マガジンのカバー画像

蒔倉の短編小説

10
私が書いた短編小説を集めたマガジンとなっております。 字数はだいたい1500字〜3000字くらいです。お題にそって書いた作品も含まれます。
運営しているクリエイター

#前を向いて

居場所。(後編)【短編小説】

居場所。(後編)【短編小説】

今回の小説は上記の短編小説『居場所。』の後編となっております。

=====

 朧月が照らす夜。夜行バスの道中、休憩時間のパーキングエリア。微かな街灯の明かりの下、虚ろな目をしてベンチに座るケンに1人の男性が近づいてきた。男性はケンの様子を伺うように声をかける。

 「あの、大丈夫ですか?バスで酔っちゃいました?」
 ケンの顔を少し覗き込むように軽く腰を落とした。
 「いえ、大丈夫です。少し考え

もっとみる
居場所。(前編)【短編小説】

居場所。(前編)【短編小説】

今回の小説は上記の短編小説『変わらないもの。』の続編となっております。

=====

 片付いた部屋、パソコンに向かいキーを叩く音。ケンは来週のプレゼンに向けて資料をまとめていた。一区切りつき、わきへ置いていたコーヒーカップへ手を伸ばす。
 「もうこんな時間か。」暮れてきた窓を見てぽつりと呟いた。ミサキを失ってからというもの、一人の時間が増えた。以前よりは前を向いて楽しめる事も増えたが、それでも

もっとみる
変わらないもの。【短編小説】

変わらないもの。【短編小説】

今回も青ブラ文学部さんのお題【春めく(活用形も可)】とシロクマ文芸部さんのお題【閏年】を合わせて短編小説を書いてみました。

三羽さんの『イチオシ』企画にも参加させていただきました。 #itioshi

✄-------------------‐✄

 閏年の2月29日、その閏日がミサキの命日だ。
 たったの4年に1度しか訪れない大切な命日。

 ケンとミサキの出会いも春だった。あの頃は季節が巡る

もっとみる