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Photo by
oimonote
ショートショート:鳥獣戯画ノリ
「な、何なんだ、これは!」
私は思わず声を荒らげてしまった。
鎧の戦士が剣をもつ絵画。古くなったので修繕を頼んだ。今日戻ってきたその絵は、蛙と兎が棒切れを持った絵になっていた。
まるで…、
「鳥獣戯画じゃないか!」
修繕をした若い男は、困ったように頭を下げる。軽そうな奴だと思ったが、こんなにとんでもない奴だったとは。
「すんません。鳥獣戯画好きで、ついノリでやっちゃって」
「そんなノリがあってたまるか!」
「でもパパ、この絵素敵じゃない」
その時、娘が口を開いた。
「私、この絵好きよ」
「…そうか?」
娘はひどく気に入ったようで、私は仕方なく絵を受け入れた。
「いやー、まさかあの鳥獣戯画ノリがここまで来るとは…」
数か月後、あの男はテレビに出ていた。
娘があの絵をSNSに投稿したところ、瞬く間に拡散された。なんと「かわいい」「面白い」と評価されていたのだ。
奴の絵は「#鳥獣戯画ノリ」として拡散され、有名になり、個展を開くことが決まった。
「鳥獣戯画ノリのおかげで、素敵な女性と出会えちゃって」
そして奴は、娘と付き合っている。
「目指すは鳥獣戯画婚っすわ」
とかなんとか宣っていたが、認めるつもりはない。
(500字)
※フィクションです。
たらはかに(田原にか)様の毎週ショートショートnoteに参加いたしました。なんじゃこりゃ。
昔、鳥獣戯画にはまっていて、Tシャツやマスキングテープを持っていたのですが、どこに片付けたっけなぁ…。