混じり合う、しあわせのかたち。
南伊豆に来てから、今日でちょうど1ヶ月。
早朝のランニングで見つけた霜も、このまちでは何年ぶりかと言われた雪も、思い返すと遠い過去のよう。
今では少しずつ桜の蕾がふくらみ、ダウンコートも不要になった。
このまちにも春が訪れている。
春。
入学式に、入社式。
はじまりの季節なんて言われる春だけど、まさにその通りで。
季節の変わり目に吹き始める、南風の気配を感じたとき、
目には見えない新しい何かに、そっと期待をしている自分がいる。
***
実は、そんな私も今日から新しいことを始めた。
南伊豆町の中心部。下賀茂商店街に位置するカフェ「531 Coffee&Bake」にて、お手伝いをさせてもらうことに。
コーヒーと焼き菓子、サンドイッチなどの軽食を楽しめるこの場所は、
元々お客さんとして通っていた、だいすきな店。
朝のコーヒー時間にも、小腹がすいたおやつの時間にも、
オーナーのトモさんに会いに、何度でも訪れたくなる。
私と同じ気持ちなのだろうか。
どういう理由かは詳しく聞けていないけれど、このお店には、異なるバックグランドのお客さんが、足を運ぶ。
たとえば、町役場の職員さん。高校生の男の子。
常連のお母さんに、観光の方。
ご夫婦でおしゃべりに来られる方もいれば、仕事の合間にコーヒーを頼みに来る人もいる。本を読む人がいれば、愛犬の散歩で訪れる人も。
ここに集う理由は、どうやらみんなさまざまだ。
目の前には、桜の木が連なる遊歩道。
コーヒーの良い香りに、広々としたテラス席。
この場所があることによって、普段過ごしていたら、関わることのなかっただろう人たちが混じり合う。そして時に、会話が生まれる。
私はにとって、こんなふうに人々が混じり合う光景を眺めていることが、たまらなくしあわせだ。
そこには、「こうすべきだ」とか、「正義と悪」みたいな世界観じゃなくて、「みんな違ってみんないい」。
そんなメッセージが込められているように思うから。
本が読みたい人は本を読んだらいい。
仕事をしている人がいるかたわら、ぼーっとたそがれる人がいていい。
このまちにいるのは残り1ヶ月少し。
またたく間に過ぎて行くのだろうと想像しているが、
カウンターから眺めることができるしあわせなな光景を噛み締めたい。