セシボンといわせて(十七日目)
〈十七日目〉
「あんた夕べ降りて来なかったのっ!?」
母の声に飛び起きる。猫がガーガー、鳴いている。まだ6時にもならない。
うおっっ......!!
玄関の光景にたじろぐ。トイレがひっくり返りケージは砂の海だ。水入れ代わりの陶器の灰皿には砂が入って水を吸収しきって灰皿の形にガッチリ固まっている。こんな状態は初めて見た。
へえぇぇ、なるほどねぇ。こんな風になるんだ。固まってる様が妙に面白くて、笑いたくなるのを抑えている。今までこの状態にならなかったのが不思議なくらいだ。
猫の訴えを聞き流しながら、玄関のドアを開けて風を入れて片付け始める。母が蚊取り線香を持ってきてくれるのが有り難い。
ウンチはあちこちに散らばり、ケージ内はハンパない砂の量だ。どこから手をつければいいのだろう。まずはトイレを出して砂を変えながら作業について巡らしていた。
ちりとりをブルドーザーみたく使いながら床の砂を取り除いていくのは少し楽しい。が、セシボンはどうもイライラしているようだ。玄関は親指分くらい、万一猫がケージから出てしまっても外には逃げられないくらいの分を開けてある。外の空気と音が否応なく入ってくる。それをかなり気にしているのが分かる。
話しかけながら周囲を掃く。セシボンの気を逸らそうといつもは置かない一段目に皿を置いて、乳酸菌入りのカリカリを入れる。ちゅーるも一本入れて匂いで気を引く。食べている間に、ケージに腕をつっこんで箒を持つ手を動かすものの、ガタガタやるので、猫も余計にイラつくんだろう。
仕上げに小さい箒とちりとりで掃いている最中に頭頂部にバシッと鈍痛が降ってくる。また猫パンチを食らったのだ。痛いッ!、と言う私の大声で母が驚いて飛んでくる。
もう逃がそうか、と心配して言ってくれるが、それでは元も子もない。怪我はないし、 大丈夫だよ、と言う。
けれど、何度もパンチを食らうとちょっと悲しい。
愛情を持って接していれば伝わる、と猫好きな女性から言われた。でも、彼女や母のような接し方が出来ているようには思えない。セシボンにちゃんと愛情があるんだろうか。負い目だけでやってるのか。段々訳が分からなくなる。
一息入れて夫とお茶にする。和菓子を買ってきてくれていた。玄関のセシボンがガタガタ音を立てているのが聞こえる。ネコもブレイクだね、と夫が笑っている。
???
ティーブレイクと、暴れる猫をbreakと表して掛けたらしい。 なんだか気が抜けて、大笑いしてしまった。
夜。一段目に置いたままの皿を取ろうとして、思い切りガシッと右手の甲を引っかかれる。出血したので流水で暫く流す。幸い大したことはない。
母がミサにやられた時は、腫れ上がって病院へ通ったから、用心している。
セシボンとの日々をまとめました😊目次もあるので気になる日だけ選んでいただけます…🐈⬛🐈⬛🐈⬛
☆☆☆見出し画像はみんなのフォトギャラリーより、にきもとと様の作品『おこ』を拝借しております。いつもありがとうございます☺️🐈⬛😊☆☆☆☆☆
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