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恋詩

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#現代詩

月だけ知ってて

月だけ知ってて

わたしが送った
夕暮れのなみだと-15℃のリボン

あなたがわたしに送った
葉脈のため息

月だけ知ってて

「8月の朝
  踊るシジミ蝶 
  季節はずれの春がきらきら
  輪を囲んで ああ 
     まぶしいです」

緑の香り
碧に染まる
二つの石

-山中電車-

がらんがらんの空席が
しばらく目を瞑り
気配を消す

吊り革に体を半分預けて
景色を眺めるあなたと

ドアにもたれながら

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背中の下の青い屋根

背中の下の青い屋根

20分前の

私の首もとに

はるか遠い河川敷で

石になったわたし

午後4:47分 

流れる水の音と寝そべりたい

とがったくちばしを

天井にはりつけて

あなたを階段から

突き落とす夢のあと

午後5:13分 

あなたの横顔が

太陽に染まりだす

赤い輪郭 

行き場をもてあます

逆光の感触

水中の中ゆらゆら

きらめく私の髪が

空の吐息に溶けて

石になって

恋とくき茶

恋とくき茶

ねっこは少女だった

土からでた
くきに恋をしては

人の手によって
そのくきを
むしりとられるたび
少女は悲しんだ

1週間ぶりのお茶を飲んだときの
腸のさけび
アゲハの信号
腸内新聞

今朝のニュース

「黒アゲハの幼虫山椒7日目にして死す」

春の新芽までに
少女の腸と首の骨を強化し
心折れない女になってやろうという
オダマキ14才の決意であった

〈詩〉桜の音はカラスが食べた

〈詩〉桜の音はカラスが食べた

まだ少し冷たい風 
伸びた雲の下
影なくて
視線の先
カラスの足あと

コンビニでコーヒー買った
氷とガムシロップ
一周ゆらり
まわるあいだ

黒のパーカーが一瞬笑ったのは
桜の音

ぼくの左肩が
一回くしゃみした

車の窓から見えるダム
きみの手から
すぐ投げた

大きな音と
スローハイ
桜散らなかった

うす紫の
ちいさな実を隠し持った
きみの背は頑丈

カラスが通りすぎるたび
なんのへんてつ

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嵐と花雨とあなたと私

嵐と花雨とあなたと私

線と線が
水と風を作ったなら

私とあなたは

葉と土で出来た
ひとつの種か

それとも
毛と毛のあいだを
何万年もの間

流れ 
飛び
落ち 
くだばり

土から
石から
木の根から

同じ道を通っては
別々の土地で
芽吹いた

白い糸が光る窓の向こうで
目が覚めた瞬間に

ぼくたちの心臓を
風と水にさらしたのか

ロマンチックな花束を抱いて

ロマンチックな花束を抱いて

ロマンチックな花束を抱いて

ほら
足元にオレンジのリボンが
君の小指にまかれてね

透明な鈴の音色

いつ気づく

この線の始まりの切れ目で
このざわめきが

地平線に溶けて弧を描く

薄紫色の雲が虹に連絡をする

なくてはならない
あなたの親指は

金色の鳥が雛の餌にして
7716番目の羽根に生まれ変わる

神聖なもの

神聖なもの

まっすぐな速度で
それは
手と手の間を
すり抜ける

口という口を閉ざして

あっという間に
すり抜けていく

ああ

″さようなら″

ちくわの中も
あなたの襟の間も
笑わない頬の上も
すんなり
すり抜けて

ぼくの袖を引っ張り
ここがバス停だという
一通の神聖な手紙が
来る頃には

すでに
過去の出来事に記録され

ぼくの指先は
1分後に
皿回しの神経を整えていく

18  「月 とうふ ピンクの布」

18 「月 とうふ ピンクの布」

とうふを月にあげた

月の手首に
ピンクの布
とうふをつつむためのふろしき

月はとうふを
きゅっとしぼり

私の恋人の畑から
ほうれん草とにんじんを
そっと抜き

白和えにして
しろうさぎの口に入れた

しろうさぎは
それから
家と家をつなぐ
チャイムになった