「風流」を見つけてもらった話。
テーブルに見かけない盛り付けをしてある、小さなガラスの器が2つ並んでいた。
明らかに氷がいくつかあって、その下に、緑色の粉のような、葉っぱのようなものが散らせてある。
氷出し茶
妻は、いろいろな料理を工夫してくれるから、様々な盛り付けを見てきたけれど、でも、これはかなり異質なものだったので、「何なのか」を聞いた。
「これ、この前いただいたお茶の包紙に書いてあったんだけど。
いいお茶だから、できると思うんだけど、お茶っぱを入れて、その上に氷を置いて、氷が小さくなったら、それを飲むとおいしい、っていうから、試してみようと思って」。
それは、わたしは初めて知ったのだけど、「氷出し茶」ということらしかった。
いい香りのお茶
そのお茶は、いつも食卓にあるスーパーで買ってくるお茶とは違って、やはり、袋を開けた時から香りが違って、そして、飲むたびに爽やかな抜けのいい香りと、明るい味がして、たしかにおいしいと思っていた。
ある人にいただいたお茶で、その気遣いがありがたく、だからもらってから、おいしいうちに飲もうと思って、大事にとっておくというよりは、その時に飲んでいたお茶がなくなったら、すぐに開けて、飲み始めた。そして、香りがよかったり、味が優れていることは、やっぱり豊かなことなのかもしれないと思ったりもした。
飲み続けて、それは、当たり前だけど、減っていって、もうすぐ飲み終わってしまい、またいつものお茶に戻っていく生活になるのだけど、それは、また日常に戻ることだった。それまでも豊かだったけど、いつも自分が買える範囲のお茶も、やはり食事の時に必要なもので、また同じように、身の丈にあった豊かさの中で過ごせるのだろうな、とはイメージしていた。それでも、もうすぐそのお茶が飲み終わる時に、その文章を、妻が見つけてくれて、実行してくれるのは、ありがたかった。
食卓に、妻が作ってくれた料理が並ぶ。
二人で、話をしながら、テレビを見ながら、おいしく食べられるのは楽しかった。
いつも、工夫して料理を用意してくれるのは、ありがたく、うれしい。
そして、その時の、お茶は、そのおいしいお茶葉を入れて、飲んだ。
よく、おいしいお茶ほど、少しさまして飲んだほうがいい、といったようなことを言われて、そのための、きゅうすに入れる前に、お湯を少しさますための容器まであるのだけど、それは、どこか貧乏舌のせいなのか、私は、いまだになるべく熱いお湯を、そのまま、きゅうすに入れて、熱いお茶を飲むのが、好きだった。
だから、たまに手に入る、いいお茶でも、そうやって飲んでいたし、普段のお茶でも、そうして飲んでいた。
などと書くと、頑固なジジイみたいだけど、この部分ではそうかもしれなかった。
お茶の湧き水
食事をして、もう飲もうよ、という話になりかけたが、まだ20分くらいしかたってなかった。だから、妻が用意してくれたヨーグルトに凍ったブルーベリーと、バニラアイスをいれて、それも時間がたって、溶けていたけれど、甘さがちょうどよくなって、美味しく食べていたら、目安の30分くらいがたっていた。
氷は小さくなっていた。小さいガラスの器を持って、すするように、氷で出したお茶を飲んだ。
ちょっと甘かった。
冷たくても、柔らかい印象で、そして、香りまであった。
狭い考えかもしれないが、お茶は熱いか、それとも冷たいか。
その、振り切ったどちらもが、おいしいのかもしれないと、氷出し茶は、初めてなのに、そんなことを思った。
妻は、素直に、おいしいと嬉しそうだった。
お茶の湧き水みたい。
そんな感想だった。
それだけで、すごく時間が豊かになった。
妻に見つけてもらわなければ、この時間はなかった。
おいしいお茶を楽しむ秘訣
いただいたお茶の包む紙には、「鹿児島 知覧茶 山本山」とあり、その裏には「おいしいお茶を楽しむ秘訣」とあり、英語では、Secret to the Perfect Cupとあった。
そこにはいろいろな情報が載っている。
思った以上に知らないことが多い。すべての文章に英訳がついている。
[三煎目までの楽しみ方]
一煎目、
湯冷まししたお湯でじっくりと時間をかけて淹れて、お茶の旨みである「テアニン」を多く侵出させます。
二煎目、
一煎目より既に開いてしまっている茶葉の成分をバランス良く抽出するために、少し湯冷まししたお湯で一煎目より短い時間で淹れます。
三煎目、
ポットから直接お湯を入れて、短い抽出時間でさっぱりとした味を楽しみます。
それから、今回の「氷出し茶」の項目は「山本山の豆知識」の最後にあった。
旨みを引き出す「氷出し煎茶」の作り方 Iced Sencha Summer Shot
お茶を氷で出すことで、旨みであるテアニンを最大限に引き出すことができます。小皿に茶さじ1杯の茶葉を入れ、その上に3㎝角程度の大きめの氷を乗せます。そのまま30分置き、氷が1/4くらいの大きさになれば飲みごろです。小皿を傾け、旨みの詰まったお茶をお召し上がりください。夏場に相応しい風流な淹れ方です。
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読書感想 「食べたくなる本」 三浦哲哉 『「食」への健全な距離感』。