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『中華蕎麦 ひら井』 / @国分寺駅(JR中央線、西武国分寺線)

僕はメンクイのメンズである。

僕の欲は深い。

だから今日も抱きしめようじゃないか。

女の子ではなく、ラーメンを。

そう、僕は麺喰いの麺ズなのである。

 国分寺のひら井のつけ麺もまた、いい女(ラーメン)であった。

 魚介系を一切使わず、豚・牛・鷄を使用した100%動物系の濃厚スープ。しかし豚骨の味も、牛骨の味も、鶏骨の味もしない。三味が一体となり、今までに食べたことのない味を作り出している。それはヴァイオリン・チェロ・ピアノの三重奏のごとく、完璧な調和が取れた味であった。
 しばし濃厚と謳う多くのラーメン屋が粘度を高くして塩っぱくすれば濃厚だ、という安直な発想をしているように感じる。でもそれは誤訳だと思う。
 ひら井は時間をかけて丁寧に炊くことで旨味を抽出したことで生みだされる"濃厚"である。
 だからドロドロとした濃厚スープなのに飲みやすくて胃に優しい。
 どれだけ食べても太らない気さえする。

 例えるなら水彩画を描く、坂道系オタの人権派の女性弁護士。バラバラの三つの要素が内面に同居し、唯一無二の彼女らしさを確立している。

 アイドルのライブや握手会での喜びも、
 公正な社会の実現に向けた苦悩も、
 それらの想いを描く水彩画も、

 どれも彼女にとって等しく価値をもっている。そんな女の子。

 そんな彼女に、飲みの席で

「あー、最後の焼きたまご食べたでしょ〜!あたし狙ってたのに〜、キミに1年の懲役を求刑しまーす😚」

とか言われたい。(どーん)





■追加の雑記■

 開店して間もなく到着したけど、既に行列だった。
 食券を買ってから並ぶことを途中で知り、列を抜けて券売機に向かった。前に並んでたおっちゃんも僕の様子で気づいたらしく、僕の後ろをついてきて、列の前後が入れ替わってしまった。
 列はおっちゃんが先に並んでいたから、発券後におっちゃんに
「お父さんの方が先に並んでたから前にどうぞ」
って譲ったのをきっかけに、1時間半以上の待ち時間を名も知らぬおっちゃんと話し込んだ。

 互いのラーメン情報の交換からはじまり、ウクライナ情勢などの世間話になり、互いの仕事の話から、おっちゃんの家族や仕事のことを突っ込んで話してくれた。
 58歳で間もなく定年退職らしく、おっちゃんのセカンドライフを一緒に考えたり、子どもの頃に買ったエロ本(当時好きだった娘に似た人が表紙だったらしい)を家族に見つからないように今も大事に隠してる話や、結婚のいい所なんて一つもないぞ!という話で盛り上がった。

 おっちゃんは30年以上勤めてる会社が大嫌いらしく、
僕が「働くの楽しいっすよ」って言ったら、すごい驚いて「滅多なこと言うんじゃねぇ!」って声を荒げてたのも印象的だった。
 また、「俺は放任主義だから、子どもに干渉しないことにしてるだよ」って言いながら、「最近あいつ彼女できたみたいなんだよなぁ」とソワソワしてるのが可愛いかった。

 別れ際に

「まさかこんな所で人と話せると思ってなかった!楽しかったよ、ありがとう」

 って言われて、握手をした。コロナ禍で人と握手するのは初めてだった。

 おっちゃんは力強く僕の手を握ってくれて、気持ちがとても伝わった。

 触れ合うって大切だなぁ、と思った。

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