コロナ禍で、モノを買うということ
保温ポットが壊れてしまい、毎日使うモノだから、新しく買うことにして、妻と相談して、通販を使うことにした。
コンピューターの画面上で、一緒に写真を見て、買うモノを決めた。
コロナ以降は、どこかへ行って実際にさわって、人が多くいるような場所で買うことは、極力避けなくてはいけない、という言葉が、内面化されてしまっているみたいで、そんな選択をしていた。
さらに、手続きを進めて、宅配便の時刻指定の画面になり、これまでならば、妻と相談して時刻を決めていたのだけど、どこかで「時間指定」は業者の負担になるので、なるべくやめてもらえたら、ありがたいです、みたいなことを読んだ記憶があったので、そこは指定をしないまま、注文を確定した。
注文をしてから、3日後くらい、今日は届きそうだ、という日に、私は朝から出かける用事があったので、妻に、今日ポットが来ると思うので、受け取ることをお願いして、家を出た。コロナ禍では、マスクを送りつけておいて、高額の請求をする詐欺が横行しているのも、どこかで読んでいたので、荷物が届く予定があって、自分がいない時は、宅配便がどこから送られてくるかも、妻に伝えるようになっていた。
その日、私が不在の時に、家にポットが着いていた。
夕方に帰って、すでに箱から出されていたポットを見て、思わず、「あれ、小さいね」と言ったら、妻が、すごく心配そうな顔をして、「小さくないかな」と聞いたので、箱を見て、「3リットルだから大丈夫」と答えたが、それでもまだ納得していないようだった。
そのあと、保温ポットが壊れている間に使っていた電気ポットのお湯を入れたら、一緒の量が入って、「あ、大丈夫なんだ」とやっと妻も安心したみたいだった。
私がいない時に、妻が受け取ってくれて、箱の中から出した時に、『あれ?背が小さい』と思って、しかも、ボディも細かったから、『もしかしたら、間違ったモノが届いて、その時に確認できなかったのかな、どうしよう』と思っていたそうだ。壊れたポットよりも背が低く、同じような背の高さの電気ポットよりも、ボディがはるかに細かったせいだった。
以前のポットは、昔の製品のためか、内側の保温するための容器の外側に太さが必要で、そのために、実際に入るお湯の量のわりには、本体が太くなっていたみたいだった。今回、新しいポットは、たぶん保温技術などが進化したせいで、内側の保温のための容器の外側は薄くなっているから、ボディは細くても、お湯の入る量は変わらないようだった。それが、はっきり分かったのは、実際に今まで使っていたポットと同じ量のお湯が入るのを、この目で確かめてからで、そこでやっと妻も安心したようだった。
思った以上に心配をさせてしまったようなので、今度、注文する時は、高さも「〇〇センチ」とか伝えるようにするから、と、妻にあやまった。実際に見ないで買うことに、まだ慣れていないのかもしれない。
購入したポットは、使い始めると、当たり前だけど、新しいからキレイで快適だった。妻は、シンプルでかわいい。安定感もあるし、アタマをなでたいくらい、中ブタもないので、使いやすい、とまで続けたので、夜中のテレビの通販みたいだったけど、笑顔で言っていたので、買ってよかった。実際に見て買ったわけではないので、使うまでは、微妙に心配だったから、よけいに、そう思った。私にとっては、押す部分が大きくて、一回あたりのお湯の量が増えて楽だったのだけど、そこは、妻にとっては、あまりピンとこないようだった。お湯の量が増える分だけ、押す力が、より必要になっていたから、楽になった感じはしないようだった。そういう誤差も、実際に使い始めて、初めて分かった。
モノが壊れて、不安になって、通販で買う時も微妙な心配があって、それで通販に本当の意味で、、まだ慣れていないことも改めて分かったが、新しいモノの快適さは、やっぱりあって、そこに嬉しさも確かにあったと思う。
ここ1ヶ月くらいで、新しく買ったモノがいくつかあった。
一つは、コンピューター周辺のモノだった。
最近、Zoom を使っての会議みたいなものをするかもしれない、という可能性が出てきて、家が混乱していて、バックで映せる場所がない、とまず思った。それよりも、何しろ、ダウンロードしたり、きちんと使えるかどうかは、圧倒的に不安だった。うちは、今だにADSLを使っているので、回線的に、Zoomを使えない可能性があるのではないか、とも思った。
そうやって、また取り残されていくイメージも浮かんだが、その前に、Zoomを使った「有名人」の話を聞き、マイクとイヤホンがけっこう重要で、コンピューターに付属したものも使えるが、そうなると、お風呂で話しているようなエコーがかかった音声になりがちで、といったことも伝えてくれていた。
テレビでリモート出演をしている人たちを見ていると、ほぼみんなが耳に何かをつけていた。それが、「ヘッドセット」だった。私にとってはマイケル・ジャクソンや、スティーブ・ジョブズみたいな人たちが使う機械で、一生、縁がないと思っていたモノだった。通販のサイトを見たら、軒並み、嘘のように売り切れていた。1万円以上する高いモノは買えないし、その「有名人」がすすめていた3000円台くらいのものは、いつ買えるか分からなかった。1000円台だけが、まだ売っていて、多少、迷って注文した。
通販を使うたびに、宅配便業者への負担を、知らないうちに考えるようになっていたが、これは必要なものだから、とうい言い訳を自分でして、さらに義務感で、準備のために買うものだから、うれしさも、なかった。
同時に、もうひとつ買ったモノがあった。
まだ有線でインターネットを使っているので、長いこと、LANケーブルを利用している。機械とつなぐ部分のツメの片方が折れて、しばらくたったらもう片方も折れてしまった。それから、すぐに抜けてしまうようになり、より扱いに気を使うようになってしまっていたので、「ヘッドセット」を買う機会に、初めて買い換えることにした。300円台だった。「絶対ツメが折れない カバー付き」の文字を見たから、それは、ちょっと楽しみだった。
その2つのモノは、コンビニで受け取るようにして、数日前に引き取ってきた。
一緒の封筒に入っていた。でも、「ヘッドセット」を使うまでの、ダウンロードとか、いろいろな作業を想像すると、ただ、憂うつで、その荷物も開封しないまま、置いたままで、何日かたった。
今日、初めて封筒を開けて、LANケーブルは使った。パッケージに「やわらか×高速」とあり、なんだかありがたかった。今までと同じ2メートル。気がつかないうちに、ブルーを買っていたが、新しくて、きれいだった。ツメが無くなった古いグレーのケーブルをはずし、でも、「念のため」保管することにして、新しいケーブルをつけたら、カチっという音を久々に聞いた。抜ける心配が明らかにないだけで、もう快適な気持ちだった。必要なモノを買っただけで、こんなに気持ちがいいとは思わなかった。
「ヘッドセット」は、見た。
見ただけで、もう憂うつになり、まだパッケージは開けてない。
もう一つ買ったのは、Tシャツだった。
先月、ユニクロが「エヴァンゲリオン」とのコラボTシャツを出して、ホームページで見たら、よくできていて、昔、松本大洋とのコラボTシャツを買って、すごくよかったことを思い出し、欲しくなり、だけど、買うのを迷ったのは、不要不急という言葉の力だった。すぐに必要でないモノを買うのは、よくないのではないか、と夜中に迷って、でも、翌朝に、妻とも相談して、注文した。時間指定はしなかった。
届いたら、そのダンボールが、すでに「エヴァンゲリオンっぽく」て楽しかった。
2着も買ってしまい、いつもなら大事に「よそいき」に着るのだけど、今は家にいる機会が多いので、さっそく着たら、妻にも評判がよく、買ってよかった、と思った。
でも、不要不急という言葉は、気持ちのどこかにあり、微妙な後ろめたさは、まだ残っている。
ただ、すごくシンプルに、新しいモノを手に入れたうれしさの程度でいえば、たぶん、ここ1ヶ月の中でも、一番、高かった。気持ちが、ちょっと柔らかくなるくらいだった。
コロナ禍で、買い物への意識は変わってしまったと思うし、これから先、アフターコロナの時代になっても、微妙だけど、決定的に変化してしまう気もする。実際に商品を手に取りながら、対面で丁寧に説明してくれること。人によって好みはあるが、距離感の近いフレンドリーな接客。そうした今まで当たり前だった光景が、もう二度と見られなくなってしまうのかもしれない。勝手な想像だけど、ちょっと寂しくもなった。
(これは今回の記事以前の話です↓。保温ポットが壊れてしまう話です)。
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