音食紀行『食で読むヨーロッパ史2500年』
音食紀行さんの本は好きです。彼らがヨーロッパ史をまるごと取り込んだ一冊を出すのだから、これは見逃せません。
世界史を選ぶ中高校生にピッタリだ
本書は誰におすすめか? それはズバリ中高生です。難易度は高くなく、ちょっと背伸びすれば読めそう。それでいて、高度な内容もあるし、違いがわかるとアピールできるし。こういう本を読める中高生は幸せだ! 是非とも図書館、それも学校図書館に入れていただきたい。巻末レシピを作ってみて、SNSにアップロードしたらきっと盛り上がりますよ。
なぜ中高生によいのかというと、気持ちが暗くなるようなえげつない話や、媚薬に使えるホニャララといった、あやしげな要素はないこともあげられます。
えぐい人物も取り上げられておりますが。そんなに深く突っ込まないし。中高生むけにいきなりホロコーストの食卓のようなネタは取り入れても困るだろうし。
課題図書にも指定できる。イラストも可愛らしい。親しみやすい。どこをめくってもトリビアと楽しい話であふれていて、まるでおもちゃ箱のよう。歴史を好きにするのは、こういう本だと思います。
アルコールの話がないわけではないけれど、それにまつわるよくない話もないですし。穏健で手堅い一冊ですよね。
大人はもっとえげつない話が読みたいかな?
と、こうして書いてきて。
なんか奥歯に物が挟まったような物言いじゃない? そうあなたが思ったなら当たりです。
この本はそこまで暗い話が出てこない。ホガースの『ジン横丁』だとか。イギリス海軍の兵士がグロッグでベロベロになってマストから転落死しそこねていたとか。イギリス人が産業革命でヘロヘロになって食事どころじゃなくなったとか。ナポレオンとチーズの下ネタとか。
それとヨーロッパで区切っているので、その範囲からでたヨーロッパ人がアフリカやアジアでかけた大迷惑話もありません。新大陸からもたらされるのも、あくまで食べ物だけであって梅毒への言及はない。
別にケチをつけているわけじゃない。そういう話まで扱うとなると、テーマがずれてきちゃうし。
これはあくまでとっかかりの一冊。これからもっといろんなことが知りたいと思ったら、別の本を読めばいいだけ。
あとヨーロッパだけなので、他の地域も調べたいならそれを読めばいい。
食事と歴史を学ぶうえで、とっかかりとしてすごくいい本であることは確か。それで十分じゃないですか。
できればSDGsにからめた本もいいかも。中高生のみなさんならば、『食べものから学ぶ世界史』をネクストステップとしてオススメします! ジェンダーや帝国主義方面に進んでもいいんですよ。こういう良書から始まって、書物の旅に出かけられる人は幸せです。