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映画記録「ラストマイル」

「アンナチュラル」も「MIU404」も大好きなドラマでした。その世界線が交差する映画なんて、観に行かない理由がない。

ショッピングサイト"DAIRY FAST"から届く荷物が爆発する連続爆破事件が発生する。物流倉庫のセンター長として赴任した舟渡エレナ(満島ひかり)は、部下の梨本孔(岡田将生)と危機に立ち向かう。

「夜にポチッと注文した荷物があなたに届くまで」の4つの物語が交差している。
まずは物流倉庫センター。
2つめに運送業者の"羊急便 関東局"。
3つめにその"羊急便"の委託ドライバー。映画タイトル「ラストマイル」は物流業界の言葉で『お客様へ荷物を届ける過程の最後の区間』らしいので、ここを指すのかな。
最後に、注文したお客様の物語。

まず、信用できない主人公・エレナで不安になる。ものすごく仕事が出来るのに、なんだか歪つで、見ていて不安になる。孔と同じ目線になりながら物語は進む。……と思っていたら、今度は孔が怪しく見えて、主人公たちが信用できなくなる。ただの傍観者だったのに。
あと、主人公のファッションがかわいい。どんなに忙しくても外さない指輪やピアスからこだわりを感じる。
前半は場面全体が白と黒で構成されている(少し"DAILY FAST"のオレンジもある)けれど、後半でエレナが赤を基調としたファッションに変わってから、物語の雰囲気も変化していた。

物流センターと委託ドライバーで板挟みになり対応を迫られる"羊急便 関東局"の八木(阿部サダヲ)の電話ブチギレシーンは忘れられない。そしてあの判断ができる社長がかっこいい。
委託ドライバーの"佐野急便"は親子で運送業を行う。父親(火野正平)が息子(宇野祥平)へ言うセリフが切ない。でも、教えられる仕事があるなんて、かっこいいことだと思う。

ドラマに出てきた刑事・毛利(大倉孝二)や刈谷(酒向芳)の活躍が嬉しい。彼らがドラマの世界線と横断してくれる。

エレナの登場シーンとラストシーンの対比も嬉しくなった。エレナにとって、ひとつの難を抜けたハッピーエンドだと思う。

ハッピーエンドに慣れ過ぎていることを自覚した。でもこの映画はバッドエンドでもない。映画では、荷物が連続して爆破する大きな事件が起きたけれど、たぶん、これからも生活は大きく変わらないまま続いていくのだろうと思った。

今、私は仕事をしていない。けれど、もし、仕事をしている頃にこの映画に出会っていたら。あの残業ばかりの日々にこの映画を観ていたら。
私は仕事を辞めたいと思いながら、仕事を続けていた。快方に向かっていれば、仕事を辞める覚悟がついたかもしれない、でも、最も辛いときに観ていたら、何も変わらなかったと思う。あの頃、とても攻撃的だった。他人へも、自分へも。
頭の中では分かっているのに、行動が伴わない。映画の中の彼らと被る人は、私だけではないと思う。

「アンナチュラル」と「MIU404」の世界。ドラマは何気なく観ていたけれど、音楽の強みを実感。
音で、一気に「アンナチュラル」の世界へ、「MIU404」の世界へ。どきどきしちゃう。同じ世界線かと思っていましたが、その後の世界でした。その後の"続いている世界"なのが嬉しい。

ドラマのシナリオブックも購入

今回は映画パンフレットも購入しました。普段はパンフレットを買いません。アンナチュラルやMIU404はドラマを見直してきたけれど、ラストマイルは事前情報を入れませんでした。なので、鑑賞前に予習しておこう~と思ったのですが、ネタバレになると注意が書かれていたので……大人しく読まないで、映画に臨みました。
映画で残ったモヤを文章で補完してもらえて、読み応えのあるパンフレットでした。パンフレットって、写真や裏話が載っているイメージだったけれど、印象が変わった。文章たっぷりなパンフレットの方が嬉しい。
あと、パンフレットに袋とじがあったので驚いた。最初は乱丁かと思ってしまった。小さなハサミマークに注意してください。
袋とじにまでしてくれて、ネタバレさせない配慮がありがたい~
そして俳優さんのコメントがそれぞれ面白い。"!"がいっぱいの人とか、文学的な人とか。また、伊吹(綾野剛)の伊吹っぷりな文章が嬉しい。それとも、綾野剛さんがもともと伊吹みたいな俳優さんなのかな……?
脚本家や監督のコメントも大事なメッセージで、パンフレットを事前に買っておいた私の判断を褒めたい。

また、映画におけるラストの一行。この映画のメッセージがはっきり書かれていました。
劇場はかなり混んでいたけれど、エンドロールが流れ始めると席を立つお客様も多かった。そのエンドロールの後、メッセージが現れる。
フィクション映画によく書かれる『この作品はフィクションです。』『実際の実在の人物や団体などとは関係ありません。』
そして、最後の一行が印象的だった。エンドロール中に立ってしまう人ほど、見た方が良い一行だと思った。
ここには書かない。

少しずつ歪んでしまった世の中を、少しずつ誰しもが自覚すれば、世の中が良くなるかもしれない。そう思える映画でした。

【ラストマイル】
監 督:塚原あゆ子
脚本家:野木亜紀子
出演者:満島ひかり、岡田将生
公開年:2024


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