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セシボンといわせて(八日目②)

〈八日目②/シマのこと〉


 夕方、母への来客中、庭では黒と茶トラがじゃれている。随分と大きくなった。月齢は四ヶ月くらいになるだろう。
 

 シマは、――――シマはいない。  

 死んではいないような気がする。思いたいだけなのかは分からない。この辺りは車も多く、よく轢かれるし、子猫はカラスの格好の餌食にされてしまう。

 可能ならいずれは誰かの手に渡したいと人慣れさせてきた。素人の私たちには子猫三匹ともを慣れさせるのは叶わず、シマだけが膝にも乗せられるくらいになっていた。きっと誰かの手で保護されたと思いたい。
 きょうだいの中では一番人懐こくて、初めから物怖じせずに近寄ってきた。
 セシボンの大きくてまん丸な目にくらべると、三匹とも目は小さくて、形が逆三角形気味で、シュッとした顔つきは子どもっぽくはなかった中で、シマの目はまだ丸に近い分、顔も〝子猫〟らしくて愛らしかった。なにより人間に対しても興味津々、少々図々しくて、誰より先に母親のおっぱいを吸いはじめるし、ちゅーるも真っ先にもらいに来るし、なんなら他の子の分まで手を出す要領の良い所さえ茶目っ気があって可愛かった。確か、最初に木登りが出来るようになったのもシマだったと思う。
 他の子よりもすばしっこいものだから、おっかさんがセツを追いかける時に、母親を真似て率先してセツに噛みつきに行くのは参ったけれど。

 ひと月前に母がキャリーケースを買ってきた。それから、いよいよケージも注文した。もしセツがうまくいかなかったらシマを飼うか、とか口にしたことはあったし、 ぼんやり、その方が楽かな、と考えたこともある。が、一方でセツを譲りたくない自分もいた。固よりセツの為に始めているし、猫を飼うにあたっての夫の同意もセツだから得られたのだ。

 それでも最も懐いているシマは私たちにとってやはり可愛かった。

 この間、初めてシマが私の足首にすりすりしてくれた。誰にも言わなかったけど、飛び上がりそうに嬉しかった。そうして、それきりになってしまった。
 シマの別れの挨拶だったのかもしれない。


** 一つ前のお話はこちらです ↓  ***

セシボンのまとめはこちら↓↓↓🐈‍⬛です。目次もあるのでお好きな日だけ選んで読めます…


☆☆☆見出し画像はみんなのフォトギャラリーより、にきもとと様の作品『20211202』を拝借しております。いつもありがとうございます😊☆☆☆☆☆

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