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ピアノを置く家を新築をするときに気をつけて欲しいこと
「2階の、北向きで東西に窓がない個室」
戸建ての家でピアノの“コンディションだけ”を考えると、置くのに最も適したところを僕はこう答えます。地面からの湿気や日当たりの影響がなく、コンパクトな部屋は環境のコントロールがしやすいからです。
ピアノを置く場所は迷います。生活空間の中に結構な大きさの物を置くことになるし、簡単には動かせない。そしてとうぜん管理のことだけではなく使い勝手や音響、防音、考えることはたくさんあります。
しかも絶対に置いてはいけない場所があったりと色々とシビア。
新築するときに「ピアノの置き場所」として計画を立てたところにいざピアノを運び入れた後に大きな問題が発覚することも少なくありません。
とは言え生活スタイルや家の造りなどでなかなかベストな場所を用意するのは難しいもの。現実的には、置いてはいけない場所を避けつつ、折り合いをつけてベターな場所を探していくことになります。
記事前半の無料部分では、まず避けてもらいたいピアノにとって危険な場所をまとめました。置き場所マニュアルの1ページ目に載っているような。
後半は有料となります。ピアノを置いてみて初めて気がつくような、調律でいろいろな「実はここも良くなかったんだ…」を見た経験をふまえての注意点を紹介しています。
この場所に置くと詰みます
まずなにがあっても絶対に避けないといけないのは、ピアノのメンテナンスができない場所。アップライトピアノが開けられない場所です。
よくあるのはピアノの左右をピッタリの壁で覆ってしまうケース。調律はやりづらいながらもできるのですが、後ろに物を落としたりでピアノを少しだけ前に出したい場合に毎回運送業者さんを呼ぶことになります。
音響的にも風通しの面でも不利になります。なにより「せっかくピアノのためにピッタリの空間を作ったのに実はやってはいけないことだった」と言うのが悲しすぎるので避けたい造りです。
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そして最悪なのがピアノのすぐ上を造り付けの棚や階段で塞いでしまうこと。
こうなっているとピアノが開けられず、調律をするたびにピアノを前に出す必要があります。前に出せればまだマシで、床の滑り具合や左右のスペースによっては前に出すこともできず、物理的に調律が不可能になります。
定期的な調律だけでなく、ピアノは日常的に故障も起こります。メンテナンスがしやすいかどうかというのはそのまま日々のピアノの快適さと寿命に直結します。
せっかく新築するのだからピアノにピッタリな設計にしよう!と、ピアノをはめ込む空間を造ってしまうのはありがちです。家を設計する方もピアノのメンテナンスのことまでは意識しないので、割とあるあるな失敗なんです。
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ピアノが壊れる置き場所
折り合いをつけると言ってもあまりにピアノへのダメージが大きい場所は避けたいところです。気をつけないと、大げさではなく半年でピアノがダメになってしまうような危険な置き場所も…
■直射日光が当たる部屋
ピアノの大敵です。意外と盲点なのは「直射日光が当たる場所」だけではなく「日光が入る部屋」自体もあまり良くないこと。南向きで日当たりの良すぎる部屋は、時間帯・天気・季節によって大きく温度湿度が変化し、コントロールもしづらいので避けたい場所です。
まわりに遮る建物がない2階リビングはこのような環境になりやすいです。こういった場所に置く場合は、遮熱カーテン(暗くならないレースのものがおすすめ)は必須です。
■床暖房は下からのダメージ
床からの熱は音の狂いや過乾燥を加速させます。特にアップライトピアノは床に近く、底は薄い板で弱いため大きなダメージに。専用ボードの上に置くことである程度は和らげることができますが、それでも影響は大きいです。
ピアノの下だけ広めに床暖房を避ける手もありますが、影響はゼロにはなりません。できればピアノの部屋は丸々床暖房なしが理想です。
■薪ストーブとは相性が悪い
薪ストーブからの輻射熱でのダメージに加え、上にやかんを置いて沸騰させているケースも多く、多湿と過乾燥ダブルで影響を受けてしまいます。
薪ストーブがある部屋は比較的広いことが多いので、ピアノを離せばある程度影響は和らぎます。熱を防ぐためのパーテーションをお客さまがDIYしてピアノとの間に置き、熱の影響がかなり軽減したケースもあります。
ただ、やかんによる加湿はあきらめてもらうことになります。せっかく薪ストーブがあるのであれば上にやかんを置きたいですよね…ここの両立は難しく、薪ストーブとピアノは相性が悪いです。
■やってしまいがちな部屋干し
クリーンルームとして使う部屋にピアノを置くのも危険です。
部屋干しをした直後は湿度が一気に上がり、洗濯物が乾くと湿度ががくっと下がります。これは毎日夏と冬を繰り返しているような状況でピアノにかなりの負担です。
冬、ピアノに乾燥の影響と同時にかなりの湿気の故障も起きていて、よくよくお話を伺うと実は普段はそこで部屋干しをしている…と言うことは結構あります。
見落としがちなピアノへのダメージ
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