「薄曇りの不安」。2021.3.20.
午前9時前。
駅まで歩く。
薄曇りの天候。
いつもと変わらない土曜日
美容院の前では、スタッフがジョウロを使って、丁寧にジグザグな波型に水をまいている。駅前の1000円カットの店に前には、今日は誰も並んでいない。
駅のホームには15人くらいの人がいる。
若いカップルが向かい合って話をしている。女性がマスクをあごにして、笑顔で言葉を投げかけている。
電車が来た。
窓は少し開いている。
座席は全部うまっている。立っている人も、この車両には10人以上はいる。
微妙な気温で、上着に迷う。
真冬と、春の真ん中くらいの、「3月服」があれば、と1年ぶりに思う。
電車の終点で降りて、改札を出て、また入って、アルコール除菌は、今日は私一人だけが使っている。そこから階段を降りようとしたら、登ってくる人の流れが強くて、多くて、ちょっと立ち止まってしまう。
もう、いつもと変わらない土曜日になっている。
電車を乗り換える。
窓は車両の中は全部、きっちりと閉まっている。
走る窓から、桜かどうかは分からないのだけど、ところどころに、明るい色の花が見える。
感染拡大への不安
春の甲子園の高校野球は、何事もなかったように開催されていた。昨年の夏の甲子園の前は、もっと感染者数が少ないのに、中止されているはずだった。
人の移動が増えることで、感染拡大は、しないのだろうか。
緊張感自体もゆるんでいて、それは、2ヶ月も続いていたら、仕方ないのかもしれないけれど、ちょうど花見の季節を前に、「緊急事態宣言を解除します」と首相が語っている映像を見た。それで、まだ緊急事態宣言だったことを思い出す、というような人も少なくないのではないだろうか。
新規感染者数は、十分に減少していないように思えるのだけど、もういいのだろうか。
また感染拡大してもいいのだろうか。
薄曇りの空。
寒いのか、あったかいのか、よく分からない。
そんな中途半端な不安に覆い被さられるような気持ちになるけれど、そんなことを思っている人間はいないのではないか、と思うほど、電車の光景はいつも通りになっていたように思う。
緊急事態宣言解除
「内閣官房」のホームページに「緊急事態宣言」のことは詳しく書かれている。
ここでは、緊急事態宣言を発令する理由もあげられていて、そのうちのいくつかを引用してみる。
全国の新規感染者数は1月中旬以降減少が継続しており、入院者数、重症者数、死亡者数、療養者数も減少傾向が継続していますが、2月中旬以降は減少スピードが鈍化しており、下げ止まる可能性があり再拡大(リバウンド)には注意が必要です。
今後、新規感染者の減少傾向を継続させ、再拡大(リバウンド)を防止し、重症者数、死亡者数を確実に減少させることに加え、今後のワクチン接種に向けて医療機関の負荷を減少させ、変異株探知を的確に行えるようにするためにも、対策を徹底する必要があります。
これまでの感染拡大期の経験や、国内外の様々な研究などの知見(感染経路の分析など)を踏まえ、より効果的・集中的な感染防止策を講じます。
こうしたことのどれもが、まだ実現されていないように見えて、だから、本当は緊急宣言を解除することができないのではないか、と思えてしまう。私が無知なだけかもしれないが、2ヶ月間の緊急事態宣言中に、「効果的・集中的な感染防止策が講じ」られたように感じられない。
ゆるんでいる空気
用事が少しバタバタとしてしまって、時間が早く流れたような気持ちになると、余計に、コロナウイルスのことを、少し忘れそうになり、そのまま午後4時30分頃に、また電車に乗る。
少し混んでいる車内。
もう、マスク以外は、ずっと以前のような車両になっているように思えた。
すでに「ソーシャルディスタンス」という言葉はなくなっているようにしか見えない。
男子2人と女子1人。
たぶん中学生くらいの3人。男子の一人がスマホを使って、走っている窓から、外の電車車両を撮影しているようだった。かなり集中力が高い動きに見える。
車両の向こうの隅から、中年というよりは、初老の男性が険しい顔で歩いてきて、それなりに人が密集している中を、人に軽くぶつかりながら歩いてきて、私も避ける前に肩があたったが、その男性はただ前を見て、無言で去っていっただけだった。
1年以上前は、こういう人は、電車内でよく見かけた記憶がある。
駅に着いて、降りて、ホームからのエスカレーターは、1段空けるようなこともなく、びっしりと人が並び、その隣を薄くあたりながらも、人が登っていく。
もう、空気は十分以上にゆるんでいる。
ここから、また解除するかと思うと、怖い。