ゴカムブッククラブ山本和重『北の軍隊と軍都: 北海道・東北 (地域のなかの軍隊 1)』
これはマガジンなのですが、ゴカムブッククラブをふまえているため、有料部分は実質的にありません。
軍都・旭川
『ゴールデンカムイ』の第7師団は人気者で、軍服を模したアパレルまで販売されそうになり、揉めています。それはどうして揉めるかというと、歴史的な問題点への理解不足も大きいと私は思います。日本軍の制服そのものの扱いに配慮が必須であり、見るのも嫌だという海外の方は多いものです。
それに加え、軍都・旭川の成立そのものがアイヌへの迫害ありきのものといえる。そこを踏まえると、第7師団が悪役なのは当然の帰結といえます。
アイヌ兵士の置かれた環境
この本は、アイヌ兵士が受けた理不尽な状況を知ることができます。
見せ物にされる。
体臭が強いといった根拠ない偏見にさらされる。
その反面、兵士になって軍功をたてることで、シャモ(和人)に認められると奮起したという話もある。
軍隊はアイヌの生活を変えた
こうした軍隊への徴兵が、アイヌの文化を消し去ってゆく一端を担ったことも考えねばなりません。それが慰霊です。戦死者をアイヌの様式で弔うことができない。やむなく別の方式で行うことが重なり、その結果として慰霊の変容が促されていく一面があったのです。
それがよいことか?
『ゴールデンカムイ』のキロランケならそうは思わないでしょう。
『ゴールデンカムイ』を再考する
本書を読み、『ゴールデンカムイ』を再考すると、有古の扱いはどうだったのかと思ってしまいます。有古が悩むだけでなく、誰かしら差別的なことを言う場面がないのはなぜなのかと疑念は感じます。相当無神経で人格破綻した人物揃いなのに、アイヌを見下すようなことは言わない。ゆえに有古というアイヌ兵が、自分自身への決着をつけるような描き方にしているわけです。アイヌ差別ととられたら厳しいということはわかる。けれども、アイヌ兵の置かれた状況を学べるかというとむずかしい。
むしろキロランケの方がそういう意味ではうまく描けているとは思いますが、彼とウィルクはあやまった選択肢をとった人物ともいえるので、これまた複雑です。
はっきり言いましょう。私は納得できない。
じゃああの作品はどうすればよかったかというと、そもそもハッピーエンドにできなかったのではないかと思えてきます。あの最終巻のあと、日本は戦争にのめり込んでゆく。西南、日清、日露どころではないほど大量の戦死者がでます。沖縄戦では北海道出身兵の犠牲が多く、アイヌの慰霊祭が実施されています。
鯉登は最後の第7師団長になる運命があってもおかしくない(彼の名前のルーツだ)。谷垣とインカラマッの大勢いる息子は、誰かしら戦死したことでしょう。アイヌでありながら「靖国の母」になってしまうのか。
国家に組み込まれた以上、個人の幸福だけを追求するには無理がある。それが近代史ものの宿命だと私は思うのですが、そこと向き合っていないのではないかと思う次第です。
なお、繰り返しますが、このエントリはブッククラブ用であるため有料部分は何もない一行のみとなります。
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