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目標がある人間には羽が生えていて、いつでも飛び立てるんだよ 『京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ』 #368

中島みゆきさんに「あなたの言葉がわからない」という歌があります。

あなたの言葉がなんにもわからない
あなたに心がないのかと間違える
あなたの言葉がなんにもわからない
あなたがこの世にいないかと間違える

オンラインの会議や、テキストでのコミュニケーションが爆発的に増える中、注目されている「コミュニケーション力」。行き違いが生じたからといって、相手に心がないわけではないんですよね。ちょっとドキッとする歌詞です。

「他人の目が〈自分〉をつくる」

そう語るのは、ゴリラ研究家の山極寿一さん。言葉も違う、文化も違う人間たち、そしてゴリラともコミュニケーションをとろうとしたとき、相手の立場で考えてみることで、信頼を得ることができたと語っておられます。トラブルが起きたとしても、相手に心がないわけではない。その信念と観察力が、コミュニケーション達人の道に導いてくれたのかも。

「がんばってね~」とゴリラ研究のために送り出された(山極先生の言葉を借りていうと「捨てられた」)アフリカのコンゴは、非協力的な役人たちが支配する世界。ですが、この地にあることわざは。

「There is no problem. There is a solution.」

どんな問題に直面したとしても、解決策はある。ミッション・インポッシブルな山極先生のチャレンジには、感じるところがたくさんありました。

ゴリラはジャングルに住んでいるため、生息地域に近づくには危険が伴います。実際、山極先生はゴリラにかまれて大けがもされています。そんな中でさまざまに試されるコミュニケーションの方法は、スペクタクルで泥臭く、パワフルであたたかい。

ちょっと話は変わりますが、バッタ研究者の前野 ウルド 浩太郎の著書『バッタを倒しにアフリカへ』に、研究費を支援してもらうため、面接を受けた話が出てきます。

なぜバッタを研究したいのかという話を聞いた面接官は「身を挺してそのような研究をしてくれてありがとう」とお礼を言ってくれたのだとか。その人こそ、山極先生なのです。読んでいて、ちょっとウルッとした場面だったのですが、『京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ』を読んだら、またあらためてジ~ンとしました。こんな経験をしてきたからこそ、ウルドさんの想いを受け止めることができたのだな、と。

山極先生は京都大学の総長にした時、「おもろいことをやろう!」と決めます。現在、京都大学は【オンライン公開講義】“立ち止まって、考える”を配信していますが、この企画を進めているのも山極先生です。哲学、倫理学、環境史、メディア学の講義をタダで聴けるなんて! ホントに「おもろい」ことをやってくれますね。

オリエンテーションの動画もおもしろいですよ。山極先生と人社未来形発信ユニット長・出口先生の対談は12:52くらいから。出口先生と建築家・安藤忠雄さんとの対談は23:52くらいからです。期間限定の公開だそうなので、視聴はお早めに。

山極先生によると、ゴリラやチンパンジーと人間との一番の違いは「目標を持つこと」だそうです。

目標があれば人間は変われる。自分には羽が生えていて、いつでも飛び立てる。

コミュニケーション達人による金言。とても好きです。


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