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短編小説

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いつかの記憶が消えてしまっても その頃の自分の物語がある といいなと思っています
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2025年1月の記事一覧

隣室【短編小説】

彼は、かなり古びたアパートに1人で住んでいる。
3階建ての3階に住んでいる。
他にも住人はいるようだ。
入居の時、どの階も空いてはいたが、1階は庭がついていて、草むしりが大変そうだと思い、なんとなく3階にした感じだ。
彼の住む部屋の右側は、大学生らしき学生で、左側は住んではいるようだが、誰がいるのか分からない。

ここ4年住んでいるが、まだ一度も会ったことはない。
一方大学生らしき人は、朝たまに会

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行列【短編小説】

この行列は何だろうか?
駅の前にかなりの行列ができていた

特にラッシュの時間とか
イベントがあるわけではない

なぜかみんな昭和って感じのふるくさい感じの服装ばかりだった

1945年に終戦したこの国では
多くの犠牲者が出たというのは日本人なら誰もが知っていること
しかし彼は、そんなことは全く知らない

この駅は、元々はそんな人たちを空へと見送る場所だった
要するに火葬場となっていた場所だ

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石柱【短編小説】

USと書かれた石柱がある。
この場所は、かつてアメリカ軍の基地だった。

敗戦後に住んでいた人々は、追い出され、アメリカ軍の基地となった。

その時代だから、仕方のないことであろう。

これは、その地に住んでいた1人の少年の話だ。

その少年は、その地で生まれ、その地で育った。

その地は、彼の全てだった。

敗戦とともに、強制的に追い出されることとなった。

その後苦労したという話ではない。

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