【読書メモ #2】イノベーションは万能ではない
毎週図書館に通うようになって思ったのは、若い人が全然いない。子ども用図書館の子供達と、新聞を読みに来る老人しかいない。
ネットで検索が簡単にできる時代になって、スポットで部分的に情報を理解するにはとても良い時代になった。一方、体系的に考える、感心領域の外に触れるためには、労力を割いて足を動かす必要があるのではと思う。
イノベーションは「技術革新」でなく、「新結合」とすると、こういった足を動かす試みが何かに繋がると良いなと思う。
第二回は「イノベーションは万能ではない」です。
(著者:西村吉雄 日経BP)
感想
アメリカのBigTechみたいにイノベーションが起こらないから、日本はダメなんだ。イノベーションを起こすためにはベンチャー企業をたくさん作らないと行けないといった論調が多々あるが、本書ではイノベーションはそんなに万能ではないと説いている。
経済成長は農業従事者の供給によって制約されるというのが個人的にもっとも印象的だった。大まかに理解すると、国内での農業から別産業への移転で今までの先進国は成長を遂げた。そしていまは国家間でそれが分担されている。農業従事者が無限にいるわけではないので、イノベーション・ICT活用が進んだからといって成長するわけではないのである。
そもそもイノベーションとは、という文脈では下記の記載がある。
そしてイノベーションを起こすにはただ「新結合」したものがあるだけでなく、「新結合の遂行」が必要なのだ。
イノベーションというと、古くは蒸気機関車の発明で、最近だとiPhoneだろうか。iPhoneはスマートフォンとしての携帯電話・インターネットの機能だけでなく、Apple製品群内での同期や機能連携を以て、新結合の遂行たらしめているということなのかと思いなおす。
単純に、社内で新ツール導入しました!で成果にならないのと一緒で、ビジネスモデルに組み込む、基幹業務化するまでして成果とするなど身近なこととしても考えられるかもしれない。
そこまで考えると、イノベーションってふんわりと考えていた万能薬ではないかなと思い始める。もちろん本書内ではデータを用いて、論理的に説明しており、以下は私の勝手な思考になる。
イノベーションって、もしかしてもう陳腐化しているのではと。かつては優れたツールであったロジカルシンキングは、広く知れ渡り多様な人に訓練が行われた結果、陳腐化していると述べている著名人がいる。(その人たちの論調ではだから直感やアートセンスが大事だと説かれることが多い)
イノベーションの概念、つまり「新結合の遂行」も実はロジカルシンキング同様に、特別な概念・競争力の源泉になりにくくなっているのではなんて思ってしまう。
でも、日本にイノベーションが起きてないのも事実である、というのはどうか。この場合のイノベーションは技術革新の意味合いだとすると、技術革新が起きてないことはないんじゃないかなと思う。(ToC向けは確かに少ないと思う)
ジェルボール洗剤の膜がクラレが作ったと知った時は少しびっくりした。(調べたらクラレ傘下の海外子会社だったので純粋な国内ではなかった。)
NTTのIOWNのようなインフラを構想できるのも日本企業かつ国営に近い企業だからできることかなと思う。
「新結合の遂行」といった意味だと、旧財閥系の連携や、大企業グループ、日本の根回し文化、株式持ち合い(いまは解消傾向だが)などは、土台としてはかなり優れてるんじゃないかと思う。一方で縦割り文化がそれを阻害しているという見方もあると思う。日常の業務の中でビジネスモデルや、基幹業務への組み込みを描いている人はたくさんいると思うが、縦割りで実現できないのが体感として思えるところだろうか。
あっち行ったりこっち行ったりしてしまったが、イノベーションは万能ではないのは賛成できる書籍だった。そして思考する中で、日本は新結合を考えやすい土台があるのに、強力な縦割り文化で遂行ができないという課題があるのかなと思った。
まあ何もないより、新結合を考える方がチャンスは多いので、今後も足を伸ばして広く経験を積む機会を増やしていこうと思う。
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