【書評】音楽展望、音楽展望2 (吉田 秀和 著 講談社)
11代伝蔵書評100本勝負28本目
音楽評論家としての「吉田秀和」の名を認識したのは「小澤征爾、兄弟と語る」の中で再三名前が上がったからです。その時も「そういえばそういう人がいたなぁ」くらいの認識だったんですけど、そのほぼ直後に朝日新聞で没後10年を記念して10回に渡り特集記事がありました。その記事により彼の人生のアウトラインを知ることになります。そしてとりあえず手に取ったのがこの2冊です。
朝日新聞の特集記事は良い連載でした。吉田秀和の人となりがよくわかります。ただ、基本彼への賛辞が続きます。僕のように生前の活躍を知らないものにとっては危険だと思いました。過度に反発するか、仰ぎみる存在になる気がしたのです。おそらく吉田さんにとっても本意でないでしょう。
そこで雑音に紛らわされず虚心坦懐に彼の文章に触れてみましょう。音楽を中心としたテーマが並びますが中心は音楽、それもクラッシックです。彼が取り上げる音楽家は専門家や愛好家には馴染みの深いものでょうが、僕のような門外漢には縁遠い名前が並びます。それでいてクラッシック界の重鎮らしいので、知らないのが悪いような気になるかもしれません。例の?「教養主義」の重圧です。見栄っ張りな僕のような人間はその重圧に負けてしまうかもしれません。しかしながら縁あって本書を開いたのなら、パラパラとページをめくってみてください。そして知ってる名が登場したら、少しページを捲る手を止めて読んでみてください。するとまずわかるのは秀和さんの音楽に対する愛情です。そしてその音楽に興味が出て、実際にその曲を耳にすれば、秀和さんは大喜びでしょう。すると厳禁なもので、他のページも楽しく読めるし、ページから自然と音が流れ出すかもしれません。僕の場合はそこまでいきませんでしたが(苦笑)。
クラッシック音楽には興味はあるけれど、何を聴けばよいか分からない方にもおすすめできる一書です。そして秀和さんの音楽に触れるためのおすすめを引用してみましょう。
良い方法だなと思います。僕も地元楽団の会員になることにしました。
こういう機会を与えてくれた秀和さんにまずは感謝ですね。