テレビについて(73)「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」がとてもかっこよかった。
人殺しは違法な上に古代から禁止されている最大の悪ではある。
だけど、人殺しはドラマなどのフィクションでずっと描かれている。
そして、この「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」も、若い女性(最初見た時は高校生だった)二人組が腕のいい「殺し屋」という設定で、そのアクションも含めて、とても新鮮だった。
それは、やや古い例えで申し訳ないのだけど、プロレス界に、登場した時のUWF(今で言えば総合格闘技)に似ていた。派手さは少ないけれど、本当に痛そうで、強そうな感じで、「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」も、おそらく関節技のようなアクションを取り入れているのだと思った。
そして、その殺し方もあっさりとしていて、それは北野武映画のようで、歴史的なものを取り入れて新しくしているように思えた。
見たかった映像
この「ベイビーわるきゅーれ」のことをどこで知ったのか忘れてしまったが、何しろすごい、という評判をどこかで聞いて、だけど、経済的な事情を含めて地上波だけしか見られないうちの映像環境では、なかなか見られないのもわかった。
自分の中で伝説的な存在のようになっていて、諦めていた頃、自分にとっては、急にテレ東の深夜でドラマとして放送されることを知った。さらには、新作の映画が公開されることもあり、同時に、映画の第一作まで放送されるようだった。
うれしかった。
見たかった映像が、その気持ちを忘れる前に、見られる機会ができたのはありがたかった。
若い時、唯一、世界のサッカーを放送してくれている時から、思いを知ってくれていると錯覚するようなテレ東だから、とも勝手に思えた。
若い女性2人が仲が良さそうで、普段の生活はややだるい感じもあって、だけど、今を生きている感じもあり、だけど、仕事としての「殺し」の場面になると、完全に信頼しあっているプロフェッショナルになる。
映画は、最後に期待以上のアクションシーンもあって、普段は、戦うことの多い映像を目にしない妻も、一緒に見てくれた。
それだけ映像にひきつけるものがあったのだと思う。
監督と脚本が、阪元裕吾氏。1996年生まれ。まだ20代。才能がある人は、早く出てくるのだと改めて思った。
小学生くらいで、アイフォンが登場し、Twitterが始まり、YouTubeのサービスが開始されている世代。坂元監督がそれらにどのくらい影響を受けたのかは知らなかったが、こうした映像環境のもとで、優れた映画監督はまだたくさん登場するのかもしれない。
(※ここからドラマの内容について触れます。もし、未見で、今後視聴する予定のある方は、ご注意ください)。
「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」
ドラマは「エブリデイ」とタイトルにある通り、毎日の生活だけではなく、殺し屋の日常的な時間もあった。組織の中に生きているから、非合法な仕事を続けられているのだろうけれど、その組織の指令に従わなくてはいけなくて、そこに耐えられなくなった人間が暴走し、それを始末するような話で、一つの盛り上がりがあった。
そこまでの流れも、会社の組織のようで、かなりだるいこともあったが、そのあとは、まるでブラック企業の内勤に異動させられたりと、見ていて辛い場面も多く、途中で一緒に見てきた妻は10話で離脱してしまった。
それも無理はなかった。
でも、1人で見るのも、と思っていて、録画したけれど、ハードディスクの中にしばらく保管だけをしていた。
だから、最後の11話、と12話は、放送終了して、しばらく経ってから視聴することになった。
特に、11話はすごかった
第11話は、乱暴にまとめてしまえば、これまで耐え難いような、いじめにも近い扱いを受けていた主人公が、その環境があまりにも歪んでいることに、もう耐えられなくなりそうなとき、もう1人の主人公と、力と運命を共にして動き出し、その目的を達成するストーリーだった。
その標的は許しがたい方法をとっている営業部で、最初に、最も手強い相手を、2人で力を合わせて仕留める。
その際、主人公1人は、左目付近を負傷し、流血する。
その後、営業部を襲撃するときの姿が際立っていた。
赤と白のジャージ。負傷した左目のばんそう膏。その位置、その血の滲み具合。顔への血の垂れ方。その拳銃を構えた全身の立ち姿が、とても美しかった。
そのあと、全滅をさせたあと、どうするかも含めて、見事な展開だった。
そして12話。最終話。
平穏な日常へ戻る。といっても殺し屋の日々だけど、でも、彼女らにとっては、自分たちにとって、殺してもいい、殺すべき相手を殺す、といった「真っ当」な日々に戻る。
--未来の話をするのが怖かった。来年のことを考えると、生きているのかな、と思ってしまう。でも、まひろとは、そういう話をしたい--。
そんな会話が2人のあいだでされるのだけど、とても深い絶望の中で、その瞬間、瞬間しか生きている時間がなくて、でも、同じ境遇の相手と、その信頼によって、かろうじて希望を持てる、というストーリーだと思えた。
最後まで、全体の画面の色味もシックでかっこよかった。
すごいドラマだった。最後まで見ないと、と思って、途中離脱の妻にもなんとかすすめて、一緒に鑑賞した。
見てよかったと言ってくれた。よかった。
影響
このドラマを見て以来、街の中や美術館などで、2人の若い女性が仲が良さそうに、だけど、同じ系統のファッションではないのに気配が似ていて、カッコよく見える場合、心の中で「わるきゅーれだ」と思うようになった。
そんなことを考えられている相手には申し訳ないのだけど、そんな視点を獲得すると、そういう二人組は、思った以上に存在していることに気がついた。
その姿は、なんとなくだけど、未来を明るく感じさせてくれる。
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