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オウルン戦記

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もう、時効でしょう…
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2024年1月の記事一覧

オウルン戦記 新章

西暦1☓☓3年より15年前 マルティーダ王国内 コロシアムにて きらめく照明の数々。 ざわめく観客、手を振る国王。 そして、国王の一人娘であるゴウ・ミツエは、周囲のざわめきにストレスを感じていた。 ミツエは人前で全く言葉を発せない。なぜならコロシアムでの殺し合いの風景が残酷すぎたあまり、そのショックで口をきけなくなったのだ。 しかし、その姿を国王は爆笑して、笑い飛ばした。 「そんなにミツエがおかしいのなら治療すればよいだろう!治療はいつだってできるのだから!」 ミツエ

オウルン戦記 新2話

「王女様、これから致す処置はかなりの痛みを伴います。それでもよいですか?」 ミツエは、うんと首を振った。 「貴方様はこれからゴウ・ミツオと改名し、新たな人生を歩むこととなります。それでもよいですか?」 「あのね、人と喋れるようになるならなんでもいいの」 ミツエは精一杯ながらも、静かに答えた。 「そうですか、ではミツオ様。手術を始めますぞ」 そうよ、私はミツオなの。 この瞬間だった。 ゴウ・ミツオがこの世に誕生したのはこの瞬間だった。 ここで男としてのアイデンテ

オウルン戦記 新3話

1☓☓3年より8年前 イーバン高校内にて ミツエはミツオとして高校生活を送っていた。 ミツオは既に高校でトップの成績を抑えていた。特に優れていたのは銃器の分解作業だった。 彼のメカニックに対する共用は凄まじく、肉体的戦闘を愛するマルティーダ王の娘とはとても考えられないほどに、ミツオはS国の国民になりきっていた。 もう言葉を発せないプリンセスが存在していたことなど誰も覚えていない。 「そろそろS国軍の募集が始まったな」 ミツオは高校唯一の親友であるオイカワに声をかけた。 「

オウルン戦記 新4話

S国軍 特別会議室にて 「オイカワを殺せ」 ミツオは入軍試験のはじめにいきなり言われた。 「オイカワは二重スパイだ。奴はタカイド国の手先だ」 突然の告白にミツオの頭はついていけなかった。 どういうことなんだ。 自分が一番信頼する人が一番の悪だなんて信じられない。 「これも通過儀礼のひとつだよ。やつを殺せなければお前は一流の軍人にはなれない!」 指を刺されてどなられた。 「で、でも、」 「でもじゃないんだ!これは司令だ!」 「分かりました」 そう言ってミツオは軍から暗殺用の

新5話 母なるぬくもり

S国 某喫茶店にて その喫茶店はパブのような空気を漂わせつつも、カフェのような上品さを持った店だった。 そこに座る二人の男。 ゴウ・ミツオとオイカワ・マサキである。 「なぁ、オイカワ。俺っていつまで生きると思う?」 コーヒーカップをスプーンでかき混ぜながら、ミツオの質問にオイカワは答えた。 「そんなことは分からないよ」 そう言って、ポーカーフェイスのままコーヒーをゴクリ。 すると、オイカワは顔を真っ青に染めて、突如苦しみ始めた。 「ぐぅうう……お前、何を入れたぁ!!