映画へGO!「ぼくのお日さま」 ★★★★☆
(※多少のネタバレあります)
ラストシーン。その瞬間に、びっくりするくらい心を鷲掴まれました。
フィギュアスケートのコーチ荒川(池松壮亮)と、その教え子で、ドビュッシー「月の光」に合わせて踊るスケート少女のさくら(中西希亜良)、そして吃音を持ちながら、さくらに憧れてフィギュアを始めることになる少年タクヤ(越山敬達)。
荒川のアイデアと指導で、さくらとタクヤはアイスダンスのペアを組むことになります。
さくらとタクヤのそのぎこちない出会いから始まって、少しづつ呼吸が合うようになり、やがて動きやムードもピッタリと重なり合っていくプロセスの中に、雪国ならではのピュアで光がきらめく背景と、3人のココロのひだを丁寧に描いた瑞々しい胸キュンなシーンが連鎖していきます。
それだけでも十分に美しいですし、楽しめます。
ただ、そのまま自然とストレートなハッピーエンドに流れていくわけではなく、お互いの人間関係の儚さや切なさも紡ぎ出されていくところに、映画としての奥行がありました。
名優池松壮亮が演じているということで、気づけば荒川コーチの目線と心情で映画に入り込んでいき、どことなくモヤモヤが残りながらエンディングを迎える予感があったのですが、ほんとの最後の最後、タクヤがしばしの空白の後にさくらと遭遇するシーンで、「そうだ、この物語の主人公は、タクヤだったじゃないか!」ということに瞬時に引き戻されることになります。
これにはやられました。
何か特別で奇跡的なことが起きたわけでは全くないのですが、なんて劇的なエンディングであり、余韻なのだろう!
タクヤが言葉に詰まりながら、さくらに何かを語ろうとする瞬間に画面は幕を閉じるのですが、そこに不完全燃焼感が残るのではなく、ふたりの表情から感じ取れたのは明らかに何かの希望だったので、むしろそれで十分じゃないか、とほんわか幸せな気持ちになれたのでした。
映画体験としては、不思議な後味。
こんな演出ができるのはただモノじゃないですね。素晴らしい。
奥山大史監督は今まで存じ上げてなかったのですが、この先注目せねばと思った次第です。
個人的評価:★★★★☆
中西希亜良さんも佇まいだけでも凛とした存在感のある素敵な女優さんでした。たぶんまだ若いと思いますが、将来楽しみです。
あと、エンドロールと主題歌もいいですよ。