消えた「ヨッピー」……「されど愛しき人生」についての小さい出来事。
最初に耳にしたのは、ドラマのエンディングテーマで、だった。
秘境駅といわれる場所に、主人公の女性が毎回訪れる、という番組だった。これまでにも、そして、これからもずっと放送されそうな番組にも思えたのだけど、少し前と比べてドローンの映像の使われ方が効果的になったせいで、それほど大がかりな感じではないのだけど、とてもきれいに思えて、気持ちがよかった。
そして、その最後に流れてきたのが、なじみのある声だった。音楽は「スキマスイッチ」。どこか懐かしさもあるメロディーだったのだけど、その楽曲を、妻がとても気に入って、何度も聞いて、歌詞も書き留めていた。
その曲は、「されど愛しき人生」。スキマスイッチにとって、最新アルバムに収録されているのを知った。
されど愛しき人生
本当は購入すべきだから、申し訳ないのだけど、図書館で予約して、3ヶ月待って届いた、というメールが来た。
借りてきて、家で音楽をかけたら、妻が再び、メモをとっていた。
すると、番組のエンディングの時は、曲自体を短くしていることにも気づき、そのことを教えてくれた。それは、私もすぐにわかった。
テレビで見ている時は気がつかなかったけれど、時間内に収まるように、かなりカットされているところもあった。もしかすると、他の番組でも、同じようなことが随分とあるのかもしれない、と思った。
私は、初めてきちんと歌詞を見たら、そのメロディーとボーカルの声の響きで、「全力少年」のイメージのように考えてしまっていたけれど、その印象とは全く違った曲だった。
いろいろな経験をして、今も生きる辛さを抱えながら毎日を過ごしている「大人」の言葉が並んでいて、当たり前だけど、年月が経っていることを、きちんと分からせてくれる歌だった。
その上で、それでも「されど愛しき人生」というタイトルになっているのが、作り手の意志を感じた。
(この楽曲は、最初に歌詞だけを発表したのを、後になって知り、やはり作り手の自信のようなものがあったのかもしれないと思った)。
消えた「ヨッピー」
何度か「されど愛しき人生」を聞いて、歌詞を確認していた妻が、微妙に複雑な表情をしながら言葉にした。
「ヨッピーが、ない」
私もテレビ番組の時から聞いていて、今回CDでも曲を流して、歌詞カードを見たけれど、「ヨッピー」という文字はどこにもなかった。
妻がテレビ番組を録画して、聴き逃したと思える時は、止めて、戻して、そして書き留めた歌詞を見せてもらった。
そうしたら、曲の盛り上がる部分に「ヨッピー」はあった。
「生きるって、つらいね たいてい
こんな苦しいの ヨッピー」
妻は、語尾に「ピー」をつける場合もあるので、そういうことも含めて、こうした単語を選択しているので、すごいと思っていたらしい。
歌詞カードでは、この部分は、こうだった。
「生きるって辛いね ベイベー
こんな苦しいの? ヘルプミー」
妻は、この違いにショックを受けたらしい。何度も聞いて、落とし所を見つけたのに、こんなに違っていたからだ。
それでも、再生をして聞いて、を続けて、いい曲だという気持ちは高まった、ということだった。
曲への感想
歌詞に、希望や未来を感じさせるものは多いけれど、そうではない言葉を久しぶりに見た。
それでも、嫌な感じがしない、というか、自分がこういうところに追いやられた気持ちになったこともあった。その時のことを、すごく思い出させてくれる。
正直な歌だと思った。
追い詰められた感じはするけれど、それでも、そこに自分が生きている感じがして、それがよかった。
歌を聞いて、いつも励まされるばかりじゃなくていいんだ、と思った。
妻は、そんな感想を持ったという。
偉そうで申し訳ないけれど、私も、スキマスイッチは、長く音楽活動をしていく中で、きちんと成熟してきたように思った。
「ヨッピー」のことがなければ、こんなに歌のことを考えなかったと思うが、私は最初のテレビの時から、CDを借りてきて聞いた時も、「ヨッピー」とは一度も聞こえなかったけれど、それだけボーカルの声に音の豊かさがあるということは、わかった。
そして、私も何度も聞いて、声が、さまざまなニュアンスを表現することができるから、長くプロとして歌って、多くの人に届けられたのだと、改めて思った。
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