なぜ日本はいじめが多いのか?──自己肯定感って何だろう
彼氏がDVなのに逃げられない、ホス狂い、恋愛相手に依存してしまう。
会社はブラック企業、上司もブラックなのに、なぜか従ってしまう。
そんな人の特徴は、「自己肯定感が低い」ということにあります。
「自己肯定感」とは何なのでしょうか?
自己肯定感が低いとどんなリスクが起きるのか、書きたいと思います。
自己肯定感には2つある
近年、「自己肯定感」というワードを冠した本がたくさん出ていますし、検索でもものすごい数がヒットします。
ネットによると「自己肯定感」は、「あるがままを受け入れる感覚」とあるのですが、これにピンとくる人は少ないでしょう。
自己肯定感には2つあります。
タイプA:条件付きの自己肯定感
「テストで100点が取れた」「査定で周りの人より良い評価がもらえた」「担任の先生から認められた」
これは、ある条件が満たされると、心の満足ゲージがググッと上がるタイプの自己肯定感です。
人との比較に勝ったことでゲージが上がるのはよくあるのですが、自分よりもできる人が現れたり、失敗をしたりすると、このゲージが下がってしまいます。
ゲージが低くなると、自分に対する肯定感が下がってしまい、「やっぱり自分なんてダメだ」「自分は能力がない」となってしまうのです。つまりタイプAの自己肯定感はとても不安定です。
また、親に「◯◯できたなんてすごいね」と言われることで、条件付きの自己肯定感が助長されます。
タイプB:無条件の自己肯定感
何らかの条件が満たされなくても、ちゃんとある自己肯定感です。
「自分にはいいところも、ダメなところもある。それでも自分は自分のことが大好きだ」
「自分には存在価値があり、愛される価値がある」
「人は完璧じゃないから、どんな自分もまるごとOK」
こう思える感覚です。
条件付きの自己肯定感ではないから、自分よりもできる人がいても、美しい人がいても、自分の存在価値は揺らぎません。
自己肯定感は幼少期に形成されますが、タイプAは人との関わりの中で、タイプBは主に親(とそれに準ずる保護者)によって育まれます。
自己肯定感に「高すぎる」はない
タイプAとタイプBはよく混同されます。
「最近の子どもは、人と比較されてばかりだから自己肯定感が低い」という場合は、タイプAの自己肯定感を指します。「子どもは小学生、中学生、高校生になるにつれて自己肯定感が低くなる」という場合も、タイプAを指します。
タイプBは、もっと理屈ではない、「安心して生きられる」感覚です。
子どもが何か失敗してしまったとき、親がギュッと抱きしめて「大丈夫だよ。失敗しても私はあなたが大好き」と言う場面を想像してください。
そう言われた子どもは、「ああ、自分はここにいていいんだな」「お父さんやお母さんに受け入れられているな」と思うはずです。
子どもは親からの無条件な愛情を受けることで、自分を「愛される価値のある存在」と理解し、健全な自己愛が身体感覚として身につきます。
これがあると、世の中や他人を恐れずに、信じて飛び込んでいけるのです。
これが、タイプBの感覚です。
よく、「自己肯定感が高くても困る」「自己肯定感が高いと自己中心的」という言説があるのですが、これは自己肯定感を理解していない人が言う言葉です。
自己肯定感は、自分の存在価値を信じる感覚。グラスに例えると、自己肯定感が高い人のグラスはとっても立派で大きく、丈夫で、たくさんの水を受け入れることができる状態です。
一方で自己肯定感が低い人は、今にも割れそうな小さいグラスなので、ちょっとの水でいっぱいいっぱい。
割れないように必死で「自分はできる!」「自分を認めてくれ!」と守ろうとするのです。
つまり、自己肯定感が高いことではなく、低いことによって問題が起きているのです。
また、タイプAのゲージが下がっても、タイプBの「安心して生きられる」感覚がある人は、本質的な自己肯定感は損なわれません。
なぜなら、「テストの点が悪くても、そのままの自分が好き」という健全な自己愛があるからです。
若者の自己肯定感は国際的に見ても低い
文部科学省は、日本の子どもの意識調査を行っています。
調査によると、「私は、自分自身に満足している」と答えた若者は以下でした。
なぜ日本人は自己肯定感が低いのか?
よく言われるのは、
①競争社会で、人と比べられる
②自己主張を重視する欧米に比べて、日本集団の協調を大切にする
③中国、韓国、日本は儒教の影響で、未だに家父長制である
①を主張する人は、タイプAの自己肯定感に注目しています。では、競争社会に勝った人は自己肯定感が高く、競争に負けた人は全員、自己肯定感が低いのでしょうか。
競争に勝っても自己肯定感が低い子がいる
私は、受験や勉強で「勝った」学生が集まる学部の出身ですが、競争に勝ち続けてきたような人でも、明らかに自己肯定感が低い人がいました。
それは、タイプBの自己肯定感が低いから。親から自己承認を得られなかったため、「いい成績を取れる自分は価値がある」「いい大学に行けば自分は認められる」と思うようになるんですね。
でも、勝っても常に不安。
一方で、競争や受験のストレスに負けず、飄々としている学生もたくさんいました。彼らはストレス耐性があり、いつも前向き。この差は何なのか?
そして、競争に負けても自己肯定感が揺らがない人はたくさんいます。これまでの人生で、そんなに競争に強くない人にもたくさん会いましたが、いつもニコニコ幸せそう、自分に揺るぎない自信があって、人生にポジティブにチャレンジできる人がたくさんいました。
それは、タイプBの自己肯定感が高いから。
タイプBの自己肯定感が高い子は、競争環境にさらされても、教師にひどい
言葉を投げかけられても、本質的な自己肯定は揺らぎません。自分の尊厳が損なわれたら抗議したり、適切に逃げることができます。
厳しすぎる競争社会や、子どもに加害するような教育はやめるべきだと思いますが、それらを排除したからといって、問題が全部解決するとは思いません。
「競争社会で子どもの自己肯定感が低くなり、潰された」というのは、わかりやすいですが雑駁な議論でしょう。
問題はそう単純ではない。
社会構造にも課題があるし、子どもが抱えている問題にもアプローチしなければなりません。
②は、ツッコミどころがたくさんありますが…。
前述したように、自己肯定感が「高すぎる」ことはないですし、自己肯定感が
高い人は、迷惑になるような自己主張はしません。
自己肯定感があるから他者と協調できないわけではなく、むしろ自己肯定感があるから他者を信じて協力できるのです。
③家父長制は、子どもの自己肯定感そのものよりも親自身に問題を引き起こし、それが子どもとの関係に影を落とします。切り離せない問題ではありますが、子どもというよりも親に影響を与えます(詳しくは次回)。
日本は親が子どもに「大好きだよ」と言わない
それよりも欧米と違うのは、
・欧米は「愛している」「大好きだよ」と親が口に出すが、日本の親は愛情表現に乏しい
(ハグやタッチなど非言語コミュニケーションが苦手な親も多い)
・子どもを褒めない
・ポジティブな声がけをしない
(失敗したら「だから言ったじゃない!」と叱る)
・過度な謙遜の文化がある
(「うちの子はほんとダメで…」と子どもの前で言う)
など、幼少期のコミュニケーションに問題があり、タイプBの自己肯定感が育たないと考えています。これに、日本の社会的な問題が加わって、自尊感情がどんどん下がってしまうのではないでしょうか。
タイプBの自己肯定感が低い子どものなかには、早い段階(小学校入学時点)からいじめ、仲間はずれ、意地悪などの問題行動を起こす子もいます。また、いじめでは自己肯定感が低い子がターゲットにされることも多い。
なぜなら、自分の存在価値を信じられない子どもは、他の子を貶めることで相対的に自分の価値を高めているからです。
その際、自分を信頼できず、自信がない子がターゲットになります。
日本にいじめが多い理由は、子どもの自己肯定感に関係しています。
「親の責任めちゃくちゃ大きいじゃん…」と思った方は、ぜひ次回も読んでみてください!
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