ショートショート:ごはん杖
「これがごはん杖だったらなぁ」
右手に握っている木の棒を見ながら、友人が言った。
「ごはん杖?」
「杖にもできるし、ごはんにもなる。ガジガジ囓ったらそれはそれは旨い。でも食べても食べても無くならない…」
「腹減ってるのか」
「そうだ」
俺は少し考え、苺味のキャンディを渡した。
「変なこと考えてないでこれでも舐めてろ」
「ごはん杖が良かった」
「そんなもんねぇよ」
しばらくすると、キャンディを舐め終えた友人はまた「ごはん杖、ごはん杖」と言い出した。よっぽど腹が減っているんだろう。俺もそうだが。
「なあ、これもしかしたら本当にごはん杖なんじゃね?」
「はぁ?」
「ものは試しって言うだろ」
「おい、よせって…」
俺の制止もきかず、友人は木の棒をガジガジ噛み始めた。
ため息をついて俺はノートを開く。
今日の記録
遭難して何日経ったのか。食糧はもうすぐ尽きる。足を怪我した友人は訳のわからないことを言いながら棒切れの杖を食っている。
早く救助が来ますように!
(410字)
※フィクションです。
今回も田原にか(たらはかに)様の企画『毎週ショートショートnote』に参加いたしました。書いてたらお腹が空いてきました。
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