ショートショート:ぐっじょぶ!粉砂糖ちゃん!
粉砂糖ちゃんって知ってる?
その名のとおり、粉砂糖の妖精…、みたいなもの。粉砂糖を必要としている人の前に、どこからともなく現れて、粉砂糖をふりまき、あまーくしてくれるんだってさ。
でも粉砂糖ちゃん、本人に悪気はないんだけど、ちょっとルーズなところがあってね。
あ、あそこでお菓子を焼いている奥さんがいるね。ちょうど良い、見てみよう。
ほらほら、仕上げの粉砂糖を買い忘れたみたいだよ。「粉砂糖があればな~!」って祈ってるよ。
たぶんこの祈り、粉砂糖ちゃんには伝わっているんだけど…。ほら、ルーズだし、粉砂糖ちゃんって何かラグがあるから。
この奥さんのところには、粉砂糖ちゃんは来なかったね。
さて、その奥さんと家族の夕飯どき。
ハンバーグだ!おいしそう!
『さらさらさらさら~』
あっ!最悪なタイミングで粉砂糖ちゃんが来たよ。みんなのハンバーグに粉砂糖が…!
「あまーい!」
みんな、顔をしかめています。そりゃあね。ハンバーグに粉砂糖は違うよね。
と、まあ、こういうコなんです、粉砂糖ちゃんって。
覚えておいてほしいのが、これ、本当に悪気はないってこと!度が過ぎたおっとりなんです。本人は良かれと思っているのかもね。悪意がないのがかえってタチが悪いよね。
だから巷では「気安く呼ぶな」って言われているよ。
おやおや、向こうでブラウニーを作っている女の子がいるよ。なんでも、バレンタインデーの練習だって。一ヶ月もあるのにね。
そもそもバレンタインデーに、好きなコにチョコを送るっていうのは日本ぐらいで…。
いけない、話がそれちゃったね。
ブラウニーを作ってる女の子、ね。
ああ、案の定!粉砂糖を買い忘れてたみたい。粉砂糖とか、あってもなくても良さそうだけど…。
案の定その②!粉砂糖ちゃんは来ません。
あれあれ、粉砂糖ちゃん、全然来ないね。
夜になっちゃったよ。
あれあれ、来ないまま次の日の朝、昼、そして夜。
あの女の子は、もう粉砂糖のことなんて忘れています。
だって…、今、ブラウニーを渡す予定の人と一緒に帰っている最中なんだもの!
けっ、楽しそうにしとりますなぁ。
あ!大変!
こんなときに、粉砂糖ちゃんが飛んできました!あーあ、粉砂糖の杖を振ってるよ…。
「あれ?雪?」
ふたりが顔をあげて、不思議そうにしています。雪じゃないよー、粉砂糖だよー。ブラウニーにかかるはずの粉砂糖だよー!
「…雪みたいだね」
えへへ、とふたりは笑っている…。
ははーん、ロマンティックな気分に浸ってやがるな。
ふたりとも、雪だと思い込んでるみたい。粉砂糖なんだけどな。
やだやだ、にこにこ笑って見つめ合っちゃってさ。あまーい時間を過ごしてるね。
まあ、ふたりとも幸せそうだし、いいか。
ぐっじょぶ!粉砂糖ちゃん!
※フィクションです。
ふとこのタイトルが頭に浮かんでしまい、広げていったらこうなりました。