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〇〇と僕『ま』~町と僕~

僕が生まれ育ったのは、北海道虻田郡倶知安町。
高校卒業までの18年間を暮らし、たくさんの思い出がつまった大好きな町だ。
家族、親戚は今も暮らしているため、毎年とはいかないが、可能な限り帰っている。
そしてその度に、やっぱりいい町だと思う。


子どもの頃は、ダサい田舎を飛び出して早く都会に行きたいと思っていた。
しかし、故郷とは比にならないスピードで物事が行き過ぎる都会で長く暮らしてきた今、帰ることの出来る田舎があって本当に良かったと思う。
逃げる場所があったからこそ逃げずに生きてこれたのではないか、なんて最近つくづく感じる。


さて、そんな倶知安町。
僕が町を出た少し後くらいから、スキー場周辺を中心に大規模なリゾート開発が行われるようになった。
世界最高の雪質と称されるニセコ連峰の雪を求めて外国人観光客が増え、移住者も増えた。
そして、彼らに向けた店、施設がとてつもない勢いで建設された。
影響は徐々にスキー場周辺から町の方にも下りてきて、今では駅周辺にも外国人向けの店が増えた。
開発は今も着々と続き、帰る度に景色が変わっている。

スーパーや町の人が集う小さな飲み屋街にも、地元の人ではない、悪い意味で浮き足立った人達が増えた。
雪との付き合い方を知らない人が、酔って調子にのった結果死んでしまうなんて事故も起きるようになった。
僕が生まれる遥か前から長い時間をかけて築かれた穏やかな空気は、たった数年で、莫大な資本によって破壊されてしまった。

昨年の年末に一度帰った時も、品のない建物は着々と増えていた。
「こんなところにホテルなんて作って、お客さんくるのかねぇ?」
助手席から父に聞くと、
「ホテルを作るための作業員が泊まるホテルだそうだ。」
と、ため息をついていた。


古い民家のそばの林が切り開かれ、奇抜で温度のないコテージが建てられる。
おばあちゃんのお気に入りだった窓からは羊蹄山が見えなくなり、昨日まで『倶知安』の読み方すら知らなかった人たちが「静かでいーねー」と練り歩き、田舎の静けさを壊す。


果たして町とは誰のものか。


ずっとずっと長い間、そこで暮らしている人のものか?
そこで生まれた人のものか?
土地に値段が付いている以上、お金でそれを買った人のものか?
その時その瞬間そこに存在している人のものか?
税金をたくさん納めている人のものか?

それぞれの言い分があり、それぞれの正義があるだろうから、おそらく万人が納得するかたちで決着がつくことは無いだろう。
しかし、生まれ育った町が莫大な資本の所有物になるのは耐えられない。
最近は、キャンプブームの陰でゴミ問題や迷惑行為が問題になっているが、その被害を被っている周辺住民の方々はおそらく僕と同じ気持ちだろう。

問題の根本まで掘り下げて考えれば、資本主義の仕組みがどうこうみたいな話になりかねないし、そんなことは僕1人ではどうすることも出来ない。
だからといって何もせずに黙っていてはどうにもならない。

ってな訳で、まずは今暮らす町を愛することから始めようと思う。
そして故郷を改めて愛そうと思う。
そうして気付いた町の魅力を、再確認した町の魅力を、人に伝えようと思う。
それを受け取ってくれて誰かが、暮らす町、故郷に目を向けてくれたら、さらにはそれが連鎖していけば、少しずつ何かが変わっていくような気がしている。

そしていつの日か、全員が生まれた町、暮らす町を愛する気持ちを持ったなら、町は誰のものか?なんて疑問は生まれないと思うのだ。

なんつって。


『くるり / 街』を聞きながら
FJALLRAVEN by 3NITY TOKYO 池守



『〇〇と僕』←過去の記事はこちらからお読みいただけます!是非!

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