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YouTube「小説は説明じゃない。自分で気付いていない。気付こう!」
YouTube「百年経っても読まれる小説の書き方」
この動画の台本を公開。
247、誰も言わない小説創作論⑥ あなたの書いているものは小説ではない!
私がこんなに言っているのにやらないというのは、やりたくないからか、できないからか?
私は自分で気付いてないからだと思う。
説明をしてあげた方が親切? そういう次元の話はしていない。
小説は芸術。
「白線の内側でお待ちください」
これがみんなの書いていること。
何故分からないのか分からない。
例文は本人にさえ分からない様に変えてあります。
例文その一、
僕とミサキとは家が隣同士だった。僕にも彼女にもきょうだいがいないから、僕達はいつも一緒に遊んでいた。
僕達が育ったのは銀座通りの裏、地味な商店と華やかなバーが並ぶ、特異な地域だった。ミサキは僕が道を行くホステスさん達をじろじろ見るのを止めろと言った。中学に入って、僕達は急に大人になってしまったのだ。
私だったらどう書くか。
ミサキとはあんなにきょうだいみたいに育ったのに、最近あっちの様子が可笑しい。僕に近付かない様にしている。中学に入って僕は急に背が高くなった。いつも繋いでいた手も、僕等の間をただぶらぶら揺れるだけ。
ミサキのなにが変わったかというと、香りが変わった。香水の匂いじゃないんだな。シャンプーとも違う。きっと女子独特な匂いなんだ。
部活が終わって学校から帰る時、ミサキが遠くに見えた。僕は走って驚かせようとミサキの背中をどついた。ミサキはきゃあ、と叫んで、僕を睨みつけた。暗い銀座通りに一気に街灯が点いた。綺麗だな、と僕は思った。
僕達が育ったのは銀座通りの裏、地味な商店と華やかなバーが並ぶ、特異な地域だった。僕は道を行く、所謂、夜の蝶々さん達をじろじろ見た。この人達って幾ら位稼いでいるのかな? 銀座の一等地のホステスさんはやっぱり綺麗だ。本物の蝶々みたいに着ているものも模様が沢山入ってカラフルだ。僕にも微笑んでくれて、僕の頬がピンク色になる。
ミサキに一発頭を叩かれる。
「あんた、なにしてんのよ!」
中学に入って、僕達は急に大人になってしまったのだ。
例文その二、
昨日の夜、僕は彼女の家に行った。
この辺りは静かな住宅街だ。コンビニでさえなかなか見付からない様な。
彼女の家へ行くのは複雑で、何度もカーナビを見なければならなかった。そしてそこは意外にも大型マンションだった。なんとなく古風な家を想像していた。
プロの作家さん。この口調で固まっているから、改善するのは非常に難しい筈。
私だったらどう書くか。
夕べ、いつもの妖怪に手を引かれて、僕は外に出た。その妖怪は巨大な骸骨で、僕の五倍くらい背が高い。でも骨粗鬆症だから早く歩けないし、歩くとぎしぎし奇妙な音がする。
暗い道を骸骨と歩く。とうとう彼女の家に行く日になったんだ。コンビニも無い様な漆黒の住宅街。と思ったらいきなり真っ白い照明のコンビニがあって、骸骨の妖怪は、目玉も無い筈の目をばちばちさせる。
彼女の家に行くのは複雑で、僕は度々立ち止まって携帯を覗かなくてはいけなくて、その度に骸骨が僕の背中にぶつかって、また骨粗鬆症のぎしぎしが聞こえる。
ここだな、間違いない。意外にも大型マンションだった。セキュリティー完備の家賃が高そうな。僕と妖怪はエレベーターホールに入って、彼女の部屋番号を押した。なんとなく彼女の家は古風な一軒家だと思っていた。だって両親とお兄さんと弟さんが一緒に住んでいるって言うから。大きな骸骨は頭を天井にぶつけない様に体育座りをして待っている。骸骨はエレベーターが開くと、這って乗って行った。きっと妖怪は彼女の弟さんに気に入られて、一緒に遊んで貰うだろう。
例文その三、
僕の家の屋根は雨が降るととてもうるさかった。
お兄ちゃんと傘を差して行ったコンビニ。雨なのに本当に楽しかった。
雨粒は大きくて、お兄ちゃんと僕は弾き飛ばされて、夢だって知っているけど、雨の降る空中で幸せだった。
猫のチャミーは雨が降るといつも飛び起きて、階段をばたばた降りて行く。それだけ家の屋根の雨音はうるさかった。
私だったらどう書くか。
プールから帰ってすっかり疲れちゃったから、プールの塩素の匂いのままでベッドに入った。……とんでもない雨の音で飛び起きたけど、なんで家の屋根っていつもこうなの? 今度、登ってみて、他の家の屋根と何処が違うのか考えよう。
お兄ちゃんがコンビニに行こうと誘っている。コンビニに行くとお兄ちゃんがなにか買ってくれるから、僕は速攻でシャワーを浴びて着替えた。
でもこんな雨じゃあシャワーを浴びた甲斐も無い。僕の足元が泥だらけ。お兄ちゃんはどんどん先を行く。
これが夢だって知ってるけど、それがなに? もういない筈のお兄ちゃんの背中……。ポケットに手を入れたら、意外にも五百円玉が一つ入っていた。お兄ちゃんが好きだった砂糖無しの缶コーヒーを買う。僕にはまだこのコーヒーは苦過ぎる。店員さんは新人で、僕は美人の認定をする。
(猫のことを書くのを忘れた)
作者は小説と説明の違いが分からない。少しずつよくなっている。滑らかな語り口調。
どうしてこう書くのか分からない。
ストーリーに関係無いことは書かない。登場人物の名前も必要が出て来たら初めて書く。せこいテクニック。五感を生かす。表現ってなに? 読者に見える様に書く。当たり前のことは書かない。普通の人のことを書くと面白くするのが大変。
この話の深いところ。
夏目漱石『こころ』
新潮文庫、p.9
私わたくしがその掛茶屋で先生を見た時は、先生がちょうど着物を脱いでこれから海へ入ろうとするところであった。私はその時反対に濡ぬれた身体からだを風に吹かして水から上がって来た。
説明調で始まる。と、いきなりテーマを語る爆弾。コントラスト。やっぱり漱石は天才だった。
千本松由季YouTube「百年経っても読まれる小説の書き方」
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小説の書き方 183、詩を手っ取り早くでっち上げる方法。詩の書き方。