると思っていたからだ。
ということでここからは、客層最悪の餃子の王将での8ヶ月間の死闘を語ろうと思う。
初出勤
「餃子の王将 太子店」は、11時開店、21時閉店だった(コロナ禍で時短営業)。
上の写真は、店内の簡易見取り図。
1〜7番がカウンター席で、8番が2人用席、9と10番は4人用席となっている。
2階もあるが、人員不足で回せないので基本的には空けていない。
1月16日。
初出勤の日。
開店10分前。
外を見ると、何人かガラの悪いおっさんが店の前で屯している。
いや、まさか入ってこやんよなwwwと内心ドキドキしつつ、開店の準備をした。
11時。
店のシャッターが上がった。
と同時に、雪崩のようにそのおっさん達が流れ込んできた。
案内をするより先に、お気に入りの席に勝手に席に着き、目が合うやいなや、こう言い放った。
「生と餃子」
「へ?」
思ってたのと違う。
こっちは初日でハンディなんて使えるわけないのに、そんなこと知るはずもない相手はお構いなし。
ある程度メニューの位置を覚えるまでは、持ってきたメモ帳に殴り書きしていた。
他にも驚いたことがあった。
1.オーダーを通すとき、なぜか中国語
王将が中華料理店なのは知っていたが、こんなルールがあるのは知らなかった。
もちろん中国語なんて喋れるわけがなく、最初は中々覚えられなかった。
2.異様なほど高い外国人率
初めてシフト表を見た時、ビックリした。
「グエン?ズン?ビン?何人......?」
そこには、明らかに純日本人ではない名前が羅列されていた。
聞くところによると、彼らはみんなベトナム人らしい。
なんで? と思ったが、この王将の立地を考えてみると、スっと腑に落ちた。
まぁでも、逆にこれがよかったのだと僕は思う。
言ってみれば、少数の日本人がベトナムに留学してベトナムの王将で働いているようなもの。客もたまに日本語が通じないし(働いてみればわかります笑)、本当に異国で働いている気分だった。
新鮮で楽しかった。
そして、王将での日々は瞬く間に過ぎていった。
登場人物紹介
ここで、餃子の王将 太子店の主要人物を紹介。
1ヶ月働いてみて
初月の給料。
週5で入っていたので、結構稼げた。
ちなみに、当時の時給は992円。
明らかに見合ってなくてワロタ
この1ヶ月間で、客に何回もキレられた。
というか、もはやアレを客と呼んではいけない。
せっかくなので、今まで出会ったヤバい客をまとめてみた。
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①一人で餃子7人前食うおっさん
1人前が6つなので、42個。
さすがに聞き間違えかと思ったが、黙々と一人で餃子を食べていた。
作るのは大変だったが、特に害はなかった。
こんなのでビビっているようだと、先が思いやられる。
②3時33分に来て、天津飯だけ食って帰るおっさん
常連客。
毎日、決まって3時33分に来て、天津飯だけ食べて颯爽と立ち去る。
Hさんが「交差点でアイツの姿が見えたら、オーダーとる前に天津飯作り始めるでwww」って言ってて、流石に草生えた。
③谷間全開の、ノリのいいお姉さん
別にヤバい客ではなかったが、印象に残っていたので紹介。
あれは僕がホールをやっていた日のこと。
ヘッドホンを付け、胸元を大きく開けた若い外国人風のお姉さんが入ってきた。
そもそもこの店は、女性が来ること自体珍しいのに、「若い」かつ「一人」だったので驚いた(激レア)。
席に着くやいなや、「お兄さん! どれがオススメかな? ちょっと選んでよ😎」と話しかけてきた。
「これがオススメですかね!」と返すと、「そう。ありがとね!」と大層上機嫌に笑っておられた。
④言語が通じないおっさん
この王将には、このタイプの客がよく来る。
「アルコール消毒してください!」と店員が何回言っても、まったく聞く耳をもたない。
挙句、意味不明なことを喚き散らしながら、何も食べずに出ていった。
真相は風の中。
⑤原始人
その名のとおり、言葉が通じない。
その日、彼は王将ラーメンを頼んだのだが、持っていってから5分ぐらい経っても一向に食べようとしない。
そして、つぶらな瞳を輝かせながら、ずっとこちらを見つめている。
あまりに気になったので話しかけてみると、箸のジェスチャー🥢をして、必死に訴えかけてきた。
いや、麺伸びるて!
⑥臭すぎるおっさん
あまりにも臭すぎて、カウンターで隣に座っていた女性客が救援を求めてきた。
しかも、食べ方が死ぬほど汚い。
⑦カウンター席で3時間半酔いつぶれていたおっさん
あまりにも幸せそうな顔で寝ているので放置していた。
間違っても、こんな大人になってはいけない。
⑧知らない人と相席するおっさん
席が空いてなければ普通は空くまで待つのだが、テーブル席に一人で座っていた男性のところへ行き、相席を申し込んでいた。
初対面ということもあり、男性は苦笑いだったが、なぜか交渉は成立し穏便に済んだ。
⑨豆
常連客。
毎日、夕方に来て、"餃子3個とチャーハン"だけ注文する。
小柄で短気なので、豆というあだ名がつけられた(謎)。
新人の子が注文を通し間違えた時、「もうええわ」と捨て台詞を吐いて、キレながら帰っていった。
ある時から急に来なくなったが、この前店の近くを歩いている時に見かけてめちゃくちゃ興奮した。
⑩瓶ビールに取り憑かれた男
「瓶ビールあるかー?」
「すみません。今日は品切れになっちゃったんですよー」
「今日はじゃなくて、今日"も"やないか」
不貞腐れて帰っていった。
家で晩酌でもしてろ。
⑪二重人格ジジイ
山木の証言を基に再現。
⑫ヤ○ザ
集団で来た。
指がない人もいたので、多分ガチ。
⑬短気すぎるジジイその1
チャーハンを出すのがちょっと遅れただけで、「お前ら最低や!」と喚き散らし、持っていった後もずっとグチグチ言ってきた。
二度と来るな
⑭短気すぎるジジイその2
箸と水を出すのが遅れただけで、「舐めてんのかおい。店長呼べや。表出ろお前」と言われた。
二度と来るな
⑮待ってる間、ブツブツと独り言を言ってるおっさん
料理が届くまでの間ずっと、「だから俺は言うたやんけ。こんなとこ来るなって」「王将はアカンからな」等、意味不明な言葉を発していた。
いつブチギレるかわからないオーラがあったが、料理を持っていった瞬間、「ありがとう!」と言い、表情を緩めた。
なんや、ええやつやんけ! と思ったのも束の間。
食べながら一人でキレ始めた。
二度と来るな
⑯ラストオーダー終わってるのに、無理やり店内に侵入してきたジジイ
常連とまではいかないが、たまに来る。
「このチャーハン、味薄ない?ちょっと食べてみーや」と言って、店員に自分の食いかけを食べさせてきたり、「餃子と天津チャーハン、一緒に持ってこいって言うたやろが」と喚きながら、20分ぐらいキレ散らかしたりした過去をもつ。
その日も、ラストオーダーが終わっているのにもかかわらず、「まだいけるやんな? な! いけるよな!」と言いながら勝手に店内に侵入してきた。
めちゃくちゃ粘ってきたが、なんとか追い返すことができた。
二度と来るな
⑰カス4人組
1月31日。
その日の昼の営業は、人が足りていなかった。
そんな忙しい時に、奴らは来た。
酔っ払い4人組をそれぞれ、A・B・C・Dとおくことにする。
普段めったに怒らないけど、流石にキレた。
二度と来るな
⑱自分の非を認めず、オーダーミスにしようとするクズ
〜10分後〜
〜20分間の口論〜
店長なので色々責任があるのはわかるが、だからといって店員側の主張を聞かずに謝らせるのはどうかと思った。
こんな舐められるようなことばかりしてるから、日本はいつまで経っても客>>>>店員なんだなと。
ムカつくというより、呆れて悲しかった。
二度と来るな
⑲放火宣言ジジイ×2
個人的には、これが一番理不尽。
追加オーダーがあったときは、上の写真のように伝票を重ねるのが一般的。
追加でオーダーを受けたので、食べた分がわかりやすいように丁寧に重ねて普通に伝票を渡したのに、「なんで伝票、一つにまとめへんねん。お前んとこの店燃やすぞボケ」とブチギレられた。
あまりにも唐突すぎて一瞬言葉を失ったが、一応ちゃんと説明。
それでも「舐めたことしとったらマジで火つけるぞ」の繰り返しだったので無視した。
頼むから二度と来るな
⑳警察のお世話になる客(最上級)
信じられないかもしれないが、この店は2ヶ月に1回くらいの頻度で警察が来る。
もちろん巡回のためではなく、通報によるもの。
8ヶ月間で4回警察が来た。
「殺すぞ」や「死ね」などの罵詈雑言が飛び交う。
客同士で乱闘を始めることもあり、運がよければ2v2や三つ巴の戦いを見ることができる。
良い子は大人しく、他の王将に行こう!
話を戻そう。
3月
時給が992円から1030円になった。
やっとかよ。
4月
上の写真を見れば、ほとんどの人はピンとくるだろう。
そう、コロナになったのである。
2022年4月15日の朝。
起きてすぐ喉に違和感を覚え病院に行くと、陽性であることが判明した。
そして、10日間の隔離生活を余儀なくされた。
隔離場所はアパホテル。
食事は一日に3回。
成人男性からしてみれば、こんな量で足りるはずもなく、たまたまホテルの近くに来ていた友達から差し入れを貰った。
10日間、一切外出できなかったので、めちゃくちゃ暇だった。
楽しかったのは最初の3日ぐらいで、後半は地獄。
4月20日の王将のグループLINE。
週5で入っていたやつが急にコロナになったので、店は過去一番の窮地へ。
店長から"壊滅"というワードが出てきて、思わず吹き出してしまった。
謎の病気
コロナに罹った日から、身体中に謎の発疹が出始めた。
そして、めちゃくちゃ痒い。
どうせすぐ治るやろ! と高を括っていたが、一向に消える気配がない。
皮膚科に行って薬を処方してもらうも、全然治らない。
今まで発疹やニキビなどで悩んだことがなかっただけに、めちゃくちゃ怖かった。
2023年1月22日現在、ほとんど治ったものの完治はしていない。
5月
6月
7月
時給が1030円から1040円に。
仕事量を考えたら、1500円くらいあってもいいと思うが......
珍しく日本人が4人入ってきたが、あまりの劣悪環境に耐えきれず、1人は1ヶ月、残り3人は1日で辞めた。
新天地へ
こんな所で8ヶ月も続けられたのは、周りの人達のおかげだった。
愉快で明るく、優しいベトナム人たち
店の掃除など、普通やりたがらないようなことを率先してやってくれたMさん
腰を曲げながらも、鍋を振り続けたYさん
そして、無茶なシフトを組むこともあったが、僕らをまとめてきた店長
とても濃い8ヶ月だった。
次回第11話「転換期編 第一章」