石柱【短編小説】
USと書かれた石柱がある。
この場所は、かつてアメリカ軍の基地だった。
敗戦後に住んでいた人々は、追い出され、アメリカ軍の基地となった。
その時代だから、仕方のないことであろう。
これは、その地に住んでいた1人の少年の話だ。
その少年は、その地で生まれ、その地で育った。
その地は、彼の全てだった。
敗戦とともに、強制的に追い出されることとなった。
その後苦労したという話ではない。
ごく普通といえる生活を彼は送った。
25年後、その地は返還され、大人となった少年は、かつての家のあった場所へと行った。
当然ながら、その場所には、少年の家はなかった。
代わりに、USと書かれた石柱があった。
青年となった少年は、思った。
返されはしたが、あの頃の姿は返されることはなかった。
しかし、確かにここにいたんだ。
子供だったあの頃の僕が。
すると風が吹いてきた。
いつか感じたあの日の風が。