「冷たい空気と、暖かい日差しと、選挙とワクチンの週末」。2021.10.30.
電話がかかってきて、受話器をとると、録音されているはずなのに、そこからはみ出すような声で、名乗った党首がいた。すぐに切ってしまったけれど、それは、選挙の週間だと強く感じさせた。
冷たい空気
空気が冷たくて、固い。
午前9時前に家を出たら、また明らかに季節が進んだ気がした。
それでも、道路に出て、太陽があたる場所を歩いていると、急に温度が上がった気がする。
日差しがありがたい。
駅に向かうと、道路は、この何週間でも、人がまばらな感じがする。
病院の前には、すでに二人の人が待っているが、1000円カットの店の前には、今日も人はいない。
踏切りが閉まっていて、開いて、向こう側から、思った以上に人がたくさん歩いてきて、すれ違う。今来た電車から降りてきた人たちのはずだ。
子供の声と、機械の声
電車を待って、電車に乗る。いつものように終点に近くなると人が増えて、終点で降りると、人が多い。その流れの中で、「いち、に」という数字を繰り返す子供の声が聞こえてくる。わりと大きく駅の構内に響いている。
気がついたら、その子どもたちと、同じ改札に並ぶことになり、保護者が誘導していったのだけど、その改札は、子どもたちが手にした切符は使えないのがわかると、保護者が「ごめんなさい」と言いながら、方向を変えて、別の改札の流れに乗っている。
一連の動きはとてもスムーズなのに、すごく気を使っているように見える。
人の流れは太く、みんなが早足なので、動きもスピーディーだった。
改札を出て、次の改札に入るときに、二人前を歩く女性がタッチすると、赤く光って、改札が閉まりそうになり、その女性は後ろを振り返って、わずかに後退し、手を伸ばして、もう一度、タッチすると、正常に戻った。後ろを続く私たちにも、ほとんど時間のロスをさせなかった。
とてもスムーズな動きだった。
改札を抜ける時、人の流れが続くのだけど、何回も「チャージしました」の機械の声が聞こえてくる。私は、少し人の流れからはずれ、一人だけでも、アルコールで除菌する習慣は続けている。
緊急停止
電車が来て、電車に乗る。
走り出して、ほんの数分で、急ブレーキがかかって、車両が前向きに、少し傾くようにしてから、止まる。
「緊急停止します」という機械の声のあとに、人の声で、アナウンスが入る。
早口で、状況を伝える。「踏切で緊急停止ボタンが押されました。現在、安全確認を行なっています」。そのあとに、さらに早口で、「危険ですから線路には絶対に降りないでください」と続ける。
お急ぎのところ、申し訳ありません、で始まり、同じように、状況説明と、最後に、さらに早口で、降りないでください。それが何回も繰り返される。
車内は、静かで、焦る気配もない。
止まった電車の中から、細い道路が見え、駅へ向かう自転車が何台も通る。思ったよりも、幅広い年齢層で、みんなスピードを上げている。
止まったままの電車の窓から、枯れている草花や、青空や、電信柱なども見える。いつもは、ただ通り過ぎていた光景を、ずっと見ていることになる。
毎週見ていたはずなのに、ちょっと新鮮に感じる。
ドアの上の画面では、美容関係のCMが流れていて、覆面保湿、という文字が目に入る。
安全確認
何度も、今止まっている理由はアナウンスされたはずなのだけど、また放送が始まる。
隣の路線の電車の乗務員が、踏切の安全確認をしています、という内容は、これまでの状況より、一歩進んでいるのが分かる。
その同じ言葉が、何度か繰り返されて、でも、止まってから5分はたっている。
微妙に焦りが出てきて、もし、もっと止まっていたら、遅刻してしまうのではないだろうか、と秘かに思っているけれど、また「申し訳ありません」という声が聞こえてくる。
安全確認という言葉も、もう何十回も聞いている。
それから、少し内容が変わる。
隣の路線の乗務員が戻ってきて、最終的な安全確認をしている、になった。
窓の外には小さい川が流れている。日差しで光って、とてもゆっくりと水面が動いているのが、分かる。
まもなく運転を再開します。
そんな言葉が繰り返され、そのうちに再び発車する。
9分遅れで、動き出した。
その時間、車内はとても静かなままで、時々、声が聞こえてくるのは、優先席に座っていた高齢者の夫婦と思われる男性の声だったことがわかり、その男性が、鼻を出してマスクをしていたことにも気がついた。
ドアの上の画面に、今乗っている電車の路線が、今の緊急停止で遅れたことが、すでに表示されているのを見ると、ちょっと不思議な気持ちがする。
選挙とワクチン
電車は、いつもよりも遅れて、目的の駅に到着する。
9分遅れただけで、ダイヤでいうと、2本分遅れる感覚になる。
それだけ、ぎちぎちの予定で走っていることを、少し思い知らされたような気持ちになる。
駅から出たら、日差しが、家を出る頃よりも、明らかに暖かく感じる。
イチョウの並木は、かなり黄色くなってきている。
公共の建物には、期日前投票の看板が立ち、ワクチンの案内板を首にかけたスタッフが立っている。これまでは、若い男性ばかりだったのに、今日は、白髪混じりの中年男性がいた。
明日は、選挙の投票があって、開票まで行われる。
秋の空
午後4時過ぎに用事が終わって、また、朝降りた駅に歩く。
晴れている。
日差しは強めで、寒さは感じない。
空は青く、きれいな秋空で、すじ雲が並んでいる。
会話
電車に乗ると、ここしばらく感じなかったような、直接的な活気があった。
電車が走り出して、少し遠くの男性3人、女性1人が輪になって、明らかに会話が弾んでいて、笑顔も見えて、笑い声も聞こえる。
窓は開いている。
私のそばの男女二人は、仕事でのコンビのようだったが、穏やかに会話を続けている。
少し遠い若い女性のグループも、楽しそうな表情と、声も聞こえてくる。
わりと、あっちでも、こっちからも、話し声が聞こえてくる。
こんな、にぎやかと表現してもいいような車両は、本当に久しぶりだった。
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