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〇〇と僕『と』~泊村と僕~

北海道の西部、積丹半島の付け根に位置する人口約1500人の小さな村、泊村。
そしてその村で、僕の父ちゃんは生まれ育った。

JRの最寄り駅は小沢駅。
そこから村までは、なななんと、車で30分以上かかる。
車がない場合は、バスを数本乗り継がなければたどり着けない。

嗚呼、辺ぴ。
嗚呼、なんと辺ぴ。

役場の前に細い道があり、そこには『泊村市街入口』という看板があるのだが、どこまで進んでも市街が見当たらない。
「泊村市街はまだ?」
と父ちゃんに聞いたところ、
「もう終わったよ。」
と返ってきた時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。

じいちゃんも、父ちゃんの兄弟もみんな泊村で暮らしており、月に1度は必ず遊びに行った。
じいちゃんの家の裏の坂道を下るとすぐに海がある。
そこを僕は『じいちゃんの海』と呼び、遊びに行く度にいとこ達と泳ぎ回った。

村のほとんどの人が知り合い。
「どこの子だ?」
と聞かれ父ちゃんの名前を言うと、大抵みんな小さい頃の僕を抱っこしたことがあると言った。
みんな家の鍵は開けっ放し。
勝手に入って、勝手におすそ分けを冷蔵庫に入れ、そして帰っていく。
正月はご近所さんにも新年の挨拶に行き、ご近所さんからもお年玉をもらう。

嗚呼、辺ぴ。
嗚呼、なんと辺ぴ。

しかし、そこが良い所。
ゆったりとした時間が流れていて、なにもないのに豊かなのだ。

第2のふるさと、泊村。
もう2年も帰っていない。
墓参りもしたいし、叔父や叔母にも会いたい。
捕れたてのウニも食べたい。
叔母が作る磯のりも食べたいし、中村水産の鮭とばも食べたい。
叔父が釣ったカレイも食べたいし、ワンツーのデカ盛りチャーハンも食べたい。
でも、なによりも、僕はじいちゃんの海が見たいのだ。


『空気公団 / 夕暮れ電車に飛び乗れ』を聞きながら
FJALLRAVEN by 3NITY TOKYO 池守


『〇〇と僕』←過去の記事はこちらからお読みいただけます!是非!


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