一流のリーダーに共通することは、素直さとしなやかさ〜1,000名のエグゼクティブ・コーチングを担当した桜庭理奈が考える一流のリーダーの特徴〜
こんにちは。コーチングを通し、次世代リーダー育成を支援している35 CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)CEOの桜庭です。
これまで私は、1,000名のエグゼクティブ・コーチングを担当してきました。その中で変化が激しい社会の中でも第一線で活躍している一流のビジネスリーダーの特徴も変化していると感じています。
本記事では、昔と今のビジネスリーダーの違いや1,000名を超えるエグゼクティブのコーチングを重ねる中で見えてきた現代の一流のビジネスリーダーの共通項をご紹介します。さらに、一流を目指すビジネスパーソンが明日から実践できることもご提案します。
10年前のリーダー像と現代の一流リーダーの違い
まず前提として、理想のリーダー像は時代や世の中の潮流によって変わります。
10年前のリーダーは、自分が言ったことを、トップ自らがちゃんとやる(“Say Do Ratio”)の割合が高いリーダーが周りから尊敬され、かっこいいとされていました。
しかし、昔と今では、社会の変化のスピードが全く違います。一度、戦略として発表したけれど、方向転換しないといけない場面が多々訪れます。そうした時に発言を撤回して、途中で戦略を変更しないといけません。したがって、現代の一流リーダーは、自分自身の発言に制限されず、その瞬間の最善策をとる必要があります。“Say Do Ratio”にこだわっているとあっという間に変化の波に乗れず置いていかれてしまうのです。
また、昔のリーダーは、わかりやすく自分の手柄を周りにアピールすることで昇進し、名誉を与えられることで注目や尊敬の眼差しを集めていました。けれど、昇進や名誉に興味がない若者など多様な価値観を持ったメンバーが一緒に働く今の時代は、それではメンバーはついてきません。目標の達成や成功を自分の手柄(“ME”)ではなく、チームメンバーみんなで成し遂げた(“US”)ことにするリーダーが認められ、信頼されているように思います。
桜庭理奈が考える一流リーダーの4つの特徴
これまで私が一流のリーダーたちと対話を重ねる中で見えてきた共通の特徴は、次の4つです。
1.自分が全ての答えを持っていて、絶対的に正しいと思っていない
現代において、正解はひとつだけではありません。やってみないとわからないことばかりです。そのため、自らの判断が結果的には、誤った結果をまねく時もあります。その際、過ちに気がつき、素直に謝まり、そして、早急に軌道修正を試みています。自分の間違いや非を素直に認める姿を見せることで、信頼を失うどころか、メンバーにとっては心理的安全性を感じられる職場の雰囲気を作り出すことに繋がります。
2.抜け感や余白がある
リーダーといえど、少しおっちょこちょいで忘れっぽい、仕事だけではなくプライベートで没頭できるものがある、困った時に躊躇わずにメンバーに頼ってくれるなど、そんな完璧ではないところが人間らしさ、かわいらしさに感じられて、周りから愛されることに繋がります。
また、仕事以外で自らを楽しませ、リラックスさせるセルフケアができています。自分のケアができるからこそ、他人の変化に気がつき、ケアしてあげることができます。プライベートも楽しむ余白があるリーダーをみて、メンバーも仕事とプライベートのメリハリをつけることに抵抗がなくなり、ストレス管理ができるようになります。
3.自分の言葉で伝えることができる
経営者や役員メンバーから指示された内容や、方向性をそのままメンバーに伝えたりするメッセンジャー的な役割やコミュニケーションの仕方はしません。例えば、組織変更が経営判断として下された時には、自分自身がまずその決定事項について納得がいくように情報収集を行い、必要な対話を上長や役員とも行い、咀嚼した上で自分の言葉で伝えることができます。そしてもし自分の中でまだ腹落ちしていない点や、不透明でまだ明言できないことについては、その理由や後日フォローアップすることも含めて、メンバーへ公言し約束します。
4.好奇心が強い
様々な年代や国籍、思想のメンバーがいて、考えが多様化していることをおもしろがり、自分の知らない世界を知ろうとします。決して、メンバーをマイクロマネジメントしようとはしませんが、細部までメンバーの考えや行動を知ろうとします。
一流のリーダーたちも昔は、部下に嫌われ、カッコ悪かった
実は、私がコーチングを担当した一流のリーダーたちも昔は、狭い範囲の中で自分が正解を持っている、自分が正しいと思い込んでいる、いわゆる、お山の大将だったのです。
しかし、ある時、チームメンバーが誰もついてこない、ボイコットされた、メンバーが次々に離職するなど、大変ショッキングなことが起こり、これまでのやり方では通用しないと感じる場面に遭遇したのです。そして、そのことをきっかけに自らの在り方を変えざるをえなかった。
そして、彼らが変わることができたきっかけも共通していて、まさしくこの自らの在り方を変えないとならないタイミングで自分から、または会社から勧められ、コーチングを実践している人が多いのです。自分の大きな課題に対して、他者に介入してもらうことで自分の在り様の変容を体験し、自分一人ではできることは限られているという思いや、他者に頼ることの意義を感じている方が非常に多いです。
挫折がリーダーを成長させる
現代の一流リーダーのように昔はイケてなかったところから変化できる人もいれば、そうでない人もいます。なぜでしょうか?
そもそも、リーダーに選ばれるような人材は、優秀です。成功体験も多く、自分に自信があります。そのため、年を重ねるにつれ、“自分は正しい”という思いが強くなります。典型的な特徴は、傾聴力が弱く、他人の声を聞く耳を持ちません。何より、自分は正しくないかもしれないという本音を解放することに抵抗があり、拒否してしまうのです。
人生の中で何度か大きな壁にぶつかることは、ものすごい挫折に感じますが、実はとても大切です。自分の考えはいつも正しいわけではない、自分だけでは何かを達成するには限界がある、と認知する機会を与えてくれるのです。
実は、挫折がないひとほど、自分の思考に凝り固まり、変化ができず、結果として、メンバーが離れていってしまいます。
一流のリーダーになるために今からできる3つのこと
これまで一流のリーダーの特徴をご紹介してきました。一流のリーダーも昔はイケてなかった過去があります。だからこそ、普段から自らの思考を柔軟にすることで一流のリーダーに近づくことができます。
ぜひ明日から次の3つのことを意識してみてください。
1.わからないことを知ったかぶらない
知ったかぶりは、癖になります。周りも「知らないなんて恥ずかしい」という評価を自分に向けてくることがあるので、どうしても知ったかぶりをしたくなってしまいます。
しかし、素直に「わからない」ことを認めることが重要です。また、自分だけでなく、チーム全体が「わからない」と言いやすい環境をつくることもリーダーには必要です。「わからない」は、成長への扉を開く魔法の言葉だと覚えておきましょう。
2.正解は一つではないということを覚えていく
どうしても役職につくと、自分が正解を持っていると勘違いします。役職がつくと得られることは、正解を探す対話が増えることです。
“正解は一つではない”ということを肝に銘じ、自分だけで正解を探すことはせず、チームを参画させ、その時の最善の正解を見つけていきましょう。
3.自分の目の前の仕事について、背景や意図を2つ上の階層から考える
ただ、目の前の仕事をただこなすだけでは、一流のリーダーへの道は遠いです。自分たちの組織の仕事の背景や意図を自分の2つ上の階層から語れるようになりましょう。
そして、メンバーに対してもただ業務内容を伝えるのではなく、業務が発生する文脈も語り、自分もメンバーも納得して目の前の仕事に向き合うことが大切です。
現代の一流リーダーたちの特徴から見えてきたこと
現代の一流のリーダーたちは、素直さとしなやかさを持ち合わせています。心の中に、自分は正しくないかもしれないという謙虚な気持ちを常に持っています。
時には、メンバーに仕事を任せることで、結果が出るまでに時間がかかるかもしれませんが、その間、我慢して耐えているわけでは決してありません。自分がコントロールできないことは手放し、メンバーを信頼しようという心持ちでいるのです。
また、現代の一流リーダーたちのモチベーションは、昇進や名誉だけではありません。人の成長なのです。自らの成長がメンバーの成長を促したり、逆にメンバーの成長によって、自分の成長を感じたり。人同士の関わり合いによる、相乗効果を心から喜びに感じているのです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。私が考える現代の一流リーダーの特徴について、みなさん、どのような感想をお持ちになったでしょうか?少しでもご興味を持っていただけた部分があれば、嬉しいです。
今後も私のコーチングセッションの体験談やコーチングのテクニックをお伝えすることで、みなさんが組織のリーダーとして活躍するための参考になればと思っています。不定期にはなりますが、次回の投稿もぜひお楽しみに。