読書感想 『その働き方、あと何年できますか?』 木暮太一 「生き方まで、問われる本」
この著者の本は何冊か読んでいた。
自分の理解の範囲内で言えば、少し色合いの違うビジネス書、というイメージだった。
それは、読んだ時に、根拠のない元気ややる気が出てくるけれど、次の日には、その内容ではなく、その気持ちだけが残り、だから、何かの時に、また同じ著書の違う本を読みたくなる。そういうよくあるパターンではなく、もう少し違う感触があったせいだ。
それが、どういうことなのかが気になっていたのだけど、今回、この本を読んで、その理由が分かった気がした。
『その働き方、あと何年できますか?』 木暮太一
こうした「働き方」について書かれた本は、大体、現場について分析し、それでうまくいかなくなった(主に日本)理由を述べ、その上で、これから個人としてどうしていけばいいか?そんな流れで構成されていることが多い。
この本でも、その章立てを並べると、その基本に則っているのが分かる。
ただ、これまでの類似書と違っているのは、オーソドックスに見せかけて、かなりラジカル(根本的)にも思えるような指摘や分析や提案があるからだった。
表紙や、タイトルや、章立てや、文章の気配からは、最初はそこまで感じられなかったものの、読み進めていくと、「働き方」にとどまらず、「生き方」まで考えざるを得なかった。
生産性を上げること
例えば、第1章で「生産性」について、こうした言及がある。
「生産性」という言葉を聞いて、反射的に思ってしまうのは、日本の生産性の低さと、その理由と、どうすれば上がるか?といった流れが待っていると気持ちが構えてしまうのだけど、この著書では、そこへの疑問を、まず指摘している。
そうした指摘から、「自己生産性」を上げるための具体的な要素の話に進むのだけど、そこから、さらに、あちこちに潜んで、気がつきにくい「先入観」。もっと言えば「洗脳」に近い状況にあることの指摘にも進んでいくところで、一般的なビジネス書とは、かなり違うことに気がつかされる。
「仕事の常識」への疑念
第4章では、諸外国と比べ、「熱意あふれる社員」が目に見えて低いことの理由に対しての「仮説」が並べられていた。
それは、きちんとした数字としての根拠はないのかもしれないが、長年、企業に勤めてきた著者の経験も含めて、意外だけど、言われてみると説得力がある「仮説」だった。
その一つとして、日本人の中には、好きを仕事にすることが、許せない感覚があって、その上で、「汗水たらして働くことが善」という価値観が残っていると指摘している。
ここまではっきりと述べられると、抵抗感がある人も多そうだけど、薄々気がついていたことを、具体的な言葉にしてもらえると、知らないうちに、本当はそれほどの根拠もなく、縛られていた価値観を見直すこともできる、と思う。
知らないうちに選ばされている「やりたいこと」
そうした無意識のうちに、信じていた感覚が、実は、知らないうちに選ばされている=マジシャンズセレクトなのではないか、という著者の指摘の中で、恥ずかしながら、個人的には「はっ」と音がするくらいの思いになったのは「年収1000万円」のことだった。
とても個人的な経験なのだが、ある会社に入社したときに、その業界の中では給料が低い方だった。その上で、社内で言われていた目標が、「40歳で年収1000万円」だった。それは、今から考えたら、高給かもしれないが、実際に実現したかどうかは、1年半で退社してしまったので、分からない。
ただ、問題は、かなり昔から、「年収1000万円」は実現可能な目標として、掲げられていたのを覚えていることだ。
それを、「誰か」個人が考えて、広めた、ということをあまり考えすぎると、「陰謀論」のようなものに引き寄せられるようで危険な部分はあるにしても、少しでも冷静に考えると、「誰か」もしくは「ある人たち」の意志が働いていると思えるほど、「年収1000万円」は目標になっていて、それは、確かに、会社員だけが働き方だと信じこまされていることと、結びついているように思える。(最近で言えば「人生100年時代」という言葉も何かしらの意図は感じる)。
本当に望んでいるもの
そして、著者は、この「誰か」を糾弾するのではなく、もしくは、その「誰か」の正体に言及するのではなく、その上で、「どう働くか」だけではなく、「どう生きるか?」といったテーマに迫っていく。
その「本当に望んでいるもの」を、著者は「フロンティア・ニーズ」と名づける。
ここから、さらに、その「新しい道」をどう歩むか?といった話に進んでいき、その上で「自己生産性を上げる方法」にも迫っていくのだけど、かなり有効に思われる方法もあげられているので、興味を持った方には、ぜひ全体を読んでほしいと思う。
読み終わる頃には、自分自身の、これまでと、これからのことについて、おそらくは考えざるを得ない思いになっているはずだ。
おすすめしたい人
すべての、日本国内で働いている人に、読んでもらいたいと思っています。
特に、今、こういう働き方でいいのだろうか?と感じている人には、必読の書籍ではないでしょうか。
さらには、これから働こうとしている人にも、前もって知っておいた方がいいような内容だと思います。
(こちら↓は、電子書籍版です)。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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