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読書記録「切り裂きジャックの告白 / 中山七里」

少し前に、映画「ドクターデスの遺産」を鑑賞しました。聞いたことのある登場人物の名前があり、調べてみると、原作が『刑事犬養隼人シリーズ』の小説であると知りました。シリーズ1作目が「切り裂きジャックの告白」です。

臓器をすべてくり抜かれた若い女性の死体が発見された。やがて、テレビ局に"ジャック"を名乗る人物から声明文が届く。
そして、同じ手口で2人目の被害者が見つかるが、被害者の共通点は見当たらない。捜査一課のエース・犬養刑事が捜査を進めていくと――

今作だとタイトルの通り"切り裂きジャック"が、映画化した「ドクター・デスの遺産」では130人もの患者を安楽死させた医者"ジャック・ケヴォーキアン"がモチーフとなっていました。
この『刑事犬養隼人』シリーズは実在の事件が元となってるようです。

今作は日本版・切り裂きジャック。
臓器をすべて取り出すなんて、グロテスクで派手な連続殺人事件。
そして、中山七里ミステリーらしく、社会問題と絡み合ってきます。事件における"なぜ"と"どうして"がスッと解されていきます。
作中にて、その社会問題を討論するシーンがあります。数ページに渡る討論は読みごたえがあり、勉強になりました。また、ひとつの問題をテーマにしても、それに加えて考え続けなければいけない倫理的な問題がたくさんあることを思い知らされました。

同じ作者の小説「連続殺人鬼カエル男」や「ヒポクラテスの誓い」などで活躍した刑事・古手川も登場するのが嬉しいです。
感想を書くにあたり調べていたところ『刑事犬養隼人』シリーズはドラマ化もしていたそうです。そして、古手川役は瀬戸康史さんだったそう。
今後、古手川刑事が登場するときには、そのイメージで読んでしまいそう。

映画「ドクターデスの遺産」に登場した"高千穂"刑事が登場するのも嬉しい。映画同様、駆けまわっていました。

社会問題に対して目を背けたままの読者へ問題提起しているような小説でもあるので、読後にモヤモヤとした気持ちが残ります。
でも、エピローグですこし、救われた気持ちになりました。誰かが亡くなるミステリー小説であっても、ハッピーエンドで終わってほしい。

犯人の動機については、共感が出来ない部分もある、とも思いました。でも、誰かから精神的に追い詰められた経験がある人には、共感できるのではないでしょうか。

【切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人】
作 者:中山七里
出版社:KADOKAWA
発行年:2014


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