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時の癒し

なぜ立ち寄ったのか

三十年過ぎても癒えない傷が在る街
本当はそのまま南に向かうはずだった

国道にある見覚えのある交差点
右折の風景は心のフォルダに仕舞い込んだはず
これまでみないように通り過ぎてきた

けど
今日は何故か右折車線に吸い込まれた

あの頃の暮らしの面影と目が合ってしまった

ヒトは見た方向に誘われる
駅のコンコースでラッシュでもぶつからないのはヒトをみないから
コーナーでガードレールをみてはいけないコトはバイク乗りなら皆んな知っている

見覚えのあるホテル
傷の痛みと共に思い出す

三十年前
ここに暮らしがあった

将来を夢見て
貧しかったけれど豊かになろうと必死だった
故郷から遠く離れていたけれど
僅かな面影を探して暮らした街

別れは突然だった
独りよがりだった信頼を打ち砕かれた
家族も家庭も暮らしも失った

寂寥感だけが心の傷と引き換えに
自分の幼さを教えてくれた

三十年

身も心も擦り減らしたけれど
僅かな自尊心に頼って立ち上がってきた
誰も知らない自分の中の闘い

そして今
自分がどん底に堕ちた場所に立つ

みないようにしてきたけれど
みるべくしてみたのかもしれない

癒えない傷の痛みだったはずだけど
時間は薬であること

それを知るために