大河ドラマ「光る君へ」第48話「物語の先に」(最終回)
・倫子の前で全てを話すまひろ。前から勘づいていたのは観ていれば分かるし母も直秀も殺された中でより絆が深まっていくのも分かる、だから倫子が受ける衝撃も大きいがより大きかったのはそれを隠しながら彰子の側にいたことなのかなと思った。
・それでもまひろは賢子の事は言わなかった・・・、というか言えるわけ無いけれどここで倫子がまひろと道長の事を受け入れる訳がないのは仕方がない事、妾になる事をその前に頼んでいたけれど二人の縁の深さに入る隙もないことに傷ついているようにも見えた。
・道綱はこの緊迫感のある最終回の流れの中でも相変わらずで安定感があってこのドラマの癒しであった、出自のお陰で出世が出来て権力に呑まれず巻き込まれず最後まで全く変わらなかった、道長が嫌いにならなかった訳だしまひろと出会わなかったら道綱ような人生なのかもしれない。
・ききょうとも和解ではなく気軽に話せる仲に戻って安心、そもそもまひろと距離を置いていた中でも伊周のように道長に恨みを持ち続けることなく流れる月日の中で自分の中に納めているというのはまひろと同じく物語を書く作家として権力闘争の中に生きてきた人間では無かったということかも。
・隆家も最後まで権力に呑まれず生きてきた好人物、勿論兄である隆家が道長を恨むための人生を過ごしてきたしその原因を作ってしまったのも隆家本人だけれどまひろと同じく翻弄されながらもそれを受け入れて前へ進んでいく姿はまひろと合う人物でもあった。
・倫子の願いによって病床の道長と会うまひろ。「源氏物語」の光る君は道長の事だったけれど最後に三郎である道長に物語を聞かせる場面はこのドラマの集大成であり二人のこれまでの絆や縁を感じさせた。
・道長が亡くなったのと同時に行成も亡くなるというのはドラマ的に合わせてきたようだが勿論史実では違う、同じ時期という事だがこのドラマでの行成は最初から道長を慕ってついて来ていたからなったから納得の演出かな。
・最後は乙丸と共に旅に出る、乙丸も最後までまひろと一緒だった、辛い時でもずっと寄り添っていたのは乙丸だけだしやはりジンとくる、旅の途中で双寿丸と出会い「嵐が来るわ・・・」と呟くまひろのアップで終わりこの先の戦国の世を想起させる意外な終わりだった。
・まひろのアップで不自然に画面が停止していてちょっと最後の最後で違和感なんだけど(苦笑)戦国の世の武将に「源氏物語」が広く読まれている事を思えばまひろの物語としての終わりではなく続いていく世の中、続いていく物語を想起させるラストであった。
・道長がまひろと出会った事により元々権力者の息子ではあるものの自分が世の中を変えていこうと権力を手にする道へ進んでいったけれどまひろ自身の影響力は「源氏物語」を書くことにより結果的に彰子が一条天皇の子を産むこととなった事で変に劇的に描かれなかったのは良かったと思う。
・「源氏物語」によって一条天皇の心から枕草子=定子が離れたと感じているききょうがまひろに対して怒りを露わにしている場面はあったがまひろの行動に何か制限がかかるわけでもないしまひろの一作家としての淡々と描いていたと思う。
・あくまでまひろもこの当時に生きていた一人として描いていて回によってはまひろの言動が少ない事もありドラマにありがちな主人公一人の言動により一気に周囲に影響が働き、主人公に都合の良い物語となってともすれば冷めてしまう事もあるけれどそれを感じさせないのは良かった。
・僕は大河ドラマや歴史ドラマもほとんど観ず歴史自体の知識も素人なのでもしかしたら最高権力まで上り詰めた道長に対して物足りなさを感じる部分はあったのかもしれない。
・伊周をはじめ道長が権力を得る中で妨害や敵対する人物はいたものの主人公であるまひろを中心に描いているわけで権力闘争にしても極端にドロドロしたような描き方をしなかったので観やすいドラマであった。
・大河ドラマというと豪華で多彩な俳優陣が出演するわけだけど芸人さんも最近では主要キャラでも登場するけどやはりこの作品においてはロバート秋山さん演じる実資、カラテカ矢部さん演じる乙丸がお気に入りで芸人らしいコミカルで笑える部分と真剣な場面のジンとくる場面のバランスが特に素晴らしかった。
・視聴率においては昨年の「どうする家康」より低いようですが現代的な価値観を所々で差し込み過去の歴史において無理矢理な解釈をしているような場面が散見していると感じていましたがその点においてまひろや道長、他の登場人物において変に現代的な価値観ではなく当時を生きる人間としての価値観で丁寧に描かれていると感じました。
・まぁ視聴率については最近のドラマにおいてはイコール品質という参考にはなり得ないので来年の「べらぼう」も楽しみにしております。