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球の体積と表面積

 (珍しく「高校数学テクニカル」な話を書こうとしています。こういうものは、世の中にはあふれかえっていますので、わざわざ私が記事を書く必要はないようなものですが、私なりの視点も入っていますので、書いてみることにしました。こういうのは、お好きなかたは徹底的にお好きでありまして、高校の数学の先生とか、あるいはその影響を受けた生徒さんとか、大好きだったりしますが、私は教員としては「失格」でしたので…。これを読んで現役高校生のかたが理解なさるというよりは、「こんなの好きだったねえ」と思い出しながらお読みになる社会人のようなかた向けでしょうか。ただし、今度は、おなじみさんのフォロワーさんが「理解できない」とおっしゃるかもしれませんので痛しかゆしで、どうぞ、ザっとお読みになってちょっとでもおもしろいとお感じになったらスキくださいね(笑)。こんなに努力して書いたのに反応なしは悲しいですから…)

 「球」という言葉は、「球面」($${S^2}$$)(表面だけ)を指しているのか、「球体」($${D^3}$$)(中身がつまっている)を指しているのか、あいまいな言葉です(それを言えば「円」も「円周」を指すのか「円板」を指すのか中学の教科書ではあいまいですが)。それは気にせず、高校で習う「球の体積」と「球の表面積」のおさらいをしてみましょう。

 球の体積は、積分で求めたと思います。xyz座標空間内で、原点を中心とし、半径をrとする球があるとして、これの体積を求めたいと思います。私はnoteで「挿絵」を入れる方法も知りませんし、それからパワポとかできちんとした図も描けないし(ノートに手書きの絵でも入れておいたほうが親切かな?)、それができるくらいなら修士論文をパブリッシュできていると思いますので、そもそも苦手なのですが、どうぞ頭で想像なさってください。これを、x軸に垂直な平面で切りまして、その断面である円の面積を積分するわけです。その半径は、三平方の定理より、$${\sqrt{r^2-x^2}}$$です。したがってその面積は$${\pi (\sqrt{r^2-x^2})^2}$$でして、求める体積は$${\int_{-r}^{r} \pi (\sqrt{r^2-x^2})^2 dx}$$であります。これはルートが外れるので計算がやさしいですね。計算すると$${\frac{4}{3} \pi r^3}$$となります。

 つぎに、球の表面積です。私が学校で習ったのは、球を、原点を通る平面でたくさん切るというやりかたです。すると、たくさんの角錐ができます。そのたくさんの角錐は、原点を頂点として、半径$${r}$$を高さとして、底面積はものすごく小さく、そのたくさんの角錐の底面積を足したものが球の表面積だ、という理屈でした。どれだけ細かくわけても球面は曲がった曲面であり、角錐の底面はまったいらですから、あくまで近似なのですが、そこは高校生だましというか、私もだまされていたと言いますか、しかし直観的には正しそうです。これで、球面の表面積を$${S}$$としまして、角錐の体積は底面積×高さ×$${\frac{1}{3}}$$であることを使いますと(これも積分で導くことができます)、次のようになります。
$${\frac{1}{3} rS=\frac{4}{3}\pi r^3}$$
 ここから$${S=4\pi r^2}$$であると導くことができます。

 以下は、大学院で発達障害の二次障害にやられて、研究者の道を閉ざされ、2006年に中高の教員になってから、同僚から聞いて知ったことです。球の体積の公式を半径で微分したら球の表面積の公式になること。なるほど、中心を同じくする半径が$${r}$$以下のさまざまな球面を考えて、その半径で積分したら球の体積になりますからなあ。つまり、$${(\frac{4}{3}\pi r^3)’=4\pi r^2}$$とやって球の表面積を導く方法です。確かにこれでもいいですね。

 それから、私が高校生のときに自分でやっていた方法があります。いちばん上で、球の体積を求めたときのように、x軸に垂直な平面で球面を切って、その切り口の円周の長さを積分する方法です。いちおう県でいちばんの進学校におりましたが、仲間がけっこう間違えていたのは、これをxで積分してしまうやりかたです。以下にまず「間違い」を書きますね。

 半径は上で書いた通り、$${\sqrt{r^2-x^2}}$$です。ですから円周の長さは$${2\pi \sqrt{r^2-x^2}}$$でありまして、これを$${x}$$で積分すると$${\int_{-r}^{r} 2\pi \sqrt{r^2-x^2}}$$となります。やれやれ!これを計算するのはちょっとだけ苦手ですよ。別に置換積分すればいいだけのやさしい積分ですが、どうも計算は苦手でしてね…。きのう計算してみた結果だけ書きますね。$${\pi^2 r^2}$$になりました。ね。$${4\pi r^2}$$にはならなかったでしょ。それより少しだけ小さくなりましたね(4より$${\pi}$$のほうが少し小さいですからね)。これですと、xが0に近いあたりは正確ですけど、xが-rやrに近いあたりはかなり不正確で、「しましま模様がかなりスカスカ」になっております。それでは正しい面積は出ません。それで、高校時代の私がどうやっていたかを書きますと、曲線に沿って積分するのです。xy平面で、原点中心、半径rの、第1象限と第2象限にまたがる半円を、x軸を回転の軸として1回転させてできる球面を考えますと、その「半円」の曲線に沿って積分するわけです。中心角を$${\theta}$$としますと、$${r\theta}$$で積分するわけです。円の半径は$${r \sin\theta}$$です。したがって円周の長さは$${2\pi r \sin\theta}$$で、これを$${r\theta}$$で積分しますから、
$${\int_{0}^{\pi r} 2\pi r \sin \theta d(r\theta)}$$となるわけです。これはさすがの私でも計算できるやさしい計算ですね。ちゃんと$${4 \pi r^2}$$になります。

 このような、曲がった曲面の面積を求める問題は、高校のテストでも出たことがあります。私の高校は、田舎の進学校で、いまは知りませんが、進度も速くなくて、模試の進度よりも遅いので、模試を受けても意味がありませんでした。その代わり、先生がたが校内の「模試」を作っておられ、それの点数(偏差値でもなく)で進路指導の行われている学校でした。その「校内の模試」で出たのです。また絵を描かずにごまかそうとしていますが、xy平面上の第1象限に、単調増加で下に凸な曲線が定義されています。これを、x軸を回転の軸として1回転して得られる曲面は、あたかもホルンやトランペットの音の出るところ(「アサガオ」と言いますが)みたいな形になります。これの面積を求めなさいという問題が出たのです。これ、正解者は40人クラスで私も含めて3人くらいでしたね。あとの37人はx軸に沿って積分したのです。これも、曲線に沿って積分しないといけませんね。(ちなみにこのときも私は、式は立てられたけれども肝心の計算はできず、正解にはたどりついていません。よほど積分の計算は苦手なのです。帰って父に報告したら父は「そんなのはできたうちに入らない!」と言いましたが、学校の先生はこれを「できたうち」に入れてくれましたけどね。)

 さて、わかったような顔をしながらここまで進めてきましたが、この3番目のやりかたで曲面の面積を求めることは、少なくとも大学入試では出ません。それはなぜかと言うのは理学部数学科へ進んで幾何を専攻して学部4年くらいになって曲面の幾何構造を習うと痛感するのですが、曲率が0でない曲面の面積って、とてもデリケートな問題なのです。高校までで習う曲率が0でない曲面の面積って球の表面積だけだと思うのですが、ほかにはありませんよね?(球面は曲率が正で、さきほどのアサガオは曲率が負です。)このように、高校生の直観でも出せてしまいますし、そのように高校の先生が校内の模試で出したりするくらいですから、出せてしまうのですが、この問題がかなりデリケートであることを知っている大学の先生は、気持ち悪くてとてもこんな問題は出す気にならないでしょう。それを学部4年で痛感しました。だからこういう問題は大学入試では出ません。東大の入試を受けたときのことを思い出しました。本郷キャンパスで、数学の試験の前に、同じ高校から受けに行った友達に、この問題について「おさらい」をたずねられたのです。いま思えば、そんな直前に聞いてもなんにもならないというところですが、とにかく答えました。彼は高校の成績は私より奮うくらいでしたが、すべりましたね。1年浪人して入って来ましたけど。とにかくこれは大学入試では出ないのです。

 だいぶインターネットが発達して、いまやなんでも検索すれば出ます。ここに私が書いたことも、ほとんど出ます。最後にいくつかリンクをはってみますね。ご覧にならなくていいですよ。(最後のやりかたを使った問題は大学入試では決して出ないことを言っているサイトがほかにあるかどうかは知りませんけど。)もう1次元あげて4次元の球の「4次元体積」を求める問題にしても、私は高校2年くらいでは自分で考えて出していました。そのはるかのち、二次障害で研究者の道を断たれ、2006年に教員になって翌年、あるテレビ番組で大学生を相手に数学の問題の出題者として出演したときにこの問題を出したのですが、そのころは(さっきから何回も書いていますが、私は、積分の計算などは苦手なのです)、いくら「4次元の球の体積」と検索しても、一切、出なかったものです(せめて検算がしたくて検索したのですが)。それが、いまやいくらでも出ます。n次元の球の体積を求めているサイトもありましたなあ。これ、1つ低い次元の球の体積を積分するので、漸化式になるのですよね。漸化式をお解きになったようです。では、4次元の球の「表面積」は?これは、まだ書いている人はいないかなあ。4次元より1次元低いので、3次元です。つまり、われわれが普通に「体積」と呼んでいるものになります。表面積じゃなくて「表体積」と呼ばねばならないでしょうね(笑)。これは$${S^3}$$(3次元球面)でありまして、やはり曲率が0ではありません。曲がった空間です。「曲がった空間の体積なんて、どうやって定義するのだ!」ということになりますと、これはもう高校生の「直観数学」では難しいでしょう(計算はできますよ。単純には4次元の球の体積の公式を半径で微分するだけで出るではありませんか)。「難しい」というより「デリケートすぎる」でしょう。いずれにしても東大や京大を振りかざした「高校数学マニア」が嬉々としてインターネットで公開していそうな雰囲気がありますけどね。3次元球面をなめないでくださいね。位相幾何的な話になりますけど、単連結な閉じた3次元多様体が3次元球面だけであることが証明されたのは、ようやく私が大学院生のときですからね(ポアンカレ予想と言います)。ようするにおおむね基本群が3次元多様体を分類するというお話でした。それまでたくさん定義されてきた3次元多様体の不変量ってなんだったのかと思ってしまいますが、とにかくそういう講演を当時、聴いたものです。

 高校の教員時代、さんざん居残り勉強させて、その学校では「なかなか学術的」で通っている教員と、「追試(居残り勉強)」の監督に行くときに「積分って楽しいですよね?」と同意を求めてきました。私は「(積分の計算は)あまり好きではありませんでした」と答えたのを思い出します。このような「パズル感覚」は、多くの高校教員およびそれに感化された高校生が好むものです。しかし、そんな私を東大は合格させてくれたのです。私は、本番の試験では数学は1問も完答できませんでした。積分の問題もあったと記憶しますが、最後まで計算できませんでした。くだんの「なかなか学術的」な高校教師は、もちろん東大ではありません。(もっと弱小な私大の出身。ごめんなさいね。)その先生は、数学の出来ない人間は家畜か昆虫扱いでした。私の勤務していた(している)中高では、私以外にはある英語の非常勤講師だった先生を除き、そもそも東大を出た人などいないのです。最近、私のブログをお読みになってご連絡をくださったある東大の物理工学の修士課程を出られたかたは、私のことを「勝負する土俵を間違えている」と評されました。かといって今から数学者にはなれませんからねえ(数学の世界ってスポーツの世界みたいでありまして、二十代でプロ野球選手の夢をあきらめた人が、46歳からプロ野球選手を目指せますかねえ?という話に近いのです。私は、プロ野球選手になれなかった人が、46歳からキャッチボールで食おうとしているのに近いです)。

 というわけで、球の体積・表面積の話からかなり脱線しました。わからなくてもおもしろいと思ったかたは遠慮なく「スキ」を押してくださいね(笑)。久しぶりに(初めて?)「高校数学テクニカル」な話を書いてみました。私の話は受験の役には立ちませんよ。

※以下のように、普通にこういうサイトはたくさんあります。私がわざわざ書くほどのことがあるのか、わかりません。


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