呪いの臭み #毎週ショートショートnote
警視庁の刑事、花賀は一度嗅いだ匂いを忘れない。様々な匂いを嗅ぎ分け、事件を解決してきた。
ある日の巡回中、花賀は気になる匂いを感じ、相棒の水川に伝えた。
「呪いの臭み、ですか…」
「そうだ。強烈な恨みによる呪いの臭みだ。だから周辺を徹底して聴き込みする」
一棟の古びたアパート。順に各部屋をノックしていくと、一つの部屋でドアが開き、中年女が顔を出した。
「この辺りで空き巣が多発していまして…」水川がそういうと、女はご注意ありがとうございますとだけ答えドアを閉めようとする。「もう少し話をうかがえませんか。それにしてもいい匂いがしますね。スパイスカレーですか?」
花賀は水川の肩越しに部屋の様子を伺った。キッチンに大きな寸胴鍋が見えたが、女は何かつぶやくとドアを閉めてしまった。
ドアを閉めると、女は深く息を吐いた。どうやら匂いで誤魔化すことができたらしいが、早めに処分する必要がありそうだ。女は煮え立つ寸胴鍋をじっと見つめた。
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