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”いきる”興味

僕の身の回りには”時間”の制限がない。今日だけ。

”時間”の制限を濁している。誤魔化している。とでも言い換えると分かりやすいかな。

普段、君は時計を何回みる?
数えてみよう。
その時、時計を見るたびに”時間”を意識するよね?
もし、その”時間”となる基準の時計を混乱させたらどうなるでしょう。

僕はたまに(休みの時)身の回りの時計の時間をいじる。

室内にある壁掛け時計
目覚まし時計
腕時計
車のデジタル表示‥

休みの前の夜に手間だがいじる。
いじりながら、明日起きたときを想像すると楽しくなってくる。
それは別世界だからだ。”時間”に拘束されない日‥。

まず夜中に目が覚める。
目覚まし時計を見ると、深夜0時をまわった時間だ。
「(いやいや、そんなはずは無い)」
と想像をふくらませる。

カーテンをめくり月や星の位置を確認するが今晩は何も見えない。真っ暗な夜だ。それでも時間を把握しようとする。
「(月も星もない夜。灯りがついた家もない。街灯の光が閉ざされた夜の闇を強制的に割り込んでいる。ああ。、この感じは深夜2時。丑三つ時じゃ無いかと想像する。)」

 目覚まし時計は何時間ずらしていただろう?
思い出しながら、ベッド横のマイボトルの水を一口飲んでは横になった。
冷たい水が身体の中をつたっていくのを感じた。
その感覚は静寂な夜の道を静かに足音を立てながら走るランナーを僕に想像させた。

先ほどめくったカーテンの隙間から街灯の光が室内に影をつくる。
僕はその影を見つめて知らずのうちに寝落ちしていた。

正解用に持ち歩くスマートフォンは正しい時間を表示している。
スマートフォンにメールが届いた時やSNSをチェックする時はどうしても正解の時間が目につく。それが良くない。せっかく”時間”を麻痺させているのだ。その日一日だけでも異世界へ飛びたい。

窓が明るくなり朝になる。
外を歩く人の足音で大体の時間は想像できた。
朝日の日射角度も。
いつしか僕らは、毎日を何となく過ごすうちにそんな時間感覚の知識を備えてある。

子供達の反応は早い。
いつもの時間が体内に設定されているのだろう、ドカドカと階段を降りる音がする。

起きてすぐにテレビをつけるルーティン。電波が画面から放出され飛び交うのを感じる。
飲み物で例えるなら、朝起きて直ぐにCoca-Colaをグビっと飲むようなものだ。
テレビやPC、スマートフォン。朝起きて寝るまでいつから僕たちは電波に支配されるようになったのか?これらは僕らが操っているようで操っていない。完全に支配されている。
人間本来備わっている感覚はこれら電波の支配下に調整を狂わされている気がする。
そう。
僕があらゆる”時計”の針をいじるようにね。

妻が電子レンジで飲み物をあたためる。
レンジの扉を閉め、温めたミルクを飲みながら、今度はIHヒーターでスープを調理する。
「ああ。どんどん電波の熱量が増していく朝」

僕は2階のベッドにいて、そんな電波空間から逃避している気になっている。

壁掛け時計に目をやる。
朝9時を指している。
「(いやいや。そんなはずは無い。7時が妥当だ、)」

外に散歩に出た。
平日の朝より人が少ない。
得した気分になる。
外という満ちた空間に身を投じると心も広い気持ちになるのは自然だ。
僕がこうして散歩している現在は、アメリカや中国やドイツ。皆んなが過ごす時間は皆んな違っている。
皆んなが持つ”時計”はそれぞれで違うのだ。

ただいまの現在時刻。8時前ってとこかな?
海を越えた国
海を越えた人たちの時間。
君らは今、そこで何をしているの?

玄関に入ると良い匂いがした。
空腹が匂いに敏感に反応する。
空腹がなおさら空腹に拍車をかける。
鼻から吸い込まれた食べ物の匂い。僕の嗅覚は屋内に入った今、正常どころか過敏に反応している。

食べ物を口に入れる。
朝いちばんの食事だ。
味覚。
味覚は脳内に行き届く。
それに釣られるように、お腹も「空」→「満」へ駐車場の表示のように切り替わる。

咀嚼。
噛むたびに目が覚める。
噛むたびに視力がよくなる気がする。

生命を感じる。
人通りの動作が。感覚が。
僕は今日も生きている。実感を増しあげる。

歯を磨く。
歯。
歯?(鏡を見つめる)
歯ってなんだ?骨が剥き出しになっている。グロい。

歯を磨く後ろから何やら妻が声を発している。
聞こうとしないと聞こえない。
耳は意識と繋がっている。
おそらく、また時計をいじった事のダメ出しだ。
知らないふりをする。
今日一日だけは何とか誤魔化したいのだ。

怒る
笑う
悩む

人間って忙しい生き物だ。悩めば悩むほど寿命も短いらしい。
洗面台の上に置いてあるDAISOのイルカ時計を見る。おそらく9時半頃だろう。

服を着替える。
クローゼットを開ける。
貪るように購入した服が並ぶ。こんなに沢山服がある中で、結局いつもと同じ手前にある着やすい無地の服を選んでしまう。
ファッションに興味がないわけじゃない。
色んな意味で”手っ取り早い”のだ。

どんなにお洒落をしても誰か街角で「あの。すいません。お洒落ですねぇ。」なんて、
声をかけられた経験はある?僕はない。
結局自分がお洒落だと思う感性と、他人が思う感性は違う。
お洒落とはその都度のファッション雑誌やインスタでの教科書が発信する楽器のようなムーブメントだと僕は理解する。

しかし、身の回りにいた。
僕が知る限り。姉だけだ。
一度あった。姉と学生の時にコンサートへ向かう途中に姉は声をかけられた。
その時の服装は今でも覚えている。
なんて事ない爽やかな着こなし。
白いパンツに青いシャツ。肩掛けの小さなバッグ。スニーカーは履いていなかった。髪は長い巻き毛を束ねていた。
その時僕は学んだ。
コテコテに着飾るよりも、シンプルな中にセンスをひとふり。
料理のスパイスのようにね。
それがファッションだという事を。

そんな過去を思い出しながらもいつもの服に着替える僕は矛盾している。
しばらく服は買っていない。
買うのも億劫になってきた。これはマズイ。

11:00にいつもの美容室に行く。
最近は髪型を変えた。
年甲斐もなく髪を伸ばし、つむじのあたりで束ねる。サイドは刈り上げた。

髪型で人の印象はガラリと変わるものだ。
「(これで5歳は若く見えるかも)」
こんな楽しみが出来るのは髪があるうちだ。
そう考えてから髪型を楽しむようになった。
いつも僕を担当する同じぐらいの美容師が気づく。
「腕時計の時間ズレてますよ」
僕は「ああ、ほんとだ」と話を合わせ、美容室の壁掛け時計を見上げる。
”11:40”
予約した店に行く日は正確な時間を見てしまう。僕は今日、美容室を予約した事を後悔した。

午後は本を読みゆっくりとした時間を満喫した。
夜まで、もはや”時間”という概念はなく、僕は本の中へ没頭していた。
あまりにも夢中になり過ぎて気がついた時には窓から見える景色は無く、外は真っ暗になっていた。

その暗闇からあかりを探す。
ぽつりと星がチラつくのが見えた。
星のあかり
星のあかりは何万年もかけて地球に到達すると言う。
何万年もだ。
僕含め、親だって、おじいちゃんだって生まれていない時の”過去の光”。

あの光がある日はどんな1日だったのだろう?
今、僕はその日の光を見つめている。
何万年前もの光の道。意思疎通はとれている?うん。何となく感じるよ。その感覚がタイムトラベル。

何万年前には”時間”という単位はあったのだろうか?
おそらくない。
それじゃ、今日の僕と一緒じゃないか。
”時間”のない日。。

ということは、今僕が見ている星の光。これは”いまの光”
今日の光って事じゃないか!
僕は勝手にそうした。
今、目の前に見える星の輝き。僕たちは今、正にアイコンタクトをしている。
なんてロマンチックなんだろう。

人間とはめんどくさい生き物だ。
デリケートだし
神経質だし 
わがままで自分勝手だ。
いろいろ
いろんなことがめんどくさい。

でも、一日を振り返り思う。
単純に、食う 寝る 風呂入る やってれば何とかなる。
そういう”いきもの”でもあるのだ。

そしてその延長上に”しあわせ”があるのは本当かも知れない。
今夜見た星の光との出会いもあるのだから。

僕はそんな思いを整理しながら家中全ての”時計”の時間を元に戻した。

ただひとつ。
美容師に言われた腕時計だけの時間はそのままにした。
お気に入りのスターウォッチはcaptain marvelの星がデザインになったものだ。

出会いを忘れないように18:10。星を見た時間に設定しなおして。

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