セシボンといわせて(一日目③)
〈一日目③/夕方/蝶野さん〉
夕方から出かける予定が流れた。
よし、ケージの掃除だ。
セツは今のところ人間の前では一番上の棚から降りてこないので、細心の注意を払ってケージの隙間から手を入れ、餌入れに指を掛ける。バスタオルにまみれて斜め状態だったので、中身のカリカリはほとんどこぼれている。缶詰を入れた方はひっくり返っていて、手が届かない。
トイレにオシッコはしていない。でもケージの周りにまで砂やエサがバンバンに飛び散らかっている。必死に逃げようとしたのが分かる。
ケージの床上に敷いていたバスタオルは滑りまくっている。床はプラスチックなのだから、よく考えればこうなるのは予測できたのに、想像力が足りなさすぎた。
床とケージの扉の隙間からソロソロとバスタオルを引き出す。同時に手が届かなかった皿もついてきた。
この、缶詰を入れていた餌入れは空で、バスタオルが汚れていない(こぼれていない)ことからセツが食べたと判明。食べた、という事実に胸を撫で下ろす。
餌入れは専用の物もあるけれど敢えて今は使用せず、植木鉢の受け皿でプラスチックのを使っている。薄くて軽くてケージの柵の間から出し入れしやすい。セツが逃げないよう、なるべくケージの扉を閉めたままやれることはやりたかった。
ケージ内にこぼれまくっている砂やカリカリは、溝を掃除するタイプの小さな箒を柵の間から入れ込んで掃き出していく。なかなかに時間が掛かる。
掃除をしながら、ケージに段ボールを敷こうかと考えていると、母が30cm四方の床用ジョイントマットを使おうと言い出した。
それだ!
庭にいる子猫達も大人猫達も好んで似たような物でバリバリ爪を研いでいる。そのマット1枚と3分の1枚(に切った)の組み合わせが2つ分で収まる。出っ張る部分はハサミで切り落とした。これを床の隙間から入れ込み、トイレは代用品のバスケットなので本体は軽いから、柵の間から入れた手で持ち上げたりしながら、母と協力して全体にマットを敷くことが出来た。
あんなに土砂降りだった雨がいつの間にか上がっている。
ケージを掃除した勢いで家の周りも掃いていると、母と誰かが話している声がする。
蝶野さんだ。
蝶野さんはご近所さんで、母の仲良しさんだ。早速セツを見せたらしく、毛の艶がいい、毛並みが良い、上品な顔をしている、と言ってくれる。それから私に、
「また名前、つけるんでしょう。今度はどんなのにするの?」
と尋く。母もいるので、少し遠慮がちに答える。
「まだ母の賛同を得られてないけど、セシボンにしようと」
「まあ、それはいいわね」
蝶野さんの声が弾む。笑顔が華やかになる。
「そう言ってあげると本人もそうなっていくし、私たちが口にすることで皆でセシボンになっていくから」
あぁ、おばさん!ありがとう!
どんなに心強いか。
力強い後ろ盾をもらった気がした。
蝶野さんのおばさんが本当に大好きだ。
私はセツの正式な名前を〝セシボン〟で確定にした。
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☆☆☆☆見出し画像はみんなのフォトギャラリーより、にきもとと様の作品『移動中。』を拝借しております。ありがとうございます😊☆☆☆☆☆