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「ピアノの練習スタジオ」でトラブル無くピアノを管理するための話

今回の記事は、いわゆる「ピアノの貸し練習スタジオ」を運営している方、これから作ろうと思っている方向けの内容です。

個人のスタジオや大手のスタジオ、いろいろと見てきた中で「ピアノに関してはここを注意しておくとトラブルが減らせます」と言うお話です。

スタジオに置くピアノは、あらゆる場所のなかでも求められるコンディションがシビアです。

ピアノスタジオ特有の事情

ピアノは調律直後は万全なコンディションでも、【時間経過】と【使用】によりゆっくりと、ときには急激に状態は崩れていきます。

しかし利用者さんにスタジオ代を支払って使ってもらう以上、本来はどのタイミングで誰が使う場合でもピアノが同じコンディションであるべきです。

ただしそれは現実的には難しい。それならせめて一定の水準を下回らないようにしないといけない。でもこれがまた難しいんです。使用の度に調律が入ることが前提なコンサートホールよりも、ある意味ではやっかいかも知れません。

常に合格点のピアノのコンディションを保つためには、「狂いの速度をゆっくりにする環境」と「適切な頻度のメンテナンスでリセットする」ことが必要です。

まずは狂わせないことが一番大事

とにかく温度・湿度の管理がなにより重要です。
温度23℃・湿度50%をどの季節でも死守してください。

部屋には湿度計を置き、夏には除湿機、冬は加湿器を、スタジオでは例外なく必須アイテムです。これらを24時間使用することになります。

営業中はもちろん、営業終了後に水が満タンになったり空になって機器の運転が止まらないよう、日々のルーティーンに組み込む必要があります。

できれば温度も一定が望ましいのですが、エアコンを24時間つけっぱなしは現実的に難しいかも知れません。ただ、暑すぎる・寒すぎるタイミングでは部屋を使っていない間でもエアコンを使用してください。

夏の暑い日に外から来た利用者さんはエアコンの温度を極端に下げたりします。そこでの急激な温度変化、からの湿度変化はピアノに影響が大きいため、それを防ぐためにもなるべく適温にしておくのは大事です。

ピアノの置かれている部屋の温度・湿度を神経質すぎるくらい管理すると、ピアノの狂いは驚くほど少なく済みます。

鍵盤用のクロスを置いておく

コロナ禍以降増えたトラブルで、利用者さんがアルコールで鍵盤を拭いてしまうというものがあります。

ピアノの鍵盤はアルコールに弱く、ひび割れの原因になります。他の人のために良かれと思って持っているアルコールティッシュで…のようなケースも多いようです。

注意喚起の掲示をすることに加え、部屋に鍵盤用のクロスを用意しておくとそういったトラブルの可能性を減らせます(それでもゼロにはならないですが…)

また鍵盤の拭き方も大事で、間違えるとすぐに鍵盤がグラグラになってしまいます。スタッフさんが拭く時にも、利用者さんも注意が必要です。

鍵盤を拭く際は奥から手前に

オススメの鍵盤用クロス。
手垢や汚れがひと拭きで落ちるので鍵盤に負担がかかりません。

その他禁止事項としては、「ピアノの上に飲み物を置くこと」や異物でピアノの弦を直接叩く「内部奏法」は理由に関わらず禁止していることを明言しておくと良いです。

部屋やピアノを利用しているあいだ常に目を光らせているわけにはいかないので、このあたりの仕組みづくりは大事です。

調律の頻度はどのくらいがベストか

調律はピアノのコンディションを元に戻す唯一の方法です。

調律の間隔が長すぎると狂ったままの期間が長くなってしまいます。また、大きく狂ってから一気に調律で戻すことはピアノにとって負担です。音が狂ったことがはっきりと感じられてからの調律では少し遅い。では調律をやればやるほど良いかというと実はそうではなく…

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