子どもが中学をやめた。それを認めた③(全3話)
どう生きたいのか、は教えられない。
どう生きたいのか、
ということは教えられないんだ。
どう生きるのかではなく、
「どう生きたいのか」だ。
僕はそのことを
娘から学んでいる。
中学を行くのをやめた娘。
高校受験のシーズンを迎えた。
その頃、韓流ドラマや
アイドルにハマった彼女を
韓国に行かせてあげた。
韓流にハマったのは、
僕の母の影響だ。
韓流友だちでもある、
おばあちゃんを従えて、
はじめて韓国に行った。
受験シーズンに
海外旅行をしている中学生は
なかなかファンキーだと思う。
この間にも、周りはとかく
色々言う。
その人たちの普通が基準だからだ。
こっちはその子自身が基準なんだ。
僕は、
彼女の心が向いている方に
向かわせてあげたかった。
公立高校は、
行くところがなかった。
高校にも
あまり行きたがっていない娘だったが、
「韓国語を話せる」
ということを活かしてあげたかったんだ。
スマホばかり触っている間、
韓国語を話せるようになっていた。
妻が、国際交流に力を入れている韓国系の学校を
知人に紹介してもらい、
そこを娘に勧めた。
学校見学をした時、
語学力によってクラスが分かれるため、
簡単なテストがあったようだ。
僕にはよくわからなかったが、
彼女の韓国語は独学の割に、
なかなか高いレベルのようだった。
その後、
この学校に入学し、
ある時、韓国の留学生を
ホームステイで
受け入れる機会があった。
その時にはじめて
見たのだけれど、
韓国語で通訳する娘には
驚いた。
入学式の時、国歌斉唱が、
君が代ではないことには
なんとも違和感があったが、
この学校は、いい意味で、
日本の学校とはどうも印象が違う。
なんというか、
学校の雰囲気がアットホームなんだ。
そして、
生徒たちも
実に健全で明るく礼儀正しい。
先生とも距離が近い。
娘も友達もできたようで、
楽しそうだった。
慣れない電車通学でも
なんとか学校に通っていた。
他の子と同じじゃなくてもいい、
ただ彼女らしくいられることが
何よりだけど、
それでも、他の子たちと同じように、
高校に通うことになったのは、
親としてもひとまず、
やれやれという感じで、
正直安心していた。
ところが、、、
今度は高校に行かなくなる。
決して学校が悪いわけじゃない。
クラスメイトが悪いわけじゃない。
何も問題はない。
何も問題はないんだ。
ただ、彼女は心の声に
従っているだけなんだ。
何かが悪いとかじゃないんだ。
これわかるかな?
「学校に行かない」ということに、
理解を示している僕だけど、
世間ではネガティブな印象が
圧倒的で、
悪いことだと迫られる。
そもそも彼女にとって
それは問題じゃないんだ。
だから、
周りはとにかく心配したり、
怒ったり、励ましたりする。
学校からも
毎日電話がかかってくる。
(これは当然だけど)
「しばらく行かないそうです」
「はーい、オッケーです」
とはならないんだ。
学校からの連絡は
全て僕が受けるようにしている。
本人は平気だけど、
周りに心配をかけているから、
そろそろ判断
しなければならなくなった。
・
・
・
彼女は、
保育所に通っている頃、
2月生まれで、
月齢が低いこともあってか、
みんなの後ろにいる子だった。
自分の好きなことには
活発だったけど、
みんなが彼女を誘い、
それについていく子だった。
リーダーシップや
友達同士のいざこざにも無関心で、
マイペースだけど、
特に自己主張しない彼女は
どこかふんわりしていて、
いつも友達に誘われる子だった。
「僕は嫌だ」と主張し始めたのは、
小学校高学年のある時からだった。
女子にはよくあることだと思うけど、
仲良くしている子が
グループから除け者にされて、
板挟みになった。
その時、
それまで誘われるがままに
いた彼女は、
「あー、めんどくセー」
とばかりに、
誘いを断った。
そこからだ。
彼女はいじめられたわけではない。
これは嫌だ、ということを
主張したんだ。
心の声が
いつしか聴こえなくなってしまうのは、
この「嫌だ」という声を育てないからだと思う。
我慢は美徳と教えられて育ったら、
この「嫌だ」が育つ前に、
どう生きるのかを迫られてしまう。
嫌だという声を聴いていないから、
本当は嫌でもどう生きるかを
考えなければいけなくなると思うんだ。
嫌だ、があるから、
その次に「どう生きたいか」
を探し始めることができる。
彼女は今、
どう生きたいかに夢中だ。
追伸:
人はいろいろ言う。
心配しているからこそという
「善意」を強要してくる。
もちろん悪気はない。
世の中の不協和音に「僕は嫌だ」と言う
彼女は、
どう生きたいのか、の方を向いている。
好きな所に行き、
好きな人と会い、
好きなことをする、
そのためには
韓国語を覚えたように
必要なことをするんだ。
これをできる人が
これを見つけている人が
どれだけ周りにいるだろうか。
僕は彼女から学んでいるんだ。
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