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夏はサルスベリ(百日紅)

「春はあけぼの。…」
と清少納言が枕草子にしたためた、四季の趣深い風景。
個人的には秋の「夕暮れ」については同意しかないところではある。

清少納言に倣って四季の趣深いものを考えたときに、
私がよくよく思いを馳せるのが『花』かなと思う。

夏真っ盛りの今の季節は断然「サルスベリ(百日紅)」。
青い空に浮かぶ濃い紅色や薄ピンク、白色のフリルのような花弁は、
儚げで美しく、にも関わらず木が連なり、それらが大きくなれば、
可憐に咲いている花がまるで紅色に燃える壁のように、
圧倒的な存在感を示す。
特に夏のはっきりとした青空に、紅色の組み合わせが好み。

夏の暑さに耐えるフリルのような花弁は、
その儚さのイメージから似つかわしくない印象を持っていたけれど、
夏の花…芙蓉、朝顔など、花弁が薄いのを見れば、
植物の生存戦略なのかもしれない。
大人になってからはそう思うようになった。

子どもの頃に通学路にあった、サルスベリの壁はいまだにあるのだろうか。
何年も郷里に帰っていないし、あの頃に住んでいた家はすでにないから、
通学路周辺に向かうこともなかなかないだろう。
けれども夏の日差しが強烈な昼間に出歩くと、
あのサルスベリを懐かしく思い出してしまう。





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