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映画へGO!「動物界」 ★★★☆☆

(※多少のネタバレあります)
すごく楽しめますが、なんとも奇妙な後味の映画体験でした。。
一方で、このようなオリジナリティのあるエンターテイメントが成立していること自体、いまだに映画というコンテンツフォーマットの多様性は保たれていると安心もできます。

あらすじは以下の通り。※公式サイトより
近未来。人類は原因不明の突然変異によって、徐々に身体が動物と化していくパンデミックに見舞われていた。"新生物"はその凶暴性ゆえに施設で隔離されており、フランソワの妻ラナもそのひとりだった。しかしある日、移送中の事故によって、彼らは野に放たれる。フランソワは16歳の息子エミールとともにラナの行方を必死に探すが、次第にエミールの身体に変化が出始める…。人間と新生物の分断が激化するなかで、親子が下した最後の決断とはーー?

普段は登場人物の誰かに感情移入して映画を鑑賞することが多いのですが、今回においては、人間が動物化していくという事象が起きたら、実際のところ世界はどうなっていくんだろう?と心の中でイメージ・思考しながら、並行して映画の本編を追っている自分がいました。
なんか珍しい。。

もちろん新生物と人類の共存は、簡単ではないわけですし、そこには憎悪を抱きながら排斥・分断をしていく大きな社会的な流れもあり、一方で個人のスケールでいうと、親子として・恋人として・友人として・・、切っても切れない普遍的な愛情も確かに存在しているのだ、という描き方はある意味リアルですし、共感もできました。

そして何より、ラストシーンが切なくも素晴らしいです。
「おー、その選択をするか!」という意外性を感じながら、でも様々な体験や思考を通じて培われた父親としての深遠な愛が、切れ味良く表現されているのでした。
ここで涙腺が一気に崩壊しました。

その先、世界がどうなっていくのかまでは、描かれていません。
鑑賞者としては、映画館を後にしたときに思いを巡らすことは何かと言うと、世界はいろいろな生き物に溢れていて、人間だってその一部。それらがすべてつながって共存していくしかないのであるというある意味当然の事実。
それが監督の狙いなのかな?と思った次第です。

個人的評価:★★★☆☆
メッセージがシンプルでストレートなディズニー映画と違って、世界は複雑であり、そこに正解もなく、最後に残るのは個人の意思や尊厳であるという描き方がフランス映画らしくて好きでした。
フランス人がSFをつくると、こんなにヒューマンドラマになるんですね。

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