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記事一覧
ルールを知らないオーナメント #毎週ショートショートnote
クリスマスが近づく頃、弟は言った。
「今日学校でルールを知らないオーナメントを作るなって言われた」
弟の話では、クラスでクリスマスオーナメントを作ることになり、パパの車のオーナメントを真似して作ったらクラスメイトにバカにされたらしい。「パパの車、かっこいいのにね」
クリスマスイブの夜、ママはいつものように派手な服で仕事へ行き、パパは友達の車に乗り込み出掛けていった。ボクは弟と二人、卵かけご飯の
台にアニバーサリー #毎週ショートショートnote
駅前商店街振興組合の理事長である俺は、地域を盛り上げる策に悩んでいた。
そして考えついたアイディアが、昨年我が駅前で襲われ非業の死を遂げた政治家・伊武の知名度を利用する事だった。
俺は、手近なビールケースに「伊武先生遭難の演説台」という銘板を取りつけ、駅前に設置し記念碑を立てた。しばらくすると、そこそこ見物人がやってくるようになった。
見物人の中には演説台がニセ物だと怒り、騒ぐ者もいた。そ
白骨化スマホ #毎週ショートショートnote
匿名メールにより指示された場所を警察が掘り返すと、それは見つかった。白骨化した人体。その手にはスマホが握りしめられていた。
やがてスマホの中から遺書めいた一文が発見された。
「これが世に出るなら、我がスマホは白骨化スマホとはならなかったのだろう。もとより金属とプラスチックの塊が白骨化する訳もないが。果たして私は美しく白骨化できたのであろうか」この文章が公開されると、世間に衝撃を与える事となった
木の実このまま税理士 #毎週ショートショートnote
税理士である俺の事務所には、顧客から数多くのレターパックが送られてくる。中身は領収書、保険の証明書など様々だ。
今日もレターパックの一つを開くと、何かがこぼれ落ちた。見ると団栗が3つ。封筒には見覚えのある文字が踊っていた。スマホを取り出し電話をかける。
「今忙しいのよ!」声が響いた。
「ご挨拶だな。木の実をこのまま税理士に送りつけてくるのには何か意味があるのか」
「あるわよ。メールを見て!」電
強すぎる数え歌 #毎週ショートショートnote
父がこの世を去った。晩年の父は、一日机に向かっていた。
父の机には、ノートパソコンが一台。パスワードが書かれた紙が貼ってあり、簡単に開くことができた。悪いと思いつつSNSなど覗いていると、いつのまにか母が隣にいた。nの文字のデザインされたアイコンを開くと、投稿サイトらしきものが立ち上がり、父もいろいろ投稿していたようだ。「下書き」を開くと書きかけの一文があった。
「一番初めはTwitter
二
戦国時代の自動操縦 #毎週ショートショートnote
午前7時の○HKテレビ。アナウンサーが、この日の特集コーナーの紹介をはじめた。「特集は『戦国時代の自動操縦』。各自動車メーカーでは、AI搭載の自動操縦車を相次いで発売、覇権を競っています…」
お昼の○BSテレビ。この日の特集コーナーがスタート。「特集は『戦国時代の自動操縦』。各自動車メーカーでは、AI搭載の自動操縦車を相次いで発売、覇権を競っています…」
翌日の朝刊。社会面の特集記事は「戦国時
ごはん杖 #毎週ショートショートnote
「新作のアイディアなんだが、構想中のがあるんだ」漫画原作者の千田は、編集者の西野に向かい、身振りを交えて話しはじめた。
「最近は座頭市のような作品が無いじゃないか。そこで考えたんだよ。仕込杖を使う主人公をね」
西野は待ってましたとばかりに手を打って応えた。「さすがセンセ、目のつけどころが違います!それでその主人公はどのように敵を倒すんですか?」
千田は答える。「いやいや、倒さないんだよ。仕込杖
親切な暗殺 #毎週ショートショートnote
「殿、お覚悟を」と重臣の瀬古庄造は迫った。「逃げ道はござらぬ」そう迫られた耳鼻藩主の柏田文三はうめくように呟いた。
「儂の何がいけなかった…」
「殿の「聴く力」とやらが世間には勝手な言い草に聞こえたのでござろう」
「庄造よ、美桜はいかがしておる」
「美桜様でしたら、手前が安全な場所にお連れいたした。いや、側室の身を案じている場合ではありませんぞ!」
すぐさま庄造の刀が一閃、柏田の元結が切り落とさ
忍者ラブレター #毎週ショートショートnote
「世界は今危機に瀕している!」「我等にも出来る事があるはず!」
伊賀の里に忍者の末裔が集合した。いや、彼等は今も現役だ。人々が気づかぬ内にその術で様々な問題を解決してきた。
「我等の術は和平をもたらす為の技。それを世界に示すのだ」そしてある計画が提案された。これに日本中の忍者が賛同の声をあげた。
やがて世界中で不思議なニュースが報じられるようになった。
「ロシア大統領夫人の自室テーブルに、ウクラ
スベり高等学校 #毎週ショートショートnote
「スベり止めにもならん。スベり高等学校じゃないか!」入試の結果をみて、父さんは冷たく言い放った。
…スベり高等学校か。登校初日の朝、僕は憂鬱な気分で教室にいた。すると始業のベルと同時に一人の教師が入ってきた。
「担任の中村や。スベり知らずの人生なんかオモロない。これから先生と一緒にオチを探しに行こう!」
関西弁だし、オチとかいうし、なんだこの先生は?
次の日も、先生は熱く語りかけてきた。
秋の空時計 #毎週ショートショートnote
空気の冷たさに夏の終わりを感じ、私は街へと出かけた。杖を頼りにゆっくりと歩く。
目抜き通りを裏手に入ると、見知らぬ古風な店が現れた。「秋の空時計店」。店名に惹かれ足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ」長い髪の女が現れた。
ショーケースに一つだけ、時計が展示されている。コバルトブルーの文字盤にシルバーの時針。美しい腕時計だ。「お客様、こちらは秋の空時計と申します。きっとお気に召しますよ」そうい
呪いの臭み #毎週ショートショートnote
警視庁の刑事、花賀は一度嗅いだ匂いを忘れない。様々な匂いを嗅ぎ分け、事件を解決してきた。
ある日の巡回中、花賀は気になる匂いを感じ、相棒の水川に伝えた。
「呪いの臭み、ですか…」
「そうだ。強烈な恨みによる呪いの臭みだ。だから周辺を徹底して聴き込みする」
一棟の古びたアパート。順に各部屋をノックしていくと、一つの部屋でドアが開き、中年女が顔を出した。
「この辺りで空き巣が多発していまして…」水