新しい発注方式 ECI(Early contractor involvement)方式 「施工者が設計者に技術提案する」
Written by 病院建築note(医療機器出身のゼネコン社員)
「公共事業の品質確保の促進に関する法律」が2014年に改訂され、DB(デザインビルド)方式明記されました。
同じく記載された発注方式にECI(Early contractor involvement)があります。
近年公共事業や病院建築においても増えている発注方式です。
2022年11月に名古屋に開業した「ジブリパーク」はECI方式で発注されました。このような建築工事にECI方式を適用した日本初の事例です。
(発注者は愛知県)
■ECI方式とは何か
ECI方式は「設計」と「施工」分離の発注方式に当たります。
ただ、この方式では設計の初期段階から施工するゼネコンと「技術協力委託業務契約」を結びます。
施工契約は実施設計完了後になるため「技術協力者」という形でゼネコンがプロジェクトに参画します。
ゼネコンは施工する立場から、特殊工法などの技術力やノウハウを設計段階から提案して仕様を明確にします。
上記の「ジブリパーク」では、アトラクション建築の質感や素材感などが非常に難しいので、設計事務所だけで最適な仕様を確定させるのは困難です。
(設計は日建設計とスタジオジブリ)
このためECI方式に適用により、施工するゼネコンから「技術提案」を受けてより「リアルな」設計を実現しました。
■ECI方式のメリット
■建築コストの削減と工期の短縮
ECI方式は施工者の技術力やノウハウを設計に活かすことができます。また設計と並行して施工計画を考えるので、建築コストの削減や工期短縮が図れることが大きなメリットです。
■施工まで考えた「リアルな」設計ができる
施工方法だけでなく、資材や重機の調達に関することまでゼネコンがの技術提案をします。このような提案が設計に反映されれば、より現実的で機能性が優れた解体、仮設、施工計画を作ることができます。
■ECI方式のデメリット
■競争原理が働きにくい
施工の見積りを行うのは実質「技術協力委託業務契約」を結んだゼネコンが一社のみになります。
厳密には次点の施工者の変更もできますが、初期から技術提案してきた1社が施工を前提に実施設計まで完了している状態です。
ここから施工者を変更するには相当の時間を要します。また合意できるとも限らないので現実的ではありません。
つまり競争原理が働かないので、価格を下げることは難しいと思われます。
ECI方式は「技術協力委託業務契約選定」→「施工契約選定」の2段階の発注方式に見えますが、施工を前提に技術提案委託業務を結んだ時点で現実的には確定しているようなものです。
■発注者に高い調整能力が求められる
冒頭に記載した通りECI方式は「設計」と「施工」が分離した発注方式であり、ゼネコンはあくまで「技術協力者」としての立場で提案をおこないます。
設計事務所は拘りや意匠性を保持するため、ゼネコンからの技術提案を拒む可能性もあります。
またゼネコンは工事費をできるだけ圧縮して利益率を上げようと、大幅なスペックダウンを伴うコスト削減提案をしてくる可能性もあります。
逆にゼネコンが設計に口出しせず、単にVE(Value engineering)提案に留まる消極的な場合もあります。
そのため、発注者は提案の取捨選択する必要があるので高度な調整能力が必要です。
ただ、発注者に建築の知識がある人材がいない場合も多いためマネジメントをCM(Construction management)会社に委託する場合も少なくありません。
以上今回はECI方式について書かせて頂きました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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hospital architecture note
mail:07jp1080@gmail.com
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