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人の根っこの部分は変えられないという話

私は子供の頃から引っ込み思案で恥ずかしがり屋だ。
話下手で初めて出会う人とは何を会話したらいいのかわからない。
あまり目立ちたくもないしクラスの中でもずっと地味な存在だった。
新学期の最初に失敗して1年間クラスに友達が一人も出来ない事もあった。
だから陽気でいつも沢山の人とワイワイするのが好きな人にどこか憧れている。

そんな私もどうにか結婚して子供を産み育てる事となった。
一人目が生まれた時に私は考えた。

「自分が苦労したからこの子には社交的になって人見知りしない子になってもらいたい。」

一人目は男の子であまり寝ないし、頻繁に大きな声で泣くので私はすっかり疲弊していた。
そんな時に、夫から近くの保育園に「支援センター」があってそこに赤ちゃんを連れて行けると聞いた。
藁にもすがる思いで行ってみると、保育士の人が常にいてお母さん達の話を聞いてくれるし、他のお母さん達とも交流が出来る。
家の狭い中で泣かれると辛かったが、保育園の中だと気がまぎれた。

そして私は毎日のように支援センターへ通うようになった。
その保育園は自然の中でのびのびと育てる事をモットーとしていて、園庭には小さな川もある。
園児達は裸足、裸でどろんこになって遊んでいた。
うちの息子も次第に裸で水遊びをするようになった。

私はその様子を見ていて
「きっと小さい頃から毎日ここに通って、他の子達と遊んでいれば人慣れして人見知りしない子になるだろう」
と思った。
それから午前中は保育園で遊ばせ、午後は近くの児童センターで遊ばせるという日々を過ごす事となった。
息子は保育園では毎日裸になって泥遊びし、水遊びし、午後は夕方まで児童センターでぶらんこやシーソー等して遊びまくった。
私は一日中外にいた。
晴れの日も雨の日も。
雨の日はカッパを着て見守った。
勿論子供はずぶ濡れで遊んだ。
それが幼稚園に入る3歳まで続いた。

少し大きくなってからは私が連れて行く他に月に決まった時間まで一時保育が使えたので利用する事となった。
だが、息子は一時保育に行く事はとても嫌がった。
そしてあんなに他の子と遊ばせたのに、人見知りしまくるのだ。

私は
「子供の頃母が専業主婦で家にばかりいたせいで人見知りになってしまったと思っていたけど違ったのだろうか…」
と思うようになっていった。

そうして息子が3歳半の時に娘が生まれた。
娘は大人しくてよく眠る子だった。
私はまた支援センターに通う日々をおくる事にした。
喜ぶだろうと園庭で裸で泥遊びもさせた。
でも…なんだか反応が悪いのだ。
息子の時のはちきれんばかりの喜びが娘から感じられなかったので私は次第に支援センターから足が遠ざかっていった。
なにより、息子と違い娘とは家の中でもなんとなく過ごせていた。

娘が大きくなって会話が出来るようになった時に支援センターの話となった。
その時に娘が衝撃的な事を言ったのだ。

「私、あそこの事はなんとなく覚えているけど、あまり好きじゃなかったの。だって裸になるなんて恥ずかしいし。」

娘は当時まだ小さかった。
園庭で遊んでいたのは1歳前後から長くて2歳くらいまでだと思う。
そんなに小さい頃でも裸になるのが恥ずかしいという思いがある事もびっくりだったし、お兄ちゃんとあまりにも感覚が違う。

お兄ちゃんはあんなに遊ばせに出歩いたのにやっぱり「人見知りだ」
人見知りだし、場所見知りだし、初めてする事に抵抗がある。
そしてそれは娘も同じだった。
完全に遺伝だ。
夫はそこまで人見知りではないから私の遺伝子だ。

私は思った。

人の根っこの部分なんて私ごときが変える事なんて出来ないんだ。

早いうちに環境を変えてあげれば変わるだろうと思っていた。
思えば、自分だって長く生きてきて図々しくなったり、上手く立ち回れるようになったり子供の頃より上手に生きれるようにはなった。
でもベースの部分は何ひとつ変わっていない。
心の中は相変わらず人見知りだし、モジモジしている。
以前より勇気を出して話かけられるようになったし、初めての人ともとりあえず天気の話とか、休日の過ごし方とか、その辺りの話題をふればどうにかなるという知恵がついて「人見知りではないフリ」が出来るようになっただけだ。

娘と息子と同じ場所へ連れて行って同じように遊ばせても物心つく前からその出来事に対する感じ方も180度違う。

人はそれぞれ全く違う素質を持って生まれてきている。
なんなら生まれる前からだ。

息子は出産直前の心音の検査の時いつもお腹の中で暴れまくっていた。
娘はいつも寝ていて看護師さんが起こす為にお腹に音を当てて起こしていた。
生まれた後も息子はいつも動き回って寝ないし、娘はよく寝るし、外出時はベビーカーに乗ってばかりだった。

そうしてその後の子育てにおいて
「社交的な人になってもらう」なんて考えは一切捨てた。
息子は小3の途中まで自分から友達が作れなかった。
それでも本人なりに少しずつ頑張って今ではスポーツ系の部活を2つ掛け持ちして頑張っている。
友達も普通に何人もいるし、複数人で遊びに出かけたり楽しそうだ。
相変わらず初めての事が苦手で不器用だけど。

十人十色。

人は貰った素質をうまく生かして生きて行くしかないのだ。
多少は環境や育ち方で変わる事もあるだろうが、自分のあるがままを受け入れるしかない。

同じように他人も変える事なんて出来ない。

相手の素質や価値観を

「へぇそういう人もいるのか」

と驚きながらも淡々と受け入れるしかない。
その上で受け入れががたいと思ったら離れて関わらないようにするしかない。

これに気が付くのに随分と時間がかかってしまった。

私は陰気な自分が大好きだし、これからもこのままの自分で生きて行こうと思う。

そうして自分以外の他人には一切期待しないのだ。
そうなれるように精進したい。




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